プレミアリーグ、中国向け放映権契約を打ち切り――9月上旬、突如駆けめぐった一報はコロナ禍による経済的影響はもちろんのこと、昨今の複雑な政治状況も相まって様々な憶測を呼んだ。直接的な事情に加え、国内外の商習慣の違いも踏まえてこのニュースの裏側を探ってみたい。
単なる収入減にとどまらない衝撃
8月にポルトガルでの集中開催で行われたCLが終了した後、9月12日に新シーズンの開幕を迎えることになっていたプレミアリーグ。その直前、9月3日に大きなニュースが飛び込んできた。中国の『PPTV』と結んでいた放映(配信)権契約が打ち切りになったというのである。今日の欧州サッカー界における中国マーケットの存在感の大きさを嫌と言うほど認識させられている身としては、衝撃の報道であった。
もしこれが事実だとすると、プレミアリーグ各クラブへのネガティブインパクトは、2019年からの3年間で5億6400万ポンド(約800億円)にもおよび、海外市場の中でも特に高額であったと思われる莫大な放映権料が未回収になってしまうことだけにとどまらない。プレミアリーグの試合中継を見れば一目瞭然だが、今やユニフォームやスタジアムのLED広告表示などは中国語であふれている(余談になるが、旧正月(春節)の季節はそれがますます顕著になる。選手を稼働した新年のお祝いイベントなども数多く企画されることから、多くのクラブのマーケティング担当者がその年の干支が何かをよく知っていて、すっかり年賀状を書かなくなって久しい私などは、今年がYear of the Rat、つまり子年(ねずみ)だということを、ヨーロッパ人から思い出させてもらったほどである)。……
Profile
利重 孝夫
(株)ソル・メディア代表取締役社長。東京大学ア式蹴球部総監督。2000年代に楽天(株)にて東京ヴェルディメインスポンサー、ヴィッセル神戸事業譲受、FCバルセロナとの提携案件をリード。2014年から約10年間、シティ・フットボール・ジャパン(株)代表も務めた。