「ポジション」史#2 CB編
2バックから4バックへの変遷、一世を風靡したリベロシステム、ゾーンディフェンスの浸透――時代とともに変わる戦術トレンドにいち早く適応し、進化を続けてきたポジションこそ、最終ラインの要であるセンターバックだ。後方から歴史を彩ってきた名手たちを振り返りつつ、彼らが歩んできた進化の軌跡をたどる。
すべての始まりは「フルバック」。初代W杯MVPに輝いたナサシ
フルバック(FB)はラグビーで最後尾のポジションを指すが、かつてフットボールにもFBは存在していた。ラグビーにおけるFBから、その昔フットボールがどういうスポーツだったか想像できるかもしれない。FBはGKの前に位置し、そこで相手のロングボールをカットして蹴り返すか、ドリブルで突進してくる相手にタックルを仕掛ける役割。つまり、やっていることは今日のラグビーにおけるFBと同じ。違いは手を使えるかどうかだけだ。
当時FBはたった2人で相手の攻撃に対応していた。事実上ゴールラインから3人目の選手がオフサイドラインとなっていたからだが、改正されて現在のオフサイドルールに近づいたことで、フットボールにおけるFBはラグビーとは大きく異なるポジションとなった。FBは中央から両サイドへ分かれ、真ん中には1列前のセンターハーフ(CH)が下がる。こうして形成される3バックに初めて挑戦したのは、イングランドのアーセナルだ。「ガナーズの統治者」として名高い指揮官、ハーバート・チャップマンのアイディアだったという。ややこしいことに、日本でサイドバック(SB)と認識されているポジションは今日も英国ではFBと呼ばれており、いまだにセンターバック(CB)も元のポジション名であるCHと呼ばれることがある。この呼称は1980年代まで一般的だったため、英国の古い新聞や雑誌を読む時には要注意だ。……
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Profile
西部 謙司
1962年9月27日、東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、会社員を経て、学研『ストライカー』の編集部勤務。95~98年にフランスのパリに住み、欧州サッカーを取材。02年にフリーランスとなる。『戦術リストランテV サッカーの解釈を変える最先端の戦術用語』(小社刊)が発売中。