今季のJリーグで大きなトレンドになっているのが若手GKの抜擢だ。湘南ベルマーレの谷晃生、清水エスパルスの梅田透吾、鹿島アントラーズの沖悠哉など、多くの若手が出場機会をつかんでいる。この現象の背景には何があるのか?――育成年代から日本サッカーを追い続ける川端暁彦氏がその謎に迫る。
「なんだかレベル高くないですか? 中学生に見えないんですけど」
少々間抜けな質問だったと思うが、U-15日本代表候補合宿においてGK陣のトレーニングを観ながら、スタッフにそんな質問を発してしまった。今から3年前の話である。視線の先にいたのは、鹿島アントラーズで高卒1年目ながら早くもデビューを飾った山田大樹であり、U-17W杯の守護神となる浦和レッズの鈴木彩艶だった。
1つ上の代のU-17W杯に臨んだメンバー(つまり今年20歳になる世代)では、現在は湘南ベルマーレの正GKとなっている谷晃生がおり、その控えだった梅田透吾も清水エスパルスで今季レギュラーポジションをつかみ取っている。この代表では候補止まりだった藤田和輝も、今季のアルビレックス新潟でピッチに立ち、存在感を見せている。ちなみに先のUEFAユースリーグで準優勝したベンフィカのGK小久保玲央ブライアンも、この代の候補だった選手だ。
そのさらに上の代(今年21歳)にはサンフレッチェ広島の守護神であり、すでにA代表経験を持つ大迫敬介がおり、そのライバルである若原智哉も京都サンガF.C.でポジションを確保している。この年代にはさらに、鹿島で正GKになりつつある沖悠哉もいる。
他にも、高卒ルーキーながらリーグ戦5試合にフル出場したベガルタ仙台の小畑裕馬など、若手GKの躍進ぶりは目覚ましいものがある。そう、今季のJリーグ、明らかに若手GKの出番が多いのだ。
しかし、どうして今季から急に若手GKの出番が増えているのだろうか。この年代のGKといえば、なかなか出番がないというのが近年のJリーグの決まりのようなもので、リオ五輪代表もロンドン五輪代表も、「GKで試合に出ている選手がほとんどいない!」というのが決まり文句だった。
日本サッカーの若手GKに何が起きているのだろうか?
フィリップ・トルシエの警鐘
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Profile
川端 暁彦
1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣『エル・ゴラッソ』を始め各種媒体にライターとして寄稿する他、フリーの編集者としての活動も行っている。著書に『Jの新人』(東邦出版)。