現在モスクワの強豪と言えばスパルタク、CSKA、ロコモティフ、ディナモの4強だが、15年ほど前まではそこにトルペドというクラブも名を連ねていた。リーグ優勝3回、国内カップ制覇7回を誇り、数多くのソ連・ロシア代表選手を輩出してきた創設95年の名門である。トルペドとは「水雷型自動車」を意味し、国営自動車工場ZILがクラブの母体だった。
ソ連崩壊により外国車が一気に流入すると国内の自動車産業は衰退。財政難に陥ったZILが1996年にクラブを売却した後は不安定な経営が続き、2009年にはアマチュアの4部にまで降格した。
2014年に1部返り咲きを果たすも資金調達ができず、3部からの再出発を余儀なくされるなど上下動を繰り返している。……
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Profile
篠崎 直也
1976年、新潟県生まれ。大阪大学大学院でロシア芸術論を専攻し、現在は大阪大学、同志社大学で教鞭を執る。4年過ごした第2の故郷サンクトペテルブルクでゼニトの優勝を目にし辺境のサッカーの虜に。以後ロシア、ウクライナを中心に執筆・翻訳を手がけている。