『「戦術脳」を鍛える最先端トレーニングの教科書』から一部抜粋
好評発売中の『「戦術脳」を鍛える最先端トレーニングの教科書』(著:山口遼)は戦術的ピリオダイゼーションに基づいたトレーニング構築の「理論」と「実践」がメインテーマだが、もう1つの切り口として「ゲームモデルで読み解く新・観戦術」として、新しい分析法の提案を行っている。その中から、リーガを制したレアル・マドリーを「ゲームモデル」の観点から掘り下げた論考を特別公開!
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まず前提として、レアル・マドリーは明確なゲームモデルを持っていない可能性が高い。「可能性が高い」と保険をかけたのは、単にピッチ上に表出する現象と、チームの内部で共有されているビジョンや哲学の間に距離が開くことは珍しいことではないからだ。ガチガチのゲームモデルを持っているものの、それが上手く表現できていないチームや、あるいはゲームモデル自体の自由度が高めで、様々なゲームプランに対応できるようにしているためにゲームモデルが何なのか見えづらくなっているチームなど、ゲームモデルを持っていてもそう見えないパターンも数限りなく存在する。
当然、レアル・マドリーに関してもその可能性は依然として捨て切れないのだが、ピッチの上で起きている現象から察するに、特定のゲームモデルに依存しているようには見えない(理由は後述する)。そこでここでは、レアル・マドリーがゲームモデルを持っていないと仮定した上で、どうしてそう読み取れるのかについてまず述べる。
一方、先にも述べた通り、レアル・マドリーはゲームモデルがなくとも再現性を手にしている稀有なチームであるが、彼らはどうやってチームとして掲げるゲームモデルという地図なしに組織化し、再現性を担保しているのだろうか。これらの疑問に答える形で、ゲームモデル以外のアプローチによる複雑なシステムの組織化について考えていこう。……
Profile
山口 遼
1995年11月23日、茨城県つくば市出身。東京大学工学部化学システム工学科中退。鹿島アントラーズつくばJY、鹿島アントラーズユースを経て、東京大学ア式蹴球部へ。2020年シーズンから同部監督および東京ユナイテッドFCコーチを兼任。2022年シーズンはY.S.C.C.セカンド監督、2023年シーズンからはエリース東京FC監督を務める。twitter: @ryo14afd