人はそれを“嗅覚”や“eye for goal(ゴールへの目)”と呼ぶ。数多の偉大なストライカーが発揮してきた「得点感覚」とは、生まれ持った才能であり、教え込むことはできないのだろうか?
この問いについて、プレミアリーグで歴代最多ゴールを誇る男は「難しい」と『BBCラジオ』に語る。ブラックバーン(1992-96)、ニューカッスル(1996-06)で441試合260ゴールを記録したアラン・シアラーだ。「正しいタイミングで正しいポジションを取るのは生まれ持った才能だと思う」と説く元FWは、シュート技術を向上させることは可能だが「適時・適所」を教えるのは困難だと考える。
シアラーといえば3度もプレミア得点王に輝いたゴールマシーンだが、前線からの守備やポストプレーなどチームワークの印象も強かった。しかし子供の頃はまったく違ったというのだ。「子供の頃は欲張りで強情で嫌な奴だった」と振り返る。FKやスローイン、CKまで自分でやるような少年で「どこでもプレーした」が、次第に「ゴールの興奮」に一番の刺激を覚えるようになりストライカーに定着したという。
才能だけならイングランド史上5本の指に入る元サウサンプトンのマット・ル・ティシエも、点取り屋は作られるものではなく「生まれるもの」と話す。大半のキャリアをトップ下で過ごしながらリーグ戦443試合164ゴール(1986-02)の数字を残したル・ティシエは「生まれつき備わっている本能があり、それがない者に教えるのは困難だろう」と英誌『FourFourTwo』に語る。……
Profile
田島 大
埼玉県出身。学生時代を英国で過ごし、ロンドン大学(University College London)理学部を卒業。帰国後はスポーツとメディアの架け橋を担うフットメディア社で日頃から欧州サッカーを扱う仕事に従事し、イングランドに関する記事の翻訳・原稿執筆をしている。ちなみに遅咲きの愛犬家。