footballista Pick Up Player
Roberto FIRMINO
ロベルト・フィルミーノ
1991.10.2 181cm / 76kg
FW BRAZIL
モハメド・サラーとサディオ・マネの破壊力を倍増させると同時に、自らゴールまで奪う男。母国ブラジルでは治安の悪い地域で育ち、両親に「外に出ること」を禁じられながらも無断で抜け出しストリートフットボールに没頭した少年は、圧倒的な献身性によって今やリバプール(2015年加入)を代表する選手となった。
ユルゲン・クロップ監督が「プレーの細部へのこだわりと献身性によって、彼はフィールド上を制圧する。決めているゴール数は6点(発言した2018年11月下旬時点)かもしれないが、チームメイトのために5000のギャップを作り出す」と称賛し、全幅の信頼を寄せるブラジル代表FWは、プレーの安定感と幅広さを高く評価される。周りを使う能力に長け、スペースに入り込んだ味方に預けるようなパスの精度は抜群だ。
判断力にも優れており、前を向ける場面ではターンからのスルーパスを狙う。相手を背負った状況とそうではない状況を理解する能力に秀でた、ゼロトップには最適の人材と言える。さらには両サイドに流れてウイングとポジションを入れ替え、彼らへの供給役にも柔軟に対応。フィルミーノは現代的なCFに求められるスキルを高レベルで兼備し、フィジカルやスピードだけに頼らないプレースタイルを確立している。
しかし、他のストライカーを寄せ付けない突出したスキルも存在している。それこそ、「死角に位置する相手選手へのパスコースを遮断する」能力だ。“背中に目がついている”という言葉も決して誇張ではないだろう。CFは常にチームにおいて「ファーストプレスの基準点」としての働きを求められ、相手MFへのパスコースを塞ぐことで前進を妨害する必要がある。フィルミーノは正確に中盤の底に位置する選手へのコースを消し、敵のビルドアップを機能不全に追い込むのだ。
基礎的なスキルに思えるかもしれないが、視界の外でボールを引き出そうとする守備的MFの位置を把握することは簡単ではない。その能力の礎となるのは、前述のような攻撃時の特徴的なプレーで活用されている「視野」だ。優れた視野と戦術理解力でスペースを消し、リバプールのハイプレスの「先駆け」として周りのアタッカーを動かすという要求に応えることで、フィルミーノは「前線からの守備」において欧州屈指のプレーヤーとなった。
ブラジル代表では、チッチ監督がゼロトップ的な役割をチームに組み込もうとしている。ポジション争いのライバルであるガブリエウ・ジェズスと比較すると、ワイドで縦に仕掛けるようなプレーでは劣るとしても、守備のポジショニングではG.ジェズスを圧倒する。セレソンが土壇場の勝負に挑む時、指揮官が選択するのはフィルミーノになるかもしれない。
Photos: Getty Images
Profile
結城 康平
1990年生まれ、宮崎県出身。ライターとして複数の媒体に記事を寄稿しつつ、サッカー観戦を面白くするためのアイディアを練りながら日々を過ごしている。好きなバンドは、エジンバラ出身のBlue Rose Code。