“ケガについては話したくないな。メンタルのために良いって思わないから”
Breel EMBOLO
ブレール・エムボロ
FW36|シャルケ
1997.2.14(22歳)SWITZERLAND
悲劇に見舞われたのは、シャルケ加入から間もない2016年10月だった。アウグスブルクのDFコスタス・スタフィリディスから「ホラーファウル」(『WAZ』紙)を受け、左足の腓骨および足首骨折、さらに内側副側靭帯を断裂。同年夏にバーゼルからクラブ史上最高額の2250万ユーロで加入し、ドイツでの飛躍が期待されていた当時19歳のエムボロは一転して、「複数の専門家がハイレベルなサッカーを続けられるか疑問視」(ハイデル元SD)するほどの重傷を負い、選手生命の危機にさらされた。
ただ、心は折れなかった。本人が「人生で最も困難な時期だった」と振り返るように過酷なリハビリ生活を余儀なくされたが、その苦しみを一切見せることなく、むしろSNSなどでポジティブなメッセージを発信。愛する家族やフィアンセに加え、「絶対に下を向くな」と助言をくれたナウド(現モナコ)ら同僚のサポートを力にして17年9月、336日ぶりにリーグ戦出場を果たした。
復帰後のエムボロは周囲の期待に見合う結果を残せているわけではなく、18年11月にはまたしてもシーズン中の復帰が危ぶまれる重傷(左足の中足骨骨折)を負い3カ月以上の離脱を強いられた。それでも本人の心は折れず、やはり前向きな姿勢を貫く。弱冠18歳で自身の名を冠した慈善団体を立ち上げ、恵まれない子供たちを支援している心優しき男は、自慢のフィジカルに勝るとも劣らない強靭なハートを武器に、何度でもピッチに戻ってくる。
Photos: Bongarts/Getty Images
Profile
遠藤 孝輔
1984年3月17日、東京都生まれ。2005年より海外サッカー専門誌の編集者を務め、14年ブラジルW杯後からフリーランスとして活動を開始。ドイツを中心に海外サッカー事情に明るく、『footballista』をはじめ『ブンデスリーガ公式サイト』『ワールドサッカーダイジェスト』など各種媒体に寄稿している。過去には『DAZN』や『ニコニコ生放送』のブンデスリーガ配信で解説者も務めた。