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結局、レアル・マドリーは強いのか、それとも弱いのか?

2019.02.26

 今シーズンのレアル・マドリーを見ていると、昔教室に1人はいた“泣くと強い”クラスメイトを思い出す。すぐに泣くが涙目で椅子を投げつけるなど、とんでもないことをする。本気になると強いが普段は弱い。気まぐれで蓋を開けてみないとわからない。CL&FCWC3連覇、3年連続欧州一で世界一のチームに常時本気でいろ、というのが土台無理。どんなコンペティションでもどんなスコアでもどんな時間帯でもゴールし何が何でもメッシに勝つ、というモチベーションを注入していたロナウドが抜けた後ではなおさらだ。

 就任当初はいろいろやったソラーリが、ジダンのコピーに戻ってしまったかのように戦術的には[4-3-3]、1ボランチ+2インサイドMF、3トップでのカウンターサッカーで完成している。似たピースを交換する形でないと新顔が加わるのは難しい。結局はロナウドのゴールがない分、“劣化版”ではあるがこれが最強。ベイルはソリストでベンゼマは大人しく、アセンシオは優等生でビニシウスはまだ子供でイスコとは不仲。クロースもモドリッチも世界一の職人だが、ロッカー内のマネージメントを任せられるタイプではない。後ろはセルヒオ・ラモスがシメたとしても前にリーダーがいない。肝心のソラーリに自分の色を出すつもりがないことは賢明かもしれないが、野心には欠ける。頼みのフロレンティーノ・ペレス会長も刷新は来夏で今は過渡期と見なしているフシがあり、大改革のためには不振はむしろ都合が良い……。

 上積みがないとなると、今季の最高到達点はどこなのか? 何よりコンスタントさが要求されるリーグ制覇は難しい。CLも強敵相手の逆境をプロ意識だけで乗り切るのは難しい。可能性があるのはコパ・デルレイだけではないか。

Photos: Getty Images

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Profile

木村 浩嗣

編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。

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