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ユベントスは変わり続ける。ロナウド加入による変化の萌芽

2018.12.10

毎年モデルチェンジを繰り返しながらリーグ4連覇(コンテ時代から7連覇)、CL上位進出を続けてきたアレグリ監督のユベントス。そしてロナウドが到来した今季のチームを、イタリアのWEBマガジン『ウルティモ・ウオモ』はどう見たか。今回はシーズン序盤にしてさっそく変化の息吹が感じられたセリエA第2節、新しい組み合わせとして[4-3-3]を採用したラツィオ戦(○2-0)のレポート(8月27日公開)を特別公開。


 シモーネ・インザーギ率いる昨季のラツィオは、ユベントスと戦った3試合のうち2試合、8月のスーペルコッパと10月のアウェイ戦で勝利を収めた。どちらの試合でもラツィオは、ルイス・アルベルトとミリンコビッチ・サビッチの「間受け」、そしてインモービレの縦のスピードという持てる攻撃のポテンシャルを最大限に生かした。マッシミリアーノ・アレグリは、敵の最大の長所を潰す戦術的対応を見出すことができず、それゆえローマのオリンピコで戦ったシーズン3試合目は、重心を低く設定した[3-5-1-1]で2ライン間のスペースを埋め、ラツィオのポジティブトランジション(守→攻の切り替え)を封じるという慎重な策に出なければならなかった。

 ユーベはやっとラツィオの攻撃を食い止めることができたが、その代償として攻撃力を犠牲にせざるを得なかった。終了間際にパウロ・ディバラが個人技でゴールを奪っていなければ、勝利を手にすることはできなかっただろう。昨季に直面したこの戦術的困難は、18-19シーズン第2節のこのラツィオ戦でアレグリに、キエーボとの開幕戦(○2-3)が説得力のある内容だったにもかかわらず、そこで採用した[4-2-3-1]を棚上げするという興味深い選択を強いることになった。


よりアグレッシブなラツィオ
Una Lazio più agressiva

 アレグリはクアドラード、ドウグラス・コスタ、ディバラという3人のアタッカーをベンチに残し、前線に右からベルナルデスキ、マンジュキッチ、ロナウドの3トップ、中盤にはピャニッチ、ケディラとともにマテュイディを左インサイドMFとして置くという、一見すると[4-3-3]に見える布陣をピッチに送った。一方のラツィオは昨季と同じ[3-5-1-1]という、予想通りの布陣でこの試合に臨んだ。

18-19セリエA第2節、ユベントス対ラツィオの両チーム先発フォーメーション。試合は30分ピャニッチ、75分マンジュキッチのゴールでホームチームが2-0で勝利した

 S.インザーギが選んだ11人にサプライズはなかったが、相手と状況に合わせて戦術を微調整する現実主義的な監督らしく、従来基本としてきた、組織的守備時にチームの重心を下げることで守備ブロックの密度を高め、同時にカウンターで攻略するためのスペースを前方に作り出すという戦い方を変えてきた。ボールロスト時には高い位置での即時奪回を目指したゲーゲンプレッシングを仕掛け、さらにユベントスのビルドアップ時にも前線からのアグレッシブなプレッシングを試みたのだ。

 できる限り自軍ゴールから遠い位置で守ろうとすることで、ロングカウンターよりもむしろ敵陣でのボール奪取からのショートトランジションに活路を見出そうというアプローチである。その結果、両監督の戦術的な駆け引きは、後方からパスを繋いでビルドアップし、ボール奪取後もポゼッション確立を志向するユーベに対し、その組み立てを可能な限り妨害し、高い位置でボールを奪っての逆襲を狙うラツィオという構図で行われることになった。


よりダイレクトなユベントス
Una Juventus più diretta

 この試合、ユベントスが攻撃をビルドアップする際のポジショナルな構造は、開幕戦で見せたそれとは異なるものだった。キエーボとの戦いに[4-2-3-1]で臨んだユーベは、左右のSBを高い位置まで進出させ、後方からのビルドアップをボヌッチ、キエッリーニのCBペア、そしてプレーメイカーのピャニッチという3人に委ねていた。もう一人のセントラルMFケディラは、縦の動きで敵守備ブロック内のスペースをこじ開けようと試み、ディバラ、D.コスタ、そしてクアドラードは、敵中盤ラインの背後のスペースを埋めるポジションを取っていた。

 しかしこのラツィオ戦では、おそらくラツィオの鋭いポジティブトランジションを警戒したのだろう。ボールのラインよりも後ろにより多くの人数をかけてそれに対処するため、より用心深い陣形を選んだ。両SBは低い位置にとどまって後方でのパス回しをサポートし、ビルドアップの初期段階では左右のインサイドMFもピャニッチの両脇を固めて安全なパスコースを提供したのだ。

ビルドアップ時のユベントス。カンセロとアレックス・サンドロの両SBは低い位置で最終ラインでのパス回しに加わり、ケディラとマテュイディの両インサイドMFはピャニッチの近くにポジションを取っている

 インサイドMFが前進するのは、いったんポゼッションが確立されてから。それも、敵中盤ラインの背後に位置を取るよりもむしろ、守備ブロックの奥深くまで侵入してCFに並び、時にはCFを置き換えるような動きが目立った。これには、彼らのプレースタイルがもともとそういう傾向を持っているからという側面もある。

 このプレー原則に沿って戦ったユベントスは、敵の2ライン間、とりわけアンカーのルーカス・レイバの両脇という重要なスペースをまったく活用することができなかった(キエーボ戦ではこのスペースは常に占有していた)。

右インサイドMFケディラがピャニッチの隣というポジションを放棄して前線への進出を試みる。中盤と前線を繋ぐスペースは空白のままだ

 ユーベはビルドアップ時にこの陣形を取ったがゆえに、中央ルートから敵の守備陣形を揺さぶりこじ開けることができず、サイドのチェーンを使うか、前線のマンジュキッチかロナウドにロングパスを送り込む以外に、ボールを敵陣まで運ぶ術を持たなかった。

 カンセロの高い個人能力(ドリブル突破4、クロス8、ボール奪取10)のおかげで、右サイドからの攻撃はそれなりに機能した。しかし左サイドでは、アレックス・サンドロの無秩序なプレー(パス失敗12はチーム最多)とマテュイディの技術的な限界に加えて、前線に明確な基準点を欠いていた(ロナウドとマンジュキッチが入れ替わりながらCFのポジションを埋めた)こともあって、スムーズにボールを前進させることができなかった。全体として見れば、ユベントスの平板な陣形は、横方向のパスコースばかりを作り出してパス回しをぎくしゃくしたものにしただけでなく、ビルドアップでのパスミスが増えてラツィオにショートトランジションの機会を提供するという、本来の狙いとは真逆の結果をもたらすことになった。

ラツィオはボールサイドの密度が高い秩序の取れた守備陣形を保っている。対して前方に安全なパスコースが見えていないA.サンドロ(左奥)は、ケディラ(手前)への難しいパスを試みた。しかしM.サビッチがこれをカットし、ラツィオのポジティブトランジションが発動することになる

 S.インザーギは試合後、チームのパフォーマンスは悪くはなかったものの「軽いプレーが多過ぎた」と、不満を隠さなかった。これは、ユベントスが与えてくれたカウンターのチャンスを決定機に結びつけることができなかった詰めの甘さを指してのことだろう。

アルフレード・ジャコッベによるゴール期待値(xG)マップ。シュート16本でxGが1.6のユベントスに対し、ラツィオは9本でxGはわずか0.4。後半のシュートは2本にとどまった


ロナウドが加わったユーベは?
Come va con Cristiano Ronaldo?

 この試合のユベントスは、1週間前のキエーボ戦に臨んだのとは大きく異なるチームだった。ラツィオのカウンターに備えネガティブトランジション(攻→守の切り替え)時にボールのラインより後ろに多くの人数を残すことを想定したメンバーと陣形は、攻撃時の振る舞いを慎重なものにした。にもかかわらず、とりわけ前半の45分間、ユーベのボール循環はほとんど機能していなかった。中央ルートのパスコースが作り出せないがゆえに、ラツィオ守備網の秩序を崩す術を持たなかったのだ。

 さらに、ボール循環の停滞はいくつかのボールロストを生み出した。ラツィオがそこから危険な状況を作り出せなかったのは、ユーベの最終ラインが的確な読みで対応したこと、そしてラツィオがミスで自らチャンスを潰したことが原因であり、アレグリが採用した守備の戦略がはまったからではなかった。

 クリスティアーノ・ロナウドの起用法も、キエーボ戦とは異なるものだった。開幕戦ではディバラの存在、そしてD.コスタの内に入り込む動きが、ロナウドの外に流れる動きを補完していた。一方ラツィオ戦でのロナウドは[4-3-3]の左ウイングとして起用され、CFのマンジュキッチと頻繁にポジションを入れ替えていたが、その動きはあまりにメカニカルであるように見えた。

 2人は90分で3回しかパスを交換していない。開幕戦でロナウドとディバラは8回パスを交換していた。

ラツィオ戦の開始から62分までのパスマップ。マンジュキッチとロナウドのポジション平均値は実質的に重なっており、2人が連続的にポジションを入れ替えていたことを示している

 2つの試合で見られたメンバー選択と戦術の大きな違いは、アレグリが非常に幅広い選択肢を持っており、しかも個々のプレーヤーの質が非常に高いという事実を裏づけている。このラツィオ戦を決定づけたマンジュキッチの2点目も、途中出場したD.コスタがカンセロと交わしたテクニカルなコンビネーションからもたらしたものだった。ユベントスは試合を通して尻上がりにパフォーマンスを上げただけでなく、90分を通したインテンシティにおいてもラツィオを明らかに上回っていたのである。

12月7日、インテルとのダービーに1-0で勝利したユベントスは開幕15試合14勝1分で2位ナポリとの勝ち点差は8。盤石の強さで無敗街道を邁進している


Photos: Getty Images

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ウルティモ ウオモ

ダニエレ・マヌシアとティモシー・スモールの2人が共同で創設したイタリア発のまったく新しいWEBマガジン。長文の分析・考察が中心で、テクニカルで専門的な世界と文学的にスポーツを語る世界を一つに統合することを目指す。従来のジャーナリズムにはなかった専門性の高い記事で新たなファン層を開拓し、イタリア国内で高い評価を得ている。媒体名のウルティモ・ウオモは「最後の1人=オフサイドラインの基準となるDF」を意味する。

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