金井貢史が“そこにいる”理由。「型にはまらない問題児」
【Jクラブ特集第2弾】集客したければ魅了せよ――偶然には頼らない名古屋グランパス Episode 5
「なぜそこに金井がいる!」
リーグ後半戦の名古屋グランパスの試合を見ていた人なら、たとえ相手チームのサポーターでも一度はこう思ったのではないか。SNSでは「なぜそこに金井」、またそれを略した「NSK」というハッシュタグまで生まれるほどだった。
金井貢史は加入直後の19節仙台戦で即先発出場を果たし、チームは16戦ぶりの勝利を飾る。そこから破竹の7連勝となるがそのすべての試合でスタメンを飾り、ピッチ上では神出鬼没の動きを繰り返し躍進のキーマンとなった。
なぜ加入直後から活躍できたのか。インタビューしてみると金井が風間八宏監督のサッカーの申し子であることがわかった。
1万文字にものぼる本ロングインタビューでは、サイドバック論、風間語の真意、そしてチームメートのことや家族のプライベートな話にまで及んだ。
「もらえるところに行く。それだけ」
―― 今回の特集で金井選手をインタビューしたいと思った理由は、第一にすごく好調だということ、第二に横浜F・マリノスと名古屋を比較して語れるのではないかと思ったことです。実際、横浜FMと名古屋グランパスでサイドバックに求められる役割は違いますか?
「違いますね。グランパスはいわゆる普通のサイドバックじゃないですけど、ある程度みんなが想像するサイドバック像に近い。マリノスはボランチに近いサイドバックでした。どちらかというと、組み立てに頻繁に参加して、自分も一緒に出て行くイメージがマリノスは強いです。グランパスは上下動すること、(宮原)和也みたいなものが求められています。でも、自分は両方やらないといけないと思っているし、中に入れば中盤も厚くできますし、うまく相手によってやることを変えるように意識してやっています。普通のサイドバックとしての像がグランパスにはあって、まぁ普通という言い方もおかしいですけど。マリノスは特徴がある変形的な“偽サイドバック”みたいな役割をすごく求めるチームなので、そこが一番の違いだと思います」
―― 名古屋に来て、内側に絞ったプレーが非常に効果的だと見ています。実際に得点がすごく増えていたり、川崎戦でもまた抜きのすごいスルーパスが出たり。ああいうのは横浜FMでやっていた部分が出ているのかなという気がします。
「もともと中でもらいたいタイプなので、今年から“偽サイドバック”がマリノスで有名になりましたけど、その前からインサイド気味にポジションを取ってもらうこともやっていたので、要するに変な話ですけど、もらえるところに行く。ただ、それだけのことです。相手も見ながらやってますけど、相手がどう守備してくるかを見ながら常にやっています。そこでうまくポジションを取れたし、川崎戦も青木(亮太)が外に相手のサイドバックを引っ張っていて、自分があそこに入ればセンターバックが出てくるな、と思ったところに(前田)直輝が走ってくれたので。自分が相手をうまくずらせている部分はあると思うので、それは続けていきたいなと思います」
―― 相手の嫌なところを意識しているとおっしゃっていましたが、具体的にどういうポジション取りでしょうか?
「誰が僕のところにプレスしてくるのか、というポジションです」
―― 曖昧なポジショニングですね。
「そうです。自分たちもそういうポジションを取られたら嫌です。サッカーってそういうポジション取りの戦いだと思っています。典型的なのは川崎戦だと思います。あそこでボールを僕がもらうことによって、センターバックが出て来たら、その裏が空く。出て来なかったらシンプルにパスも出せるし、シュートも打てる。あの形がベストだと思います。僕が間でもらっても相手が来なかったらあまり意味がないので、そういう時はあまり中に入らないようにしています。ボールをもらってから、誰がプレスに来るのかという様子見も試合中にはしています。うまく相手を観察しながらやっていますね」
―― 金井選手の特徴である中で受けるところですが、風間さんから「外に行け」とは言われませんか?
「ないですね。ボールをもらえるところに行け、と言ってくれます。常に全員が関わり続けることを風間さんは言っているので。僕が中に入ったら誰かがサイドに開いて、誰かが中に入ったら僕がサイドに開いていく。そこはうまくできていると思います」
―― 風間さんの考え方と金井選手の考え方はもともとマッチしていたんですか?
「そうですね。風間さんの考えは川崎で指導している時から教わってみたいなと思っていたし、多分Jリーグの中で風間さんに教わりたいという人は多いと思う。マリノスでも何人か受けてみたいという選手もいました。サッカー選手として興味深い戦術だと思うので、その監督のもとでやれるのは僕はすごい楽しいし、今も楽しくやっています」
―― 風間さんは会見で「貢史なんてどこにいるかわかんねえじゃん」と言っていましたが、これも褒め言葉ですね。
「そう思ってもらえているということは、特徴が出ているということなので。逆に守備では、ボールを取られた時に戻らなきゃ、何やってんだという話になります。強いて言えば、長崎戦は自分のところからやられているので、もっと考えなきゃいけない部分でした。その分、川崎戦は最初は自重した部分がありました。点を取りにいかなければならなくなり、あそこに入れたというのもあります。だったら最初からやればいい。自分の中で確信していたので、今後も迷わず嫌なところに行きまくります」
―― 風間さんは積極的に仕掛けていく人間が好きな感じがあります。その意味ではそういった心構えのほうがいいのかなと。
「そうですね。ミスを恐れちゃダメですね。自分はもともとミスを恐れないでやるタイプなので、ミスったらミスったでしょうがないと思っています。他の監督だと、ミスったらなんでだよという話になる。自分のところでやられたら次の試合から出られないとか。実際過去にそういうこともありました。だから、自分のところがやられたら次の試合は出られないという危機感もあります。そういう意味ではまだチャンスも与えてくれる監督なので、しっかりその期待に応えないといけないです」
サッカー専用スタジアムで感じるメリット
―― 金井選手が来てから印象的だった試合が、2ゴールを決めた8月11日の鹿島戦だと思います。
「あれは自作自演ですもん。PKを与えなかったらあんなに忙しい試合にならなかった」
―― 後半30分くらいに入場者数が発表された時に、スタジアムでどよめきが出て、そこからゴール裏だけではなくて、メインやバックのほうも手拍子が徐々に増えていって、どんどんスタジアムのボルテージが上がっていった。その中で勝ち越しゴールが生まれて、さらに駄目押しのゴールが生まれました。あの時のスタジアムの後押しの雰囲気は感じていましたか?
「かなり感じました。走れましたもん。やる気にみなぎるじゃないですけど、まだまだいけるという感覚になりました。PKになっても、普通だったら『うわまじか』となるんですけど、別にそのあとも点取れるなと思えたぐらいです。本当にスタジアムのおかげです。でもみんなの熱気のせいでグラウンドが暑かったです(笑)。きつかったけど、走れました」
―― 声援でボルテージが上がると違いますか?
「すごいです。全然違います。まずあんな満員でやったことなかったですもん」
―― 豊田スタジアムがいいのは、4万人が入ってサッカー専用ということです。サッカー専用の良さは選手側も感じますか?
「すごく感じています。ピッチ上の距離感もつかみやすいし、とてもやりやすいです」
―― サッカー専用だとサポーターの後押しをより身近に感じられますか?
「そうですね。まあ、ヤジも聞こえますけど(笑)。そこは俺は褒め言葉と思って『なんだよ』ってポジティブにやるんですけど。でも、ヤジはあまり多くないですよね。むしろレフェリーに対して言ってくれるから、俺が言わなくてもいいやって思いますもん。一緒に戦ってる感がより増しますね」
―― 8月11日みたいな勝ち点の拾い方ができると、すごく強くなっていくんじゃないかというワクワク感があります。金井選手はその可能性は感じていますか?
「まだまだ強くなりますよ。一丸となってやってるし、ホームの時は負けちゃいけないと思ってやっています。後押しもすごいので、しっかり勝ちきりたい。今は声援のおかげで、本当にきつい時でも走りきれるところがすごくあります。本当にクラブで一体になって戦っているという感覚があります。夏祭りやガールズフェスタのプロモーションのように制作もいろいろやっていて、僕もサイトを見て企画がいろいろあって面白いなと思いますね。今まで来なかった年齢層の方がスタジアムに来て、勝った試合を見てもらえれば、また見に来たいと思ってもらえるといいなと。そういう意味では僕たちもクラブの期待に応えたいなと思います」
選手がいろんな仮装をすることについて
―― 事業部が巻き込んでやるイベントはすごく多いですね。
「そうですね。なかなかこんなにないですよね」
―― 金井選手はいろいろな衣装を着させられることについてはどう考えていますか?
「僕は全然いいですよ。やりたいです。全然使ってくれって感じです。面白いですよね。僕は好きです」
―― レーシングスーツをミッチ(ミチェル・ランゲラック)が着ていたり。
「これはいいですね。自分は子どもと一緒にやりたいです」
―― 選手ではやりたい人とやりたくない人で分かれたりするじゃないですか。
「名古屋はみんなやりたいんじゃないですか。これで満員になってくれるから、やりがいがありますよね」
―― ピッチ側も魅了しないといけないと思います。風間さんも意識しているところだと思いますが、サッカーを見る時にそのチームが攻撃的に行っているかどうかはサイドバックのポジションが一番わかりやすいと思っています。その位置が高いと攻める姿勢が強いかなと思っていますが、風間さんは攻撃的にいきたい方ですが、金井選手はサイドバックとして高い位置を取る意識を持っていますか?
「あります。ペナ(ルティエリア)に何回入れるかにこだわってます。常にこぼれ球を狙っています。盗みに行ってるんですよ」
―― 見ていて神出鬼没感というか、ゴールが決まった後に「あ、金井選手だった」みたいなことは結構ありますよね。
「そうですね(笑)」
―― そういう時に走りきる自分の走力に自信がありますか?
「ないです。走力はないです。走力がないからこそタイミングで」
―― そこが周りを見るというところのポイントになるんですね。
「そうですね。そこで見間違えると、カウンターをくらいますけど。でも、そこが面白いところなので楽しんでます」
―― サイドバックは全部見えるので、状況把握できて楽しいところですね。
「そうですね。面白いです」
―― ここからもっとグランパスが強くなれるとおっしゃいましたが、どんなところに伸びしろがあると思いますか?
「シンプルにパス&ゴーや、パスして止めてというのをビビらないでやること。川崎の選手がやっていたこと。あのゲームが僕たちにとってすごくお手本になるゲームでした。あの試合のように僕たちは焦ってしまうところがあったんですけど、相手は自信を持ってやっていた。僕たちもあそこまでいけるし、あれ以上にもいけると思う。そういう意味で川崎戦後の練習はみんな“止めて蹴る”を今までよりもやっていて、監督も強調してやっています。自分たちももっとやらないといけないとわかっていました。川崎戦後のリラックスルームで何人かでゲームを見ていても『やっぱりうまいな』という話になりました。
自分たちも自信がある時は自然とできているし、得点を取ったシーンなんて、相手は関係なく、止めてしっかり前向くこともできていた。そのあとのチャンスも全員自信持って前向いてやっていました。その回数をもっともっと増やすこと。ペナルティエリアの前での迫力は、川崎よりあったと思います。いかにその回数を増やすか。自陣からのビルドアップもそうですけど、相手陣地でサッカーをし続けるためにボールを失わないようにしないといけない。今日の練習でも、しっかり大事につないでやっていました。そこがもうワンランク、ツーランク上がればもっと厚みのある攻撃ができると思います」
“風間語”は実はシンプル
―― “止める蹴る”は風間さんのサッカーにおいては重要ワードだと思います。実際に来てみて、カルチャーショックはありましたか?
「マリノスでは、逆に『ボールを止めるな』と言われていたんです。足元に止めるのではなくて、ちょっと持ち出してどこにでも出せるようにという感覚でやっていたんですけど、ここではピタッと止めて、体の向きで相手を止めろと。それが自分の中では新鮮でした。止めることはまだまだうまくならないといけないですけど、すごく楽しいです。みんな止める時と運ぶ時の判断もいいですよね。毎日練習しながらみんな巧いなと思いながらやっていますよ」
―― ボールを止めて体の向きで相手を止める。
「そうです。ボールをちゃんと止めちゃえば相手は飛び込めないので。その感覚は今まで持っていませんでした、マリノスのときは逆にちょっと止めるというか、止まってない状態でどこでもいけるようにと。そういう状態だと相手も仕掛けてくるのですが、マリノスはそこを外すのは巧いですね。でもその前に、相手に仕掛けさせないというのがグランパスのやり方です。それがすごく面白いですね」
―― 相手の勢いをそれで殺す。
「はい。本当に止まった時は相手は飛び込んでこないので、来ていてもフリーな状態になるので面白いです」
―― 風間さんは記者に「君たちのフリーは間違っているよ」と言うんです。
「俺もそう思います。間違えて覚えていました。そういう感覚です」
―― 風間さんの言葉はシンプルに理解すると結構簡単な話ですよね。
「簡単です。難しく考えちゃっているだけです。風間さんだからっていうので」
―― 風間サッカーはあまり複雑に考えちゃいけないなって思います。
「俺も最初そうでした。こっちに来て、『あ、シンプルに考えればいいんだな』って。確かにサッカーはシンプルですから」
―― シンプルに考えるとピタッとボールを止めて、相手も止めちゃえばフリーみたいなものだと。
「そうです。ボールを止めた後に、相手が取りに来たら簡単にかわせるので、そのエリアを自分が支配しているというか、ボールが自分の支配下にある、みたいな言い方をしてくれるので、その通りだなと思います」
―― その動きはもう自然に身につきましたか?
「そうですね。意識的にやっているので、今はだいぶスムーズにやれています。最初は止めることに頭がいっぱいだったんですけど、今は普通に周りも見えてきていますし、やりやすいです」
―― 金井選手はある意味止めないプレーも意識してやっている気がします。
「はい。自分はワンタッチから考えているので。ワンタッチができないとなったら、しっかり止める。確かにワンタッチが一番早いのですが、精度は落ちるかもしれない。でもワンタッチでいければ、受け手であるサイドバックの自分もスピードを上げていけます。止めて前を向けるのか、ワンタッチでいけるのか、それもまた周りを見ながらの判断になります」
―― もともと周りを見るプレースタイルというのもあって、止めて見ることとの相性の良さがあるのかもしれないですね。
「ドリブルとかスピードの個人技がないので、情報を入れるしかないと思ってやっています。自分の特徴は情報収集とポジショニングだけなので、そこは誰よりも気を使ってやっているつもりですけど、まだまだですね」
―― “止める蹴る”をする上で、風間さんは「自分の位置に止めろ」と頻繁に言っていますよね。風間さんの自分の位置は股関節の真下で、随分深いところですよね。O脚じゃないと難しいんじゃないかという(笑)。それだと使う筋肉が変わると思います。さらにインサイドパスも多用するので、川崎も当初は内転筋を壊す選手が多いと聞きました。その辺は全然なかったですか?
「僕はもともとインサイドばかりを使うタイプなので、内転筋は張ったことがないんです。だから今のやり方はすごくいいですね」
―― 本当に風間サッカーの申し子ですね。
「いえいえ。もともとスペースでもらうより足元でもらいたいので」
―― でも裏のスペースでもらうのもうまいですよね。
「それはみんなが足元でもらっているので、逆に裏のスペースが駆け引きで行ける。あとはスピードがないので、相手も警戒していないので逆を取れます。めちゃくちゃ速いわけじゃないし、自分でも速くないと思っているので、だからこそ駆け引き。逆を取った時の1~2歩で勝負が決まると思っていて、そこで勝負ができるポジショニングをしています。この特徴がない体だからこそ点が取れていると思います」
「自分は型にはまらない問題児」
―― 金井選手は結構どこのポジションでもできるんじゃないかという印象です。
「多分みんなどこでもできると思いますよ。今は最初の位置がサイドバックなだけであって、上がっていけばMFにもなるし、もう1個いけばFWにもなる。各ポジションのプレーをどうすればいいかの整理ができていれば、どこでもできると思います。守備の選手でも上がっていけばボランチになったりトップ下になったりするだけなので」
―― そこはそんなにシンプルですか?
「シンプルです。もともと前のポジションをやっていたので、サイドバックをやってみるかと言われた時に、『あ、はい』と言ってサイドバックをやるようになりました。その時に思ったのは、別に上がっていけば攻撃的なポジションでできるなと。僕の中ではシンプルに考えていることです」
―― ポジションへのこだわりはないんですか?
「ないですね。試合に出たいです。でも、生まれ変わったら絶対にセンターフォワードやっていますね。得点が取れるので(笑)。身長も変わってデカくなったら、格好いいですよね。目立ちたいです(笑)」
―― 自分はこのポジションが一番向いているとかそういうことは考えないですか?
「決めちゃうと限界がくると思います。そうなった時はプライドが邪魔すると思います。なんでだよ、って。昔はサイドバックで勝負したい気持ちは強かったですけど」
―― その考えは風間さんから影響されましたか?
「されましたね。正直ここに来たのも、マリノスでセンターバックをやっていてサイドバックでもう一度やりたいと思って来たんですけど、別にもういいなってなりました。どこのポジションに行ってもボールに関われるので、思っていたこだわりがなくなりました」
―― ポジションだけではなくて、風間さんの考えとして、型を持つことが本当にいいことなのかと。型を持つということは限界を決めているんじゃないか、というようなニュアンスの話がありました。結局自分で限界を決めちゃっているという話で。おっしゃっていることが風間監督とほとんど一緒だから、改めて申し子感があるなと感じました。
「いやあ、たまたまです。でも本当にそれは思いますよ。型を決めちゃうとその型だけになると最近思いますね。自分は型にはまらない問題児です(笑)。子どももそうですもんね。ダメとあまり言わないほうがいいと聞いていて、そうしたら自由にやるし。うちの長男もそれなりに考えながら動いてる。こいつらすげえな、負けてらんねえなと思います」
―― インスタをいつも見ているんですけど、お子さんと温泉に行かれていたんですか?
「行ってました。オフが2連休だったら基本的に温泉に行きます」
―― 温泉に結構詳しいですか?
「詳しくないです。必死になって調べて、ここがいいなって感じです」
―― 男の子3人で大変そうだと思います。
「大変です。毎日戦いです。悪ガキです。やばいです」
―― サッカーを始めている子はいますか?
「サッカーは始めてないですけど、横浜にいた時はスクールに行ってました。名古屋は4歳からなので、来年からです」
―― 逆にその分、体力が有り余っているから家で大変ですね。
「大変です。家でクッションボールでサッカーしてます。サッカーといっても当てているだけですけどね。ビビらせないように(笑)」
―― センス的なものは感じますか?
「ないです。多分ないと思います。でもまだわからない。蹴るのはしっかり蹴れるので、これからです。スパルタで(笑)」
グアルディオラと風間八宏の共通点
―― 金井選手は小さい頃から今も含めて好きな選手はいますか?
「小さい頃からシュンさん(中村俊輔)が好きです。あとは(アレッサンドロ・)デル・ピエロです。ちょっと前だと(フィリップ・)ラームです。今は(マンチェスター・)シティの選手が好きです。ほぼ全員。シティの試合はめちゃくちゃ見ます。グアルディオラが好きなので」
―― Amazonのオール・オア・ナッシングは見ましたか?
「すぐ見ましたよ。出た瞬間に。分厚いグアルディオラの本も2日間くらいで読みました。めっちゃ面白かったです」
―― オール・オア・ナッシングはどこが一番面白かったですか?
「全部印象に残りますね。監督の考え方はもともと本でわかっていたんですけど、バルサだけなのか他のチームでもやるのかとか。オール・オア・ナッシングとは関係ないんですけど、偽サイドバックをなぜやるのかという話は面白かったです。なぜボランチの選手をわざわざ使ってやるのか。それは、カウンターを阻止するためだと。加えて中盤の人数も多くすると。型破りというか、今までになかったことをやって、しかも成果を残していてこの人すごいなと。選手のことを本当によく考えていて、選手から慕われている。格好いいなって思いますね」
―― グアルディオラのもとでサイドバックやるのは大変だと思いますか?
「大変だと思います。あの人も風間さんと一緒で、センターバックの選手にボールを正面に止めろって言ってたんですよ。風間さん、グアルディオラと一緒ですごいじゃんって思いました(笑)。シティでも同じことをグアルディオラが言っていた。でもグアルディオラは型があるらしく、かなり緻密らしいです。バルサの時もディフェンスラインを紐で繋げてみんなで動いたりしたらしいですね。規則もいろいろあって、スパルタ的なところもあるらしいですけどね。でもそのくらいしないとああいうチームは作れないんだって感じましたね」
―― 最初はシティじゃなくてリバプールにオファーを出したらしいですね。
「そうなんですか。シティはリバプール苦手ですからね。まじ悔しいです」
―― シティ応援をしているんですね。
「応援しています」
―― 今年もプレミアリーグはシティが取るんじゃないですか。
「取ってほしいですけどね。ポゼッションサッカーっていう言い方はおかしいですけど、ああやってつなぐサッカーが勝つのが面白いですね。カウンターもカウンターですごいと思いますけど、やっぱりサッカーはボールを持っているほうが勝たないと、と思いますね」
―― 風間さんになぜ攻撃的サッカーが好きなのかを聞いたら、別に攻撃的なサッカーが好きというよりかは、みんな一番最初にボールを蹴りたいからサッカーを始めたわけで、それがモチベーションだからボールを持つところから始めなきゃ楽しくないじゃんと。そこだけだと。
「楽しまなきゃ意味ないですから。自分が楽しければ他の人も楽しくなります」
―― 同時期に移籍してきた前田選手の印象は名古屋に来て変わりましたか?
「昔は全然あんなに点取ってなかったです。シュート下手だったんですけど(笑)。(前田)直輝も風間さんに教わって、今までになかった感覚でやっているんじゃないでしょうか。もともと懐に止めたらうまい選手だったので、止めることを意識すれば直輝の良さも出るし、今はすごい自信を持ってやっています。マリノスにいた時よりも表情もいいですし、のびのびやってる感覚もあります。まあ、これからもっと点を取ってもらいますよ」
―― シュートがうまくなるのは技術ですか?
「いや、自信ですよ。練習もありますけど、自信が大きいです。自主練で(佐藤)寿人さんにも教えてもらっていました。いろんなところで年上の方の助言も聞いて自分に取り入れて、自分に必要なものは取り入れて、必要のないものは取り入れないというか。その区別がうまくいっていて自信にもつながっている。調子がいい時のいい循環に入っていると思います。いい流れができているからこそ、またいろんなものを吸収できるという。もともと持っているものはありますからね。シュートが決まるようになって怖い選手になったなと。頼もしいです」
―― 相手からしたら相当怖いですよね。
「面倒くさいですね。でも、癖を知っていれば止めれますけどね。俺は練習で直輝に抜かれないです(笑)。直輝とは駆け引き勝負なので。直輝も俺がディフェンスでやっているといろいろ考えてくるので。でも最終的に読めますけどね。直輝は今いい状態にいると思うので、これからも続けてお願いしたいです」
Photos: Mai Kurokawa
Profile
池田 タツ
1980年、ニューヨーク生まれ。株式会社スクワッド、株式会社フロムワンを経て2016年に独立する。スポーツの文字コンテンツの編集、ライティング、生放送番組のプロデュース、制作、司会もする。湘南ベルマーレの水谷尚人社長との共著に『たのしめてるか。2016フロントの戦い』がある。