RBライプツィヒが誇る“走攻守” のハイブリッド
Diego DEMME
ディエゴ・デンメ
1991.11.21(26歳) 170cm/68kg GERMANY
無尽蔵のスタミナと高いボール奪取力を誇り、かつて「ライプツィヒのガットゥーゾ」の異名を取った男が、今シーズンは典型的なパサーに変貌している。シャビのようにテンポの良いパスで速攻を促せば、ピルロさながらのタッチダウンパスで一気に好機を演出。国内リーグでのパス本数は全体3位、MFの中では誰よりも多い1497本を記録し、その成功率は昨季比で5%ほど上昇している(18年2月末時点)。
もともとキック精度に優れているとはいえ、これほどパサー色を強めた理由の1つはチームの戦い方にある。ハイプレス&中央突破主体の速攻を最も得意とするのは不変だが、相手が引いてくるケースが増えた今季は、自分たちのボール保持時間が長くなった。その中でおのずとビルドアップで貢献する頻度が高まったのだ。もちろん、味方DFからパスを引き出す動きを90分間通して続けられる献身性と心肺機能に加え、事前の首振りで周囲の状況を認識する基本を怠らない姿勢があるからこそ、GKを含めた最終ラインと前線を繋ぐ橋渡し役として機能している。
シンプルにパスをさばいているだけではない。ELラウンド32のナポリ戦第2レグでは、開始早々にややアバウトなボールをDFライン裏のスペースに供給。味方との呼吸はまったく合わなかったが、むしろ狙いは第1レグを1-3で落とし、前がかりに出ざるを得ない相手への牽制にあったはずだ。日常的に見せるSBへの散らしにしても、いったん低い位置で左右への揺さぶりをかけることで相手の守備意識をサイドに傾けさせ、崩しの局面で中央突破を図るための布石を打っている。
こうした頭脳的なゲームメイクを披露する一方で、守備のタスクも献身的にこなせるのが大きな強み。中盤でのボール奪取やプレスへの参加だけでなく、相手のカウンターを遅らせたり、SBが攻め上がった際に生じるサイドのスペースを埋めたり、幅広い活躍を見せている。それを支えるのは、やはり自慢のスタミナや次の展開を読む予測能力。自分たちの攻撃時にナビ・ケイタやカンプルのように頻繁に深い位置まで侵入せず、やや低い位置でボールロスト後の守備に備えている。
風邪で体調を崩した2月上旬以降に出場機会を減らしているが、特に引いてくる相手と対戦した時に速攻だけではやや手詰まりとなったRBライプツィヒにとって、デンメを軸とした遅攻の精度を高めることこそ、躍進の継続に向けた重要なテーマと言えるかもしれない。
Photo: Bongarts/Getty Images
Profile
遠藤 孝輔
1984年3月17日、東京都生まれ。2005年より海外サッカー専門誌の編集者を務め、14年ブラジルW杯後からフリーランスとして活動を開始。ドイツを中心に海外サッカー事情に明るく、『footballista』をはじめ『ブンデスリーガ公式サイト』『ワールドサッカーダイジェスト』など各種媒体に寄稿している。過去には『DAZN』や『ニコニコ生放送』のブンデスリーガ配信で解説者も務めた。