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フットボール・リークスが“告発”。移籍市場の今がわかる3大事件簿

2018.01.25

移籍ゲームの舞台裏

 2015年11月のWEBサイト開設以降、スター選手の契約書やクラブのスポンサー契約の詳細を次々と白日の下にさらし注目を浴びる「フットボール・リークス」。彼らによる数々の暴露の中でも、投資の色を強める現代の移籍ビジネスの特徴が色濃く表れた3つの事件をピックアップした。

膨張し続ける「マネー」をどう守る?

 まずは2016年12月に第一報が伝えられ、その後正式に起訴されるに至った「❶ロナウドの脱税疑惑」。すでに有罪が確定したメッシに続く2大スターのスキャンダルがサッカー界へ与えたダメージは計り知れない。

 通常、クラブと契約を結んだ際には自身の肖像権使用の権利をクラブに売却することになる。だが、歩く広告塔であるスターたちは肖像権のすべてではなく一部をクラブに「パケット売り」するとともに、肖像権管理の名目で海外に会社を設立。税金はその企業から法人税として納付する形を取る。例えば、ロナウドの持つ会社の一つが置かれていたアイルランドであれば法人税はわずか12.5%で済むのだ。こうした実態のない会社を各地に作ることで課税を逃れた額は1470万ユーロ(約19億円)にも上るとされている。

 注目すべきはロナウドの代理人であるジョルジュ・メンデスがマネージメントするモウリーニョやファルカオ、リカルド・カルバーリョにも同様の手口での脱税疑惑が浮上していることだ。法の網をかいくぐるような手口を選手だけで実行するのは容易ではない。こうした、移籍ビジネスの発展に伴い利益を得ようとする外部からの悪しき影響は今後も後を絶たない違いない。

 もう一つ、選手の移籍金や年俸増に寄与しているのがスポンサー契約料の高騰だ。2017年5月、「❷レアル・マドリーとアディダスとの契約内容のリーク」では、普段はなかなか表に出ないスポンサー契約の細部が明らかにされた。10年間で総額10億ユーロ(約1300億円)という超大型契約には「シベーレス広場での優勝パレード時、最も目立つ位置にアディダスのロゴを掲示する」という項目まであることが判明。また、クラブがスポンサーにスター選手の肖像権料を負担させることもあるという。ミランおよびレアル・マドリーからの要請で、レアル・マドリー所属時にアディダスと契約していたカカーに、アディダスが少なくとも150万ユーロをクラブに代わって振り込んでいたことが暴かれている。

15-16シーズンのCL制覇を祝いシベーレス広場でビッグイアーを掲げるセルヒオ・ラモス


選手が中国へ行く裏の理由

 オスカル、フッキにラミーレス……大物選手を次々と獲得して「爆買い」と称された中国勢。桁違いの年俸を得られるのは確かだが、彼らが中国行きを決断したのは果たしてそれだけが理由なのかと疑問を持った方もいることだろう。その問いに対する一つの回答を、2016年12月に明らかになった「❸ラベッシの契約内容のリーク」が示してくれている。

 2年間で5670万ドル(約62億円)という額面もさることながら、驚くべきはなんとこれが手取り額であるということ。諸経費はすべてクラブが負担する契約になっており、税金対策は一切必要ないのだ。さらに、支払いのプロセスもとんでもないことになっている。まず、契約成立と同時に「サイン料」として670万ユーロがルクセンブルクにあるラベッシの口座に振り込まれ、さらにその後9日以内に2000万ドルが振り込まれる手はずになっていた。つまり、ラベッシは試合に出る前の時点ですでに1年分の年俸を受け取っていたのである。

 先に見てきたように、選手たちは代理人の手引きによりあの手この手を尽くして高額の税金から逃れるための対策を講じている。だが、中国移籍時にはそうした苦労が必要ないとすれば…… もちろんすべての契約がそうとは限らないものの、選手はもとよりその周辺、特に代理人たちにとって非常に魅力的な移籍先であることは間違いないのだ。

Photos: Getty Images

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クリスティアーノ・ロナウドジョルジュ・メンデスフットボール・リークス

Profile

鈴木 達朗

宮城県出身、2006年よりドイツ在住。2008年、ベルリンでドイツ文学修士過程中に当時プレーしていたクラブから頼まれてサッカーコーチに。卒業後は縁あってスポーツ取材、記事執筆の世界へ進出。運と周囲の人々のおかげで現在まで活動を続ける。ベルリンを拠点に、ピッチ内外の現場で活動する人間として先行事例になりそうな情報を共有することを心がけている。footballista読者の発想のヒントになれば幸いです。

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