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レドンドが語る、世界一の重み。 エル・プリンシペが見たFCWC

2017.12.12

FIFA Club World Cup UAE 2017 presented by Alibaba Cloud


世界最強クラブを決める季節の到来だ。今年の舞台は日本を離れ、 2010年以来7年ぶりとなる中東のUAE。6大陸7つの王者が熱戦を繰り広げるFIFAクラブワールドカップ UAE 2017。12日からはいよいよ準決勝がスタート。南米王者グレミオ、そして史上初の大会連覇に挑むレアル・マドリードが登場する。今大会の魅力と大会初の連覇に挑むレアル・マドリードについて、 自身もかつて日本で「クラブ世界一」を経験したRマドリードのレジェンド、フェルナンド・レドンドに語ってもらおう。

※このインタビューは大会開幕前に収録した。

高まるクラブ世界一の価値

この大会が始まって以降、欧州のチームの本気度が上がってきている

──フェルナンド、久しぶりだね。今日は時間を取ってくれてありがとう。最初に、最近の君が何をしているのか、ファンのみんなに教えてくれるかな。

 「マドリードで指導者のコースを受けているんだ。私のことを古くから知る人は驚いているかもしれないけど、コーチ業への興味が湧いてきてね。人生では何が起こるかなんて誰にもわからない。いつからかサッカーを指導することが面白くなり始めたんだ。そしてこの仕事を知れば知るほど興味は深まり、喜びは大きくなる。それ以外には、今もサッカーをプレーしたり、アルゼンチンに戻ったりもしているよ」

──そのうち、どこかのクラブを指導するつもり?

 「もちろんさ。話があれば、やってみたいと思っているよ。そのためにはライセンスが必要だから、コースに通っているんだ。クラブのコーチを任されるのであれば、オファーの内容にきちんと納得した上でベストを尽くしたい。ただ、自信はあるよ。トップレベルで長年プレーした経験は必ず生かせるはずだし、自分のフットボールの知識を選手たちに伝えることもできると思うからね。現役の頃から戦術もしっかり学んだから、その点についても不安はない。このプロジェクトを成功させたいと思っている。やっぱり私のいるべき場所はフットボールの世界なんだと、あらためて感じているんだ。この愛するスポーツに身を置いていれば、私は本当にハッピーになれる。私の人生そのものと言っても過言ではないからね」

――その愛するスポーツ、サッカーの最近のトレンドについても少し聞きたい。昨シーズン限りでシャビ・アロンソが、先日はピルロが引退し、シャビも今シーズン限りでスパイクを脱ぐことを表明した。近年の欧州のトップレベルではあなたのような、中盤の中央で優雅にゲームメイクする5番(ボランチのアルゼンチンでの呼称)が減ってフィジカル色が強まっている印象があるけれど、こうした傾向をどう見ている?

 「彼らの引退も、そうした傾向も残念だよ。私はフットボールを学んだ頃は、クラシックな美しさを尊ぶコーチが多かった。しかし今では、それよりも走力や筋肉が優先されている。ただ、フットボールとはそれだけではなく、ボールと遊んで人々を楽しませることにも意味がある。その意味で、最近のピッチ上からは喜びが減ってしまった。それはとても残念なことであり、未来のフットボールにとって良いことではないと私は考える」

──では、そろそろ本題に入ろう。FIFAクラブワールドカップが今年も開催される。君は1998年にこの大会の前身だったトヨタカップで優勝しているよね。どんなことが印象に残っているかな?

 「選手として、最もうれしかった舞台の一つだよ。レアル・マドリードはあの頃から黄金期に入っていきCLを3度、トヨタカップを2度制した。私自身はそのすべてに関わったわけじゃないけど、1998年の大会ではフル出場してカップを掲げることができた。東京では熱心なファンに驚いたね。私たちが投宿しているホテルにも大勢のファンが詰めかけてきたんだ。本当に凄い数の人だった。あれを見るまで、日本でRマドリードがどれほど支持されているのか知らなかったからとても驚いたし、本当にうれしかったよ。バスコダガマとの試合では、ラウールの美しいゴールが目に焼きついている。彼のおかげでタイトルを手にすることができた。もう一つ、とても印象に残っているのは、日本の人々がすでにその時から、4年後のFIFAワールドカップを共催することへの期待にあふれていたこと。FIFAワールドカップを首尾良く開催したい――そんな気持ちが伝わってきたよ」

──“クラブ世界一”を決めるこのFIFAクラブワールドカップの意義について、君の考えを聞かせてほしい。

 「とても良いアイディアだと思う。かつて、1960~70年代のインターコンチネンタルカップではホーム&アウェイの2試合を行っていたけど、移動やセキュリティの問題で80年代から日本という中立地での一発勝負になった。その頃から世界的な注目が集まっていたと思うけど、各大陸のクラブ王者が集うFIFAクラブワールドカップに進化したことで、サッカーに対して世界中からより多くの興味が注がれるようになったんだ。そもそも、サッカーはヨーロッパと南米だけのものじゃない。だから、この動きは理にかなったものだと思うよ。それにこの大会が始まって以降、欧州のチームの世界一の称号に対する本気度が上がってきているように感じているんだ」

Rマドリード連覇への見通し

昨年の鹿島に感銘を受けた。集中力を持ってプレーしなければ、足をすくわれる可能性はある

──Rマドリードは大会初の連覇を懸けて今年も出場する。このクラブの強さの秘訣とは何だろう?

 「それは私が語るまでもないような気がするよ。サッカーファンなら誰もが、Rマドリードの凄さを理解しているはずだからね。チャンピオンズカップ(現CL)では第1回から5連覇しているように、国内外のタイトルに彩られてきた。それができたのは、偉大な選手たちが何人も在籍していたからだ。その後は国際タイトルに見放された時期もあったけど、経営面が磐石になってから再び黄金期を迎えた。ちょうど私がプレーしていた頃だね。そして現在は、また別の絶頂期を送っている。バランスの取れた陣容を彩る、きら星のごときスター選手たち。このチームに勝つのは至難の技だよ」

──ただ、今季の彼らは苦しんでいるようだ。この状況を君はどう見ている?

 「Rマドリードのように常に勝利を義務づけられたチームでも、苦しむことはある。特にタイトルを獲得した次のシーズンは、どうしてもモチベーションが維持しにくくなるものだからね。ただ、今季のRマドリードはちょっとした黒星を2、3回喫しているだけで、連敗しているわけでも危機を迎えているわけでもない。1つの敗北が大きく取り上げられてしまうのも、Rマドリードだからこそ。私は特に心配していないよ。そういう意味では、FIFAクラブワールドカップは良い気分転換にもなるんじゃないかな。リーガでのバルセロナとのクラシコがその後に予定されているのも面白いね。この大会でメンタル面をリフレッシュして、バルセロナ戦にも良い状態で臨めるだろう」

──メンバー構成自体は昨季とあまり変わらないが、今季のRマドリードは何が良くないのだろう?

 「特に何かが大きく変わったとは思わない。おそらく、プレーのインテンシティや試合へのフォーカス、集中力といった要素が、昨季の良い頃より少しばかり低下しているだけだろう。それに、今季はケガ人や累積警告が比較的多く、ラインナップが定まり切っていない。ジダン監督も、その点は頭が痛いかもしれないね。ただいずれにしても、そんなに心配することではないと私は思うよ」

──Rマドリードは昨年大会の決勝で、開催国枠で出場した鹿島アントラーズに苦しめられた。この試合は見た?

 「ああ、見たよ。鹿島アントラーズのサッカーに感銘を受けた。おそらく多くの人がそうであったように、試合前はRマドリードが楽に勝利を収めるだろうと考えていた。だが、鹿島は見事な戦いを披露して欧州王者を苦しめた。それにしても、まさかRマドリードがリードを奪われるとはね。FIFAクラブワールドカップは年々進化を遂げていて、特に欧州と南米以外のチームの競争力が上がっている。欧州勢と南米勢でも簡単に勝利を得ることはできなくなっているから、さっきも話したように彼らも真剣に取り組なまければならない。だから他のビッグゲームと同じくらいの集中力を持ってプレーしなければ、足をすくわれる可能性はある」

──あの試合での鹿島の印象をもう少し具体的に聞かせてもらえるかな?

 「非常にソリッドで、ダイナミズムにあふれ、高いテクニックを備えたチームだった。Rマドリードという荘厳なチームと対峙しても、一切臆することなく堂々と戦っていたよね。世界の舞台であのようなパフォーマンスを見せたことで、世界中のファンが日本のクラブの実力を知ったんだ」

──この大会ならではの難しさ。そういったものがあれば教えてほしい。

 「今回のRマドリードの立場で言えば、いつも通り南米王者を警戒するだけでなく、アジア王者にも気をつけたほうがいい。鹿島もそうだったけど、もし浦和レッズと対戦することになれば簡単な試合にはならないだろう。彼らはアジアの大会で頂点に立ったばかりで、勢いをキープしてこの大会にやって来るに違いないからね。それから、大会の難しさとはちょっと違うかもしれないし将来的な話になるけど、FIFAのカレンダーはきちんと見直されるべきだ。現状のフォーマットだと、コンディションにかなり差が生まれてしまって平等とは言えないと思う」

──では最後に、日本のファンにメッセージを。

 「みなさんにご多幸があることを祈っています。私が日本に行った時はとても良くしてもらい、そのことは一生忘れないよ。日本サッカーがもっと繁栄することを願っています」

プロフィール
Fernando REDONDO
フェルナンド・レドンド

(元レアル・マドリードMF)
1969.6.6(48歳)ARGENTINA

PLAYING CAREER
1985-90 Argentinos Juniors
1990-94 Tenerife (ESP)
1994-00 Real Madrid (ESP)
2000-04 Milan (ITA)

ブエノスアイレス生まれ。国内屈指の育成クラブとして知られるアルヘンティノスの下部組織でもとびきりの逸材として将来を嘱望され、16歳にしてトップチームデビューを飾った。5シーズン過ごした後、90年に当時1部のテネリフェへ移籍し欧州挑戦。レギュラーとしてチームをUEFAカップ(現EL)出場へと導いている。94年、その才能を認めたRマドリードに引き抜かれた。優れたテクニックを駆使した華麗なプレーで目の肥えたRマドリードファンを虜にするとともに、リーガとCLを2度ずつ、さらに98年トヨタカップの5タイトルを獲得。その後、2000年に惜しまれながら移籍したミランではケガに苦しめられて本来の輝きを取り戻せず、04年に引退を決断した。アルゼンチン代表では29試合1ゴールを記録している。

■大会放送予定・スケジュール





※詳しい放送・配信日時等は日本テレビ FCWC特設ページでご確認ください

Photos: Getty Images

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セルヒオ レビンスキー

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