ロマーリオ&ロナウド。伝説のROROコンビは、現代でも通用するのか?
戦術のエキスパート、西部謙司氏がシミュレーション
この記事は『ポケットサッカークラブ』の提供でお届けします。
王国ブラジルのみならず、サッカー史上でも最強の2トップとの呼び声も高いロナウド&ロマーリオ、通称“RORO”コンビ。もし彼らが全盛期の姿で蘇ったとしたら、進化した現代サッカーでも通用するのか――戦術のエキスパートである西部謙司さんにシミュレーションしてもらう。
1990年代後半にブラジル代表で実現した、ロマーリオとロナウドのいわゆるROROコンビ。活動期間こそ短かったが、サッカー史上最強の2トップと言っていいだろう。
そんなROROコンビが現代に蘇っても通用するのか――答えはイエス、十分に通用する。なぜなら、ゴールゲッターはMFやDFとは違い、時代や戦術の変化を受けにくいポジションでもあるからだ。
点獲り屋に必要な普遍的才能
CL(チャンピオンズカップ時代を含む)の1試合あたりの得点率トップは1970年代に活躍したゲルト・ミュラーだが、トップ10には1950年代のアルフレッド・ディ・ステファノとフェレンツ・プスカシュ、1960年代のエウゼビオから1990年代のルート・ファン・ニステルローイ、そして今も現役のリオネル・メッシやクリスティアーノ・ロナウド、レバンドフスキまで、それぞれ活躍した時代の違うストライカーが名を連ねている。彼ら高得点率ゴールゲッターたちの共通点、それは “特定のエリアでスペシャルな選手”であることだ。
“特定のエリア”とは、ペナルティエリア内のゴールエリアの幅のこと。このエリアからのシュートが最も得点になる確率が高く、その他のエリアからのシュートとは格段の差があるのは古今東西の統計ではっきりしており、時代を問わずここでシュートを撃てる選手が多くの得点を獲れる。
もちろん、その点の獲り方はそれぞれだ。メッシのようにドリブルで侵入するタイプもいれば、レバンドフスキのようにクロスボールをヘディングやボレーで叩いて決めるFWもいる。得点率王のゲルト・ミュラーに至っては、完全にこのエリア専用の選手だった。このエリアでのプレーだけが天才的で、他ではほぼ何もしない。
ゴール前でのシュートチャンスは一瞬。その一瞬にどこへ蹴れば入るかわかっている、シュートの決断を速くできる。それこそが“ゴールゲッターの才能”である。ロマーリオ、ゲルト・ミュラー、メッシ……いずれもそうなのだが、シュートの前にゴールを見たりしない。見なくてもターゲットのゴールポストがどこにあるかわかるからだ。内蔵されているレーダーで常にロックオンしていて、反転してもジャンプしても、倒れながらでもゴールの隅にシュートを決められる。パスだとこうはいかない。ターゲットが動くパスの場合は、ギリギリまで敵味方の動きを見なければならないからだ。シュートであれば、ターゲットのゴールは動かない。だからゴールの四隅が体に入っていれば見る必要はないし、実際見る余裕もない。このゴールの位置がわかる感覚の有無が天性のゴールゲッターとその他を分けている。パスもシュートもすべてが巧い万能型もいる一方で、得点能力だけが傑出しているタイプがいるのはそういう理由であり、“決定力”は他の技術とは少し違うのだ。
そして、これはMFやDFが現代では通用しにくい理由にも繋がっている。特定エリアで一瞬の違いを生み出せれば良いゴールゲッターは例外で、インテンシティが急激に高まっている現代サッカーではトップレベルでプレーするためのアスリート能力のベースが桁違いに上がっているからだ。
ロマーリオはゲルト・ミュラーとよく似ていて、ごく短い距離のスプリント能力が抜群だった。重心の低さが方向転換に有利だったのも彼と同じ。ただ、ボールコントロールとシュートのアイディアに関してはゲルト・ミュラーより上。瞬間的にDFを外してのシュート、GKをあざ笑うようなループ、高速クロスにテニスラケットを合わせるように角度を変えるボレー、誰よりも素早くこぼれ球に反応し、落下点へ入るのが速いので背が低いのにヘディングも強かった。ロマーリオはゴール前で点を獲るために生まれてきたようなFWである。バルセロナではシュート練習だけして帰ってしまうこともよくあったそうだ。
ロナウドはロマーリオとは逆に広いエリアで生きる。1シーズンしかプレーしなかったがバルセロナ時代が全盛期だろう。ハーフウェイラインあたりでボールを持つと、そのまま1人で突進してシュートしてしまうので、ボビー・ロブソン監督までもが「戦術はロナウド」と言っていた。疾風のように駆け抜ける桁違いのスピード、DFのファウルも振り払ってしまうパワー……あのバルセロナが“戦術ロナウド”になってしまったのは、走り出したら敵も味方も追いつけなかったからだ。インテルへ移籍してから膝に重傷を負い、キャリア後半はかつての半分以下の疾走距離になってしまったが、その分シュートの精度は上がっていた。トップスピードで信じられないテクニックを繰り出し、敵にユニフォームをつかまれても30m引きずったままシュートしてしまう馬力を併せ持つ怪物だった。
存在だけでアシストにも守備にもなる
エリア内の魔術師ロマーリオと爆走ロナウド。それぞれ1人でも十分に強力だが、コンビを組むことでその破壊力は何倍にも膨れ上がる。
例えば、カウンターでサイドに流れたロナウドがボールを受けた時、そのままシュートまで持ち込むこともできるが、コースがなければロマーリオへ出せばいい。アシストが他のFW以上に有力な選択肢となるからだ。また、この2人は1対1ではほぼ止められない。相手はそれぞれに対して最低でも2人以上つく必要があるため、お互いの存在が相方のマークを軽減することになる。
1994年アメリカW杯のブラジル代表はロマーリオとベベット、1998年フランスW杯ではロナウドとベベットが2トップを組み、両大会の間の1997年に実現したのがROROコンビだった。ベベットには悪いが、違いは歴然。現代で言えば、2人でMSNやBBCといったトリオと遜色ないくらい強烈な2トップだった。
では、具体的にどんなフォーメーションが考えられるだろうか? ROROコンビを現代サッカーに適応させた布陣がこれだ。
ROROコンビの守備面を不安視するかもしれないが個人的には問題ないと思っている。もちろん、パスコースを切るなど最低限の守備はしてもらう。だが、前線からプレスをかけたり下がって守備ブロックに入るような働きは求めない。むしろ、ブロックに参加せず前線に残っていた方がいいくらいだ。後方に3枚を残さなければならない相手の攻撃の厚みを削ることができるし、ひとたびボールを奪えば2トップだけでゴールまで行ける。このコンビの力があれば、5回のチャンスで2、3回は点にする。現代サッカーでは2トップのうち1枚は下がって9人でブロックを形成するチームが増えているが、彼らほどの決定力があれば下手に下げるよりよっぽど相手への牽制にもなるし、十分にお釣りがくるという計算だ。
なので、他の選手はしっかり守備ができて2人に質の高いパスを供給できればいい。メンバーはほぼブラジル代表。遊び好きの2人と波長の合う仲間がいた方が気分的にも乗るはず。ロマーリオは酒もタバコもやらなかったが毎晩のように遊び回っていて、いつも人の家から練習に来るような選手だったという。サッカー選手が遊んでいるのではなく、遊び人がサッカーをやっていたと考えたほうがいい。それでゴールを量産できるので、チームもそっちに合わせてしまったほうがいいのではないか。
とはいえ、4+4の8枚でしっかりと守ればそこまで守備力が低いわけではないし、ボールを保持できればポゼッションもできるメンバーだろう。MFにはパウリーニョ、カセミロ、フェルナンジーニョの泣く子も黙るボールハンター3枚を配置する。唯一、ブラジル以外から選んだのがケビン・デ・ブルイネ。距離の長いスルーパスを出させたら現在トップクラスの選手なので、ROROコンビへ間髪入れずラストパスを供給するために抜擢した。デ・ブルイネはスピードと運動量もあるので2トップのサポートもできる。手詰まりになった時にはミドルシュートやクロスボールが威力を発揮するはずだ。
基本的にはカウンター狙いになる。ただ、ボランチのパウリーニョはボールを奪うのも巧いが実はゴールゲッターとしての能力が高い。あまり組み立ては巧くない代わりに、相手ゴール前まで出て行くと地上戦も空中戦も強く、よく点を獲っている。ROROコンビが看板のチームだが、パウリーニョの隠れたストライカーとしての活躍も期待したい。フォーメーションは[4-3-1-2]で奪ったらまず2トップへ。あとはROROコンビにお任せだが、相手に引かれたらデ・ブルイネがサポート、さらに攻撃力のある両SBが前へ出て厚みを加えれば、自ずと得点は生まれる。
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Photos: Getty Images
Profile
西部 謙司
1962年9月27日、東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、会社員を経て、学研『ストライカー』の編集部勤務。95~98年にフランスのパリに住み、欧州サッカーを取材。02年にフリーランスとなる。『戦術リストランテV サッカーの解釈を変える最先端の戦術用語』(小社刊)が発売中。