名優たちの“セカンドライフ”
欧州のトップリーグで輝かしい実績を残した名優たちが、新たな挑戦の場として欧州以外の地域へと旅立つケースが増えている。しかし、そのチャレンジの様子はなかなか伝わってこない。そんな彼らの、新天地での近況にスポットライトを当てる。
from BRAZIL
DIEGO
ジエゴ
2016年夏、12年間の欧州でのプレーを経てブラジル復帰を決めたジエゴに対するフラメンゴサポーターの期待は大きかった。クラブ公式ツイッターで契約成立を告知した投稿へのアクセスは500万を超え、同アカウントの最高記録を更新した。当時、フラメンゴはブラジル全国選手権6位。ファンは優勝争いへの起爆剤を待ち焦がれていたのだ。
そして、迎えたデビュー戦でいきなりゴールを決めると、国民の記憶に残るあのテクニック、豊富な運動量、闘志あふれるプレーを披露。出場した17試合でわずか1敗(10勝6分)、チームを3位まで引き上げ2017年のコパ・リベルタドーレス出場権を勝ち獲った。彼自身、後期のみの出場にもかかわらずベストイレブンを受賞。活躍の理由を「フラメンゴっていうのは、ブラジル人にとって永遠に特別なものであり続けていると思う。僕にとってもそう。シャツを着た選手は誰でも、この特別感がさらに理解できると思う」と感慨深く語った。
前所属のフェネルバフチェで先発の機会が減り「自分の中に輝く何かを必要としていた」というジエゴ。帰国後は攻撃を組み立てるだけでなくリーダーシップを発揮するなど、円熟味を増した姿を見せている。
サントス時代のチームメイトだったロビーニョ擁するアトレチコ・ミネイロとの対戦では、2人の再会がブラジル中を盛り上げた。試合ではそれぞれゴールを決め、両者とも健在をアピール。また、サントスとの対戦では古巣相手に得点を決めた直後、スタンドに走りサポーターと抱き合って喜びを爆発させイエローカードをもらってしまった。「サントスは僕にとって大事な歴史。対戦するのは変な気持ちもあるけど、今の僕は心も体もフラメンゴとともにある。マラカナンで、あのサポーターの熱狂の中でゴールを決めたら、ああせずにはいられなかったんだ。それが警告に値するとは知らなかったけど」と苦笑い。
中国からの破格オファーを一蹴
こうして素晴らしいプレーを見せたジエゴは、17年1月に行われた親善試合コロンビア戦で7年ぶりにブラジル代表入り。「セレソン復帰は僕の夢」と語り続けていた悲願を成就させ「ブラジルに戻ってから、僕の人生には良いことがたくさん起こっている。神に頼み、願った以上だ。セレソンに定着できるよう頑張るよ」と意気込んだ。
試合では後半から登場すると、普段は辛口なブラジルサッカーメディアの面々が「ジエゴが入ってチームがオーガナイズされたね。それにあの意欲満々のプレー!」と絶賛。試合後はチッチ監督も「彼はフラメンゴをワンランクアップさせ、創造力をもたらした。今日のプレーを見れば、今後のW杯予選に向けていかに良い材料が得られたかがわかる」と評価した。
プライベートでも、リオでの暮らしを「自然と一体化した素晴らしい街。行ったことのないところに、家族とあちこち出かけているんだ。友達とビーチでフッチバレーを楽しんでいるよ」と満喫。
今年の目標は「フラメンゴでタイトルを獲ること。それがリベルタドーレスで実現したら凄いよね」とコメント。中国からの破格のオファーが報道されても「フラメンゴとは3年契約だけど、短過ぎる。できるだけ長くここでやっていきたいよ」と宣言してサポーターを歓喜させている。
■プロフィール
DIEGO
ジエゴ
(フラメンゴ/ブラジル代表)
1985.2.28(32歳)
175cm / 73kg MF BRAZIL
2002-04 サントス
2004-06 ポルト (POR)
2006-09 ブレーメン (GER)
2009-10 ユベントス (ITA)
2010-11 ボルフスブルク (GER)
2011-12 アトレティコ・マドリー (ESP) on loan
2012-14 ボルフスブルク (GER)
2014 アトレティコ・マドリー (ESP)
2014-16 フェネルバフチェ (TUR)
2016- フラメンゴ
Profile
藤原 清美
2001年、リオデジャネイロに拠点を移し、スポーツやドキュメンタリー、紀行などの分野で取材活動。特にサッカーではブラジル代表チームや選手の取材で世界中を飛び回り、日本とブラジル両国のTV・執筆等で成果を発表している。W杯6大会取材。著書に『セレソン 人生の勝者たち 「最強集団」から学ぶ15の言葉』(ソル・メディア)『感動!ブラジルサッカー』(講談社現代新書)。YouTube『Planeta Kiyomi』も運営中。