偉大なる父に続けるか。2人の2世に注目
エールディビジから世界へ――その夢を実現させた2人のストライカー、ヘンリク・ラーションとパトリック・クライファート。彼らの息子が、先月のリーグ再開初戦で活躍した。19歳のジョルダン・ラーションと17歳のユースティン・クライファートは、ともに父とは違いサイドを主戦場とする小柄なドリブラーだ。
この冬の移籍市場でNECと3年半の契約を結んだジョルダンは、さっそくNECのクラブ公式チャンネルのインタビューに登場。「(昨年11月に)所属していたヘルシンボリの降格が決まってすぐ、NECは僕に興味を示してくれた。ビッグリーグへとステップアップする前に、エールディビジでプレーしたかった。バルセロナへの道ははるかに遠い。まずはオランダで頑張りたい」と答えると、リポーターから「お父さんのようにね?」と聞かれ、即座に「うん」とうなずいていた。フェイエノールトでゴールを量産した後、セルティックのレジェンドとなりバルセロナではCL制覇を成し遂げた父の足跡をたどろうとしているのだ。
フェイエノールト時代のヘンリクは美しい金髪をドレッドロックに束ねていたが、ジョルダンは黒髪を短く刈り上げており見た目は対照的。しかし、目元や鼻はやはり父譲りのものがある。第18節ウィレムⅡ戦(0-1)で「ジョルダンは素晴らしい左足を持った、感覚でプレーするFW」だと評するNECのペーター・ヒバラ監督によって59分にピッチに送り出されたジョルダンは、76分に相手ボールを奪ってカウンターの起点となり、これが決勝点に繋がった。続く第19節ローダ戦(2-0)では右ウインガーとして初先発。サイドからのカットインなど積極性を見せ75分までプレーした。
衝撃デビューに絶賛の嵐
アヤックスユースの一員であるユースティンにとって、第18節ズウォレ戦はプロデビュー戦だった。39分に左ウイングとしてピッチに入ると、随所に好プレーを連発。53分には左足から完璧なスルーパスでPK奪取をお膳立てしてみせた。さらには「俺に蹴らせろ」と主張。結局このPKを蹴ったのは30歳のベテランMFシェーネだったが、その堂々たる振る舞いは多くのファンを魅了した。
ユースティンのプレーはオランダでセンセーションとなった。「もの凄い才能を持っている。優れたテクニックを有し、しかも両足を使える。自陣で囲まれても勇気を持ってキープするばかりか、続けて好パスを出した」(コー・アドリアーンセ)、「例外的な才能を持っている。メンタルも素晴らしい。デビューマッチでこんなプレーをする17歳はなかなかいない」(ピエール・ファン・ホーイドンク)と、解説者たちもベタ褒めだった。
パトリックに似てベビーフェイスのユースティン。試合後に父からお褒めのショートメールを受け取った時の表情は、17歳らしい屈託のない笑顔だった。
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本誌の締切時点ではここまでしか伝えることができなかったが、ユースティン・クライファートはその後1月29日の第20節ADO戦で初先発を果たすなど、その才能をいかんなく発揮。
また、ジョルダン・ラーションも着実に出場時間を延ばしており、同じ1月29日のフェイエノールト戦では父ヘンリクが観客席から見守る中で75分間プレー。デ・カイプを埋めたフェイエノールトサポーターからも惜しみない拍手が送られた。
Photos: Getty Images
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中田 徹
メキシコW杯のブラジル対フランスを超える試合を見たい、ボンボネーラの興奮を超える現場へ行きたい……。その気持ちが観戦、取材のモチベーション。どんな試合でも楽しそうにサッカーを見るオランダ人の姿に啓発され、中小クラブの取材にも力を注いでいる。