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DEAR Magazine編集長インタビュー

2016.07.12

DEAR Magazine ディア・マガジン(日本)

Dear-Magazine

http://dearfootball.net/

「日本サッカーを知らない世界」へ届ける、フットボールカルチャーマガジン
編集長
和田拓也

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「領域外」に届けるために、コンテンツに熱を持たせたい

──ボールボーイや担架スタッフの話など、『ディア・マガジン』は切り口がユニークです。どういうコンセプトを持った媒体なのでしょうか?

 「ニューヨークにベースを置いているデジタルデバイスにコミットした『HEAPS Magazine(ヒープス・マガジン)』というカルチャー系のWEBマガジンで働かせてもらっていたのですが、『ディア・マガジン』のコンテンツにはそこで学んだことが生かされています。どこかに埋もれているストーリーをくみ取って真摯に向き合い、いかに魅力的に伝えられるか。こだわっているのは切り口です。普通のトピックでも切り口を変えてみたら面白いストーリーが出てくる、そこに気づけるかどうかは徹底して指導されました。紙の編集の仕方に近いWEBメディアと言えるかもしれません」

──僕が興味を持った一番の理由が、アマチュアの書き手を使って独自性の高いコンテンツを発信していることです。その理由を教えてください。

 「『ディア・マガジン』の大元のコンセプトが『日本サッカーの魅力を領域外に届ける』というもので、そのアプローチの一つとしてアマチュアでもいいからサッカーを好きな人に書いてもらってコンテンツに熱を持たせたいというものがあります。本当に詳しいんですよ、ビックリするくらい。どんなプロの技術よりも、物凄くサッカーが好きな人たちがその魅力を伝えるコンテンツがあった方がいいと考えました」

──ある程度書きたいものを書いてもらう?

 「ライターの個性を殺さないことにはかなり気を遣っています。まったく無名の人でも、面白い経験をしていたりするんです。文章を書いたことがない大学生だけど、話をしたら日本代表含め50試合以上も担架スタッフをこなしているとか。そういう経験を記事にすれば何も言わなくても独自のものが出てくるので、あとはいかにその面白さを殺さずに読めるものにするか。そこが編集である僕の仕事だと思っています」

──「DEAR」「FUN」「KNOW」という記事のカテゴライズにはどういった意味が?

 「『DEAR』がアマチュアの書き手がサッカーの熱を伝えるコンテンツ、サッカーにまだ興味のない人に向けた編集部主導の企画が『FUN』で、『KNOW』は言ってしまえば本筋とはズレるコンテンツです。うちは専門的なことは専門誌に任せるというのが基本スタンス。批判や何かを下げる表現もしない。ただ、自分の中に日本サッカーが強くなるためには、見る側も成長しなきゃいけないという想いもあるんです。なので、ある程度サッカーを知っている人にも満足してほしいというカテゴリーです」

──どういった記事の反応がいいですか?

 「サポーター論やローカルチームの記事が読まれますね。今月の最多PV数を記録したのは、オルカ鴨川という3部リーグの女子サッカーチームの話(『小さな町のクラブを女子選手が選ぶ理由。「地元」と「サッカー」の関わりかた』)でした。あとビックリしたのが、サイトが始まってまだ2日目ぐらいに結構な長文なのに読まれた記事があって、それが『サッカー特別好きじゃない僕が、スタジアムに行き続ける理由』。あとは面白記事ですかね、イケメン記事とか。これはどこのメディアも共通だと思うんですけど」

──マニアックですね(笑)。

 「日本のサッカークラスタの面白いところは、情報がTwitterを中心に回っているところ。今のうちのユーザーは情報にアンテナを張っているコアなサッカー好きがほとんどなので、そういう層には読まれています。ただ本来のミッションは領域外に届けることなので、そこから一歩踏み出せるかですね」

──深掘りした企画はマニア受けになってしまうのはジレンマですよね。サッカーファン以外に届けるためには何が必要でしょう?

 「サッカーは試合だけじゃないと思っていて、ファッションとかカルチャーとかビジネスとか、漫画などのサブカル、人間の生活にあるものすべてを使ってサッカーにアプローチしていきたいです。今取りかかっているのが映像です。フリースタイルフットボールを追いかけているんですけど、視覚的に『サッカーってカッコイイ』と思わせる仕掛けって別に試合のプレー映像に限らないと思っていて、誰にでもわかりやすくシンプルにサッカーのポジティブなイメージを発信していくことが突破口になるかもしれません」

──英語サイトも準備しているそうですが、その意図は?

 「このサイトを始めたきっかけの一つに世界一周旅行で様々な国のサッカーを見て悔しかった経験があるんです。特にヨーロッパに行った時ですね。サッカーが生活の一部になっていて、アジアに行ってもサッカーの影響力が強くて、これはヤバいんじゃないかと。ただ、日本のサッカー、Jリーグをよく見るようになって、あらためて知られていない魅力があると感じました。それを『日本の文化』として海外、とりわけアジアに発信したい。例えば、ベトナムやタイの人が浦和レッズの試合を見に行きたい、となった時にツアーのアテンドをやるなど、日本のサッカーを観光資源としてとらえ、サッカーを通したインバウンドにメディアとして挑戦していきたいです」

『DEAR Magazine』WEBサイトにて、今特集「新世代メディアとサッカー」との連動企画『「タトゥー」で見るEURO2016』の完全版を公開中!

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浅野 賀一

1980年、北海道釧路市生まれ。3年半のサラリーマン生活を経て、2005年からフリーランス活動を開始。2006年10月から海外サッカー専門誌『footballista』の創刊メンバーとして加わり、2015年8月から編集長を務める。西部謙司氏との共著に『戦術に関してはこの本が最高峰』(東邦出版)がある。

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