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「カチッとした相手を『崩す』という意味で、一番おもしろいのはインテル」清水エスパルス・松崎快インタビュー『戦術と感覚の狭間(前編)』

2025.04.08

清水エスパルスの公式YouTubeチャンネルのなかで更新される『カイのカイセツ』が人気を博している。ホワイトボードを使った丁寧な解説がわかりやすい。この動画で松崎快が戦術に詳しく、海外サッカーの戦術にも造詣が深いことを知ったファン・サポータ―も少なくない。そこで今回は本人に直撃。

前編では、コンテンツを始めた経緯や現在注目しているチームやトレンドについて、サッカーライターの清水英斗が深堀することを試みた。

<清水エスパルス公式SNS一覧>

https://lit.link/spulse

<「カイの解説」>

https://youtu.be/99au9UsV4S8

大好評の『カイのカイセツ』を始めた経緯とは?

――松崎選手が戦術に詳しくて、解説も面白いとクラブの動画『カイのカイセツ』で知って驚いたファンは多いと思います。どんな経緯でこの企画が出てきたんですか?

 「最初は試合が終わった後、特に外に出すつもりもなく試合の振り返りをやったり、あとは海外サッカーを僕の視点で話す、みたいなことをやっていたんですけど、『それならYouTubeでやってみないか?』という感じになりました」

――戦術的な話は昔から好きだったんですか?

 「戦術的な見方というよりは、中学生くらいの頃から色々な国の試合を見ていました。特に僕はダビド・シルバが好きだったので、マンチェスター・シティの試合をずっと見ていたら、そこにペップ・グアルディオラが来て、戦術的な話が増えたので、勝手にそういう見方になっていって」

――グアルディオラの影響が大きかったんですね。

 「そうだと思います」

シルバとグアルディオラ

――ロジカルな物の考え方自体も、元々好きなほうだったんですか?

 「そうですね。この10年くらいはより戦術的な要素がピッチに多く出るようになったし、逆にそれが出過ぎて堅い試合になることもあると思います。ただ、自分的にはそんなに戦術、戦術という見方はしてなくて、個人にフォーカスしたり、色々な見方をしてきたことの延長という感じですね」

配置だけでなく、個人の感覚も大事に

――そういえば『カイのカイセツ』の中でも、「あまり配置で語るのは好きじゃない」とチラッと仰っていましたね。

 「配置だけで解決できることは、たぶんそんなに多くないと思います。結局、個人の戦術が必要ですし、こういうシステムで相手がこうだからこれで行けるとか、配置だけで語るのはうまくいくイメージがないです。そこに至るまでの筋道がちゃんと立っていればいいと思いますけど、配置だけだと、結局やるのは選手なので」

――なるほど。実は松崎選手のことは、もっと感覚派の人だと思っていたので、意外でした。そう言われることはありませんか?

 「どうですかね。でも感覚もすごく大事にしています。結局ロジックばかりになると、ひらめきのようなものは絶対に出ないと思うので。感覚でやることも大事にしつつ、サッカーをやる上では相手がこういうときはこういうほうがいいよね、というセオリーは知っていたほうがいいと思うので、両方必要かなと思います」

――戦術的な見方をすると、相手を見ることなど、サッカーのやり方も変わってきますか?

 「そうですね。まあ、でも戦術がすべてではないというか、その選手の個性によるので、戦術は大枠だけある程度決められて、そこから選手が細かくプレーを発明する上では、ある程度アバウトのほうがいいんじゃないかなと僕はイメージしています」

――それはもしかすると、秋葉さんという監督がそういうタイプですか?

 「おそらく(笑)。逆にカチッと決める監督も結構多いと思います。カチッと決められるなら、それはそれで筋道がしっかりしていればいいけど、それでうまくいかなくなったときは、余白がないと難しいかなと感じます」

秋葉監督

――なるほど。アバウトというか、余白というか、選手に委ねられる部分ですね。エスパルスのサッカーも形が柔軟というか、後ろの枚数を含めてポジションを動かしますけど、あの柔軟性もそうやって生まれているんですか?……

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J1リーグJリーグ戦術松崎快

Profile

清水 英斗

サッカーライター。1979年生まれ、岐阜県下呂市出身。プレイヤー目線でサッカーを分析する独自の観点が魅力。著書に『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』『日本サッカーを強くする観戦力 決定力は誤解されている』『サッカー守備DF&GK練習メニュー 100』など。

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