SPECIAL

“両SBのポジション移動”に“パーマーの解放”。マレスカ・チェルシーの[3-2-5]が持つ普遍性と特異性

2025.01.04

エンツォ・マレスカの下、復活への足がかりをつかみ前半戦を終えたチェルシー。彼が攻撃時に採用している[3-2-5]は今や多くの指揮官が実践している形だが、ひと口に[3-2-5]といってもチームによってその機能性には差異がある。チェルシーのスカッドを活かすマレスカ流[3-2-5]の特徴について分析する

 読者の方は覚えているでしょうか。らいかーるとがポジショナルプレーの連載をしていたことを。

 「ポジショナルプレーってなんですか?」

 この問いをきっかけに、ポジショナルプレー連載は始まりました。ポジショナルプレーをしているだろうチームたちを分析することで、ポジショナルプレーとは何なのかを解き明かす連載の予定でした。しかし、時はAI時代。こんな答えが帰ってきます。

 もうこれでいいじゃないか!という多くの声が聞こえてくるような気がします。そこで、次のステップに移行します。ぶっちゃけ、近年のサッカー界はどこも似たような仕組みを持つチームばかりになってきていました。猫も杓子も[3-2-5]と言い始めて何年でしょうか。最近になって[4-2-3-1]ベースのチームが復活してきていますが、それでも[3-2-5]は猛威を振るっています。ただし、登場したばかりの頃の[3-2-5]からは姿を変えていて、おそらく最初の立ち位置から変化のない[3-2-5]は見かけることが珍しいのではないでしょうか。

 特定のチームを分析する際、ボール保持、ボール非保持、トランジションの局面それぞれを整理していくのが一般的になっているかと思います。ただ、今回はそれとは異なり、[3-2-5]の仕組みの違いに着目して分析していくことで、チーム間の差異を見つけていきたいと思っています。

 チェルシーはペップ・グアルディオラの直弟子であるエンツォ・マレスカに率いられて昨シーズンの不振から脱却し、プレミアリーグでCL出場圏内につけています。シーズン当初は大き過ぎるスカッドを不安視する声もありましたが、ターンオーバーを活用してカンファレンスリーグとの過密日程を乗り切り、ケガ人を抑えられていることも大きいでしょう。[3-2-5]の始祖であるグアルディオラに学んだマレスカは、[3-2-5]にいったいどんな機能性を持たせているのでしょうか。

基本配置と移動を任されている両SB

……

残り:3,895文字/全文:4,934文字 この記事の続きは
footballista MEMBERSHIP
に会員登録すると
お読みいただけます

TAG

チェルシー

Profile

らいかーると

昭和生まれ平成育ちの浦和出身。サッカー戦術分析ブログ『サッカーの面白い戦術分析を心がけます』の主宰で、そのユニークな語り口から指導者にもかかわらず『footballista』や『フットボール批評』など様々な媒体で記事を寄稿するようになった人気ブロガー。書くことは非常に勉強になるので、「他の監督やコーチも参加してくれないかな」と心のどこかで願っている。好きなバンドは、マンチェスター出身のNew Order。 著書に『アナリシス・アイ サッカーの面白い戦術分析の方法、教えます』(小学館)。

関連記事

RANKING

関連記事