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【異色対談】岡田明彦×らいかーると(前編):判別困難(?)なレバークーゼンのサッカーを言語化する

2024.12.02

「らいかーるとさんとレバークーゼンについて語り合いたい」――リカルド・ロドリゲスやダニエル・ポヤトスを日本に連れてきたことでも有名な元徳島ヴォルティス強化本部長の岡田明彦氏から編集部に謎のオファーが舞い込んだ。どうやら本人は純粋に話したかっただけのようだが、せっかくの貴重な機会なのでこの異色対談を記事化!

前編では、「そもそも、なんで?」という話から始まり、司会の西部謙司氏の力も借りながらレバークーゼンのサッカーの言語化に取り組んでみた。

なぜレバークーゼンなのか?

――岡田さんは徳島をやめた後、どうされていたんですか?

岡田「3月末にやめて4月から8月は無職ですね(笑)。実家の群馬に帰っていて5月から約1か月、欧州サッカーを見てきました。スペイン、ドイツ、ベルギー、アイルランド、ポルトガル、ギリシャを回って、その時に今回のテーマになるレバークーゼンを見てきました。そして9月から東京でSARCLEというエージェント事務所のフットボールダイレクターとして働いています」

岡田元強化本部長が視察したEL準決勝レバークーゼン対ローマの第2戦

――具体的には何をやられているんですか?

岡田「よく誤解されるんですが、エージェントではなくフットボールダイレクターで、エージェントへのアドバイスや契約している選手や監督のコンサルティングを行っています。オランダに支社があるのでそこで欧州サッカーの生きた情報を取ったり、現地の関係者とつながりを作って、海外に行きたい日本人選手・監督、そして逆に海外から日本に来たい選手、監督が少しでもいい環境で素早く適応して成功しやすいスキームを考えたり、海外の人が何を求めているのかも知るようにしています。欧州の関係者は日本の育成システムの成り立ちや課題、今は大学サッカーにも強い興味を持っていますね。そういう情報の橋渡しはするのですが、実際の交渉はライセンスを持っているエージェントが担当します。徳島時代からずっとそうでしたが、立場が変わっても自分の今までの経験を活かして日本のフットボールの未来に貢献したいという気持ちは強いです。今までは自分のクラブの予算規模に合った情報を優先していましたが、今は世界の大きいクラブから小さいクラブまで幅広い情報を収集して、全体で何が起きているかをつかみ、何かいい提案をしたいと考えています。

 とはいえ、会う人みんなに『岡田さんは今、何やっているんですか?』と聞かれて、こういう話をするんですが、みんな『?』なんですよね(苦笑)。西部さん、わかりましたか?」

――ちょっともやっとしているかもしれませんね(笑)。

岡田「そうですよね。レバークーゼンの言語化もそうですが、その前にまずは自分の仕事の言語化に取り組んでいきたいです(苦笑)」

――この対談のきっかけとして、岡田さんかららいかーるとさんとレバークーゼンのサッカーについて話したいと編集部に伝えたんですよね。

岡田「はい。言語化というのは大事だなと常々考えていて、なぜかと言えばそうしないと1つの組織として目指すべきものを共有化できないから。一方で、例えば『ポケット攻略が重要』と言われれば、みんなそこばかり意識してしまうように、言葉が一人歩きするリスクもあります。レバークーゼンやアーセナルのサッカーを見ていると、その状況に合わせて柔軟にやっていて、強烈なプレッシングもあるけど、ボールもつなげるし、引くこともできる。いろんな解決方法を持っていて、こういうサッカーを言語化するにはどうすればいいかと考えていた時に、らいかーるとさんの記事を見て、一回この人と話してみたいなと」

――らいかーるとさんとも初対面になりますが、記事はずっと拝見していました。

らいかーると「僕は4種のサッカー指導を20年近く続けている人間ですが、日本の指導者は師匠がいないと教わる機会がないなとずっと感じていて、『サッカーの試合を見て、それを指導に落とし込む』というのをライフワークにしてきました。ついでに自分のブログにそれを書くというのをずっと続けて、今に至るという感じです。

 レバークーゼンに関して言うと、僕はポジショナルプレーとは根元が違うなと考えています」

岡田「その意見もすごくわかるんですけど、私はあれもポジショナルの一種なんじゃないかなとも感じていて、ダニ(ダニエル・ポヤトス)にも『ダニ、あれどう思う?』と通訳を通して聞いたんですよ。そしたら『忙しいし見てないから、俺は何とも言えない』と言われちゃったんですが。だから、今度はらいかーるとさんに聞いてみようかなと(笑)」

2021年から2季にわたって徳島の指揮を執ったポヤトス監督

「配置中心主義」と「ボール保持者中心主義」

――岡田さんは現地でレバークーゼンをご覧になられたとのことですが、どのような印象でしたか?

岡田「ELのホームのローマ戦とファイナルのアタランタ戦の2試合を見ました。意図的に相手を食いつかせ、3人目を使いながら、インサイドと大外にボールを前進させていく。フィールドに描かれる絵が他のチームとは違っている感じがします。決勝はアタランタに90分間マンマークされ、時間とスペースを制限されて本来のプレーはできませんでしたが。それに関してはアタランタもすごいなと思いました」

――そんなレバークーゼンのプレーを言語化するとしたら、どうなりますか?……

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Profile

西部 謙司

1962年9月27日、東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、会社員を経て、学研『ストライカー』の編集部勤務。95~98年にフランスのパリに住み、欧州サッカーを取材。02年にフリーランスとなる。『戦術リストランテV サッカーの解釈を変える最先端の戦術用語』(小社刊)が発売中。

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