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中継車を不要化、機械学習で指標開発、生成AIが実況…世界最先端を走るDFLとAWSの二人三脚

2024.11.09

試合会場から通信衛星に電波を中継する中継車。放送設備のないスタジアムに駆けつける移動式のスタジオとしてサッカーの映像制作を支えてきたが、ブンデスリーガとブンデスリーガ2部では「走らせる必要がなくなりつつある」という。その他にも機械学習で指標開発、生成AIが実況をするなど世界最先端を走っているDFL(ドイツサッカーリーグ機構)の関係者を通じて、AWS(Amazon Web Services)との二人三脚に迫ってみよう。

クラウド移行によって映像制作の遠隔化が可能に

 「私たちは単なるリーグ機構ではありません。 “バリューチェーン”全体を自社で行っているテクノロジー企業でもあるんです。その戦略を映像の撮影から端末への配信まで担うという意味で『液晶(レンズ)から液晶(ディスプレイ)へ』と呼んでいます。あらゆる過程で技術開発を行いながらそれをさらに発展していける立場にあるので、私たちは世界で最も革新的なスポーツ組織の1つになれているのです」

 誇らしげに自己紹介ならぬ自社紹介をしてくれたのは、ブンデスリーガとブンデスリーガ2部を運営するDFL(ドイツサッカーリーグ機構)のブンデスリーガ国際部門CMO(最高マーケティング責任者)ピア・ノーベルト氏だ。

 7月28日にサンガスタジアム by KYOCERAで開催された京都サンガF.C.対VfBシュツットガルトに合わせて来日した彼の言葉にある“バリューチェーン”は、ビジネス用語で付加価値を生み出していく連鎖を指すが、サッカーリーグで言えば試合から様々な情報をパートナーやファンに届けるまでの「映像」→「制作」・「データ化」→「コンテンツ化」・「発信」という工程に置き換えられる。

 一連の流れの中でプレミアリーグが「データ化」をOptaやOracle、「制作」をTNT(旧BT)とSky Sports、「コンテンツ化」をIMGに任せているようにリーガとセリエAも部分委託しているものの、欧州4大リーグで唯一ブンデスリーガはDFL社内で完結させて放送で1試合平均36万人、SNSで計4200万人以上の目に触れさせている。だからこそノーベルトCMOいわく「他の欧州リーグのどことも一線を画している」わけだが、業界最先端を走るにあたって世界最大のシェアを誇るクラウドサービスとの二人三脚があった。

 それが2020年1月から機械学習やAIの導入も支援するDFLの公式テクノロジープロバイダーとして名を連ねてきたAWS(Amazon Web Services)との協業だ。

 「このパートナーシップはお互いに3つのビジネスを着実に成長させている提携です。主に『コンテンツ制作』『データサービス』『ファン体験』の3分野で私たちは次のレベルへと進んでいます」(ノーベルトCMO)

 先のバリューチェーンに重ねれば「コンテンツ制作」は「映像」「制作」「コンテンツ化」、「データサービス」は「データ化」、「ファン体験」は「発信」に当てはまるだろう。まず「コンテンツ制作」でDFLは、AWSとともに業務効率化を進めている。

 「私たちが何よりもまず行ったのがバリューチェーン全体をクラウド化することでした。最初のうちは時間を要しましたが今は100%クラウドに移行しています。その次のステップとして進めているのがコンテンツ制作システムの遠隔化、すなわち中継車の不要化です」(ノーベルトCMO)

 ブンデスリーガとブンデスリーガ2の試合の撮影、編集、中継を同時進行する制作スタジオとして、アンテナ、スイッチャー、映像・音声ルーター、ビデオサーバー、マルチビュワー、インカムシステムなどが搭載されている中継車を1、2台、放送設備のない各会場に手配していたDFL。しかし通信処理が高速かつ安定しているAWSのクラウドに集約するとともに「今では全スタジアムとコンテンツ制作センターを光ファイバーで繋げたことでドイツ全土に中継車を走らせる必要がなくなりつつある」(ノーベルトCMO)。接続していたカメラはあらかじめ各スタジアムに最大36台を設置することで、最大100人を派遣していたカメラスタッフも数人にまで減らしており「今後数年以内には完全にリモートへ移行できる」そうだ。

「Bundesliga Match Facts」で伝えるストーリー性

 そのカメラが記録しているのは映像だけではない。DFLとAWSはトラッキングデータやイベントデータも収集しており、各選手、ボールの位置関係や各プレーの時間関係等を記録したデータポイント数は1試合で計360万以上にも上るという。それらを機械学習サービス「Amazon SageMaker」で開発する『データサービス』の1つが、欧州1部最多の1試合平均ゴール数(3.3)を誇るブンデスリーガの魅力を伝えようと「xゴール(ゴール期待値)」から始まった「Bundesliga Match Facts powered by AWS」だ。……

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Profile

足立 真俊

1996年生まれ。米ウィスコンシン大学でコミュニケーション学を専攻。卒業後は外資系OTAで働く傍ら、『フットボリスタ』を中心としたサッカーメディアで執筆・翻訳・編集経験を積む。2019年5月より同誌編集部の一員に。プロフィール写真は本人。Twitter:@fantaglandista

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