新潟から藤枝に期限付き移籍中の矢村健がついに覚醒した。J2第34節終了時点でキャリアハイの15ゴール、J2得点ランクで3位につける。鮮やかなゴラッソを叩き込む印象が強い矢村がコンスタントにゴールを量産できるようになった背景に何があるのか。藤枝を取材し続けるライター前島芳雄がレポートする。
希代の“ゴラッソメーカー”
藤枝MYFCのエースが本格的にブレイクしつつある。矢村健、27歳。新潟から期限付き移籍中のストライカーだ。
今は大学の後輩である小森飛絢(千葉)の大爆発で話題をさらわれているが、矢村も直近は4戦連発も含めて6試合で6得点。得点ランクでも3位タイまで駆け上がってきた。2020年に新潟医療福祉大学を卒業してアルビレックス新潟に加入し、プロ5年目。シーズン当初からレギュラーに定着したのは今年が初めてで、当面の目標としていた二桁得点(キャリアハイ)を9月1日の29節熊本戦で達成してから一気に得点ペースが上がっている。
遅咲きと言えば遅咲きなのだろうが、今に至るまでには確固たる裏付けがある。
身長は169cmと高さはないが、筆者が「ゴラッソメーカー」と異名をつけたとおり、オーバーヘッドやボレー、強烈なミドルシュートなど観る者を「おおっ!」と立ち上がらせるようなスーパーゴールを高校時代から連発してきた。今季でいえば、7月のベストゴール賞を獲得した23節水戸戦の一撃をはじめ、20節横浜FC戦でのボレー弾などシュートセンスが光る1タッチゴールが目立つ。
昨年の37節清水戦では、元日本代表GK権田修一が一歩も動けない強烈な右足ミドルシュートを叩き込み、清水に対する初勝利に導いた。練習中にもチームメイトが「すごっ!」と舌を巻く一発を毎週のように披露している。
うまくないから数を積んできた
そんなゴラッソメーカーのルーツは「小さい頃から憧れて、ボレーシュートとかオーバーヘッドはずっとやってました」(矢村)と子ども時代にある。ただ、彼が他と違うのは、それを今に至るまで日々やり続けていることだ。
「高校時代(市立船橋高)もそうですし、自主練習でもずっとシュートは打ってきて、その量には自信があります。うまくないプレイヤーなんで、やっぱり数を積まないと習得できないと自分でも理解してましたし、量を重ねる中で質にもこだわってきたという感じですね」
天性のシュートセンスも当然あっただろうが、地道な努力によって身につけた部分も多く、それが大学に入って開花した。3年時の北信越大学リーグ1部(2018年)では、15試合で28得点というとんでもないハイペースで量産して得点王を獲得。本人も「無双してました」と振り返る活躍で、3年生のうちにアルビレックスへの加入内定をつかんだ。
4年時にはケガや特別指定選手としての活動もあって、そこまでの活躍はなかったが、2年時から3年連続でリーグMVPに選出され、2020年にプロ生活をスタートする。……