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ブラックバーンで開幕7戦4発も必然?大橋祐紀が英2部で証明する「法則」とは

2024.09.30

日本代表の田中碧(リーズ)、橋岡大樹(ルートン)ら史上最多の日本人8選手が参戦している2024-25シーズンのEFLチャンピオンシップ。その中で最年長ながら、第7節を終えて早くも4得点を挙げているストライカーこそ、今夏にサンフレッチェ広島からブラックバーン・ローバーズへと加入した大橋祐紀だ。28歳のオールドルーキーが英2部の舞台で証明している「法則」を、EFLから見るフットボール氏に教えてもらおう。

 今から遡ること53年前、当時32歳の心理学者アルバート・メラビアンは、のちの心理学界、そして世界中で展開されていく眉唾物のビジネスセミナーに多大な影響を与える1つの調査結果及び学説を発表した。

 今日では広く「メラビアンの法則」として知られる彼の調査は、人間の対話におけるコミュニケーションが言語・声のトーン・ボディランゲージ(身体言語)の3つの要素から存立しており、これらが矛盾した情報を送る場合には「言語7%、声のトーン38%、ボディランゲージ55%」の割合で相手への感情や態度の伝達に影響を及ぼすという結果を示した。ボディランゲージ、すなわち目で感じ取る情報。声のトーンも耳で感じ取ることを考えれば、こういった場合においては実に93%もの割合で非言語コミュニケーションが感情伝達における優勢を担うことになる。

 もっとも、あまりにも有名になりすぎてしまったメラビアンの法則は、「すべての場面において非言語コミュニケーションが93%重要」という大きな誤解も引き起こしてしまった。たまにそういった意でこの話を持ち出す「講師」がいるが、メラビアンの行った実験が想定する状況は限られている。この理論が100%当てはまるのは好意・反感などの感情について論じる時に限られ、なおかつ言語情報と非言語情報が矛盾をきたしている場合だ。つまり矛盾した何かが起こった時に、人々の感情をより大きく動かすものが何かという話である。

 時は流れ2024年。御年85歳のメラビアンがアメリカで依然健在の中、遠く離れたイングランド・ブラックバーンの地で、フットボールの母国に矛盾を引き起こし続ける28歳のオールドルーキーがいる。EFLチャンピオンシップ開幕からの5試合でわずか2先発での4得点。瞬く間に熱狂的なファンから自身へのチャントを取りつけ、テラスの人気者となったクラブ史上初の日本出身選手。

 ならばぜひとも、私はこれを「大橋祐紀の法則」と名づけたい。

チャンピオンシップ第5節ブリストル・シティ戦後にその試合のマンオブザマッチと、8月のクラブ月間最優秀選手のトロフィーをそれぞれ受け取る大橋。すでに「おーちゃん(O-chan)」の愛称が定着している

「謎の日本人」から「掘り出し物」へ!「第一印象の大切さ」を知る男

 この夏、移籍市場における最初の確度の高い噂として地元紙『ランカシャー・テレグラフ』から飛び出した大橋の名前に、ブラックバーンサポーターはただただ困惑していた。その存在を知るわけもない28歳の海外経験もない日本人ストライカー。それは控えめに言っても、同時期にあまりにも多くのものを失っていたファンベースにとって、魅力的に映る動きではなかった。

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Profile

EFLから見るフットボール

1996年生まれ。高校時代にEFL(英2、3、4部)についての発信活動を開始し、社会学的な視点やUnderlying Dataを用いた独自の角度を意識しながら、「世界最高の下部リーグ」と信じるEFLの幅広い魅力を伝えるべく執筆を行う。小学5年生からのバーミンガムファンで、2023-24シーズンには1年間現地に移住しカップ戦も含めた全試合観戦を達成し、クラブが選ぶ同季の年間最優秀サポーター賞を受賞した。X:@Japanesethe72

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