SPECIAL

「40分1本」ガンバ大阪ユースが異例の決勝戦を制した背景とは。町中大輔監督インタビュー

2024.08.29

2024年7月31日に行われた日本クラブユース選手権(U-18)はまさに歴史に残る一戦と言えるだろう。昨年の王者・ガンバ大阪ユースが川崎フロンターレU-18相手に先制するも逆転され、ATに入ってからの2ゴールでの劇的な逆転勝利を収め2連覇を達成した。ゲーム内容もさることながら、そのレギュレーションも記憶に刻まれる一つの大きな要因となった。試合開始前に突如訪れた豪雨と雷によりキックオフ時刻は2時間15分遅れ、予備日の不設置と会場の都合により40分1本で勝敗を決する形となったのだ。観衆の記憶に強く刻まれるシーソーゲームとなったが、優勝チームの指揮官はこの状況をどう見ていたのか。ガンバ大阪ユースを率いる町中大輔監督に話を聞いた。

決勝の前に行なっていた、メンタル講習会

――2連覇は偉業だと思いますが、去年と今年、それぞれ優勝できると思っていた中で得られたものでしょうか?

 「去年も怪我人が多かった中、かつ途中から僕は監督になりました。去年は優勝を狙ってできたというよりも『良い戦いをしたい』と思っている中で必死にやった結果、優勝できた。ただ、今年に関しては選手のクオリティも高かったので、実力を発揮できればそこそこ良いとこまではいける自信はありました」

――去年の就任は、途中からだったのでしたっけ。

 「去年の4月からですね。ただ、僕もガンバの在籍年数が長いので、ジュニアユース出身の選手はみんな把握していたので大きな問題はなかったです」

――守備の強さは象徴的でした。GKの荒木琉偉選手を中心に決勝まで無失点でしたよね。

 「守備のところは普段からしっかりとやっていました。粘り強さや強度、原理原則であるチャレンジアンドカバーの部分は練習からも取り組んでいて、去年に比べてリーグ戦も失点はかなり少なくなっています。ただ相手ありきなので、決勝までゼロでいけるとは思ってなかったですね。勝ち上がっていくにつれて、選手たちのモチベーションや自信にも繋がっていったと思います」

――率直に「優勝できるな」とは思いました?

 「いけるかなと思ったタイミングはなかったですけど、試合が終わった後に毎回、課題はありつつも選手たちが成長していると感じましたし、できることも増えてきたな、と」

――ガンバの選手は特に中盤が小柄でしたが、そのフィジカル差を埋める技術を持っていたなと。高いプレッシャーの中で発揮する技術も、試合を通じてできるようになったことの一つなのかなと思うのですが。

 「サッカーの部分は、この大会だからできるようになったということではないですね。普段から取り組んでいるところです。見ている方に面白いと言ってもらえることは我々が最も目指しているところであります。やれるようになってきた部分については、カテゴリ差がある中でも自分たちの良さを出せるという点。普段はプリンスリーグなので、プレミア(リーグ)の相手にどれだけできるのか、という部分はありました。ただ、試合を重ねるごとにそこもできるようになってきたなと」

――決勝についてもお話を聞きたいのですが、2時間15分もスタートが遅れて、かつ40分1本というレギュレーションでした。

 「こんなに遅れたことも、40分1本ということも(これまでの経験で)なかったですね。ただ、選手たちには試合をさせてあげたかったし、彼らもこのまま両チーム優勝ではなく、勝敗を決めたいという思いを持っていました。そう言う意味では、結果的に試合をせずに両チーム優勝とならず、40分でも試合ができたことは選手たちにとっては良かったと思います」

――選手たちのモチベーションコントロールをはじめとしたマネジメントは大変だったかなと思います。

 「(集中を)切らさないように、という言葉はこちらからは伝えませんでした。実は準決勝の前にメンタルトレーニングの講習をやっていて、その効果があったのかなと。『揺らがず、捉われず』 といいますか。我々は決まったことに対してチャレンジするだけなので、それになんやかんやって言っても、何も変わるものでもないと。できることを100%やろうと」

――すごい良いタイミングでメンタル講習を入れていたんですね。

 「元々、勝ち上がって準決勝に進んだら、東京で(メンタル講習を)できるということだったので。結果的に非常にチームとしては良かったです。周りの状況の変化にとらわれずに自分の感情を知って、今できること、自分ができること、やらなければいけないことに対してそこに焦点を当てると。その結果なのかな、とも思います」

G大阪ユースの指揮を執る町中監督

劇的逆転弾は「日ごろの行ない(笑)」

――試合についてですが、準決勝まで点を取られておらず決勝で初失点。さらに逆転されたので、ピッチレベルで見ていて「厳しいかな?」とも思いました。ただ、そこから再逆転できた。どういったプランで試合に臨んだのですか?……

残り:2,856文字/全文:4,865文字 この記事の続きは
footballista MEMBERSHIP
に会員登録すると
お読みいただけます

TAG

ガンバ大阪育成

Profile

竹中 玲央奈

“現場主義”を貫く1989年生まれのロンドン世代。大学在学時に風間八宏率いる筑波大学に魅せられ取材活動を開始。2012年から2016年までサッカー専門誌『エル・ゴラッソ 』で湘南と川崎Fを担当し、以後は大学サッカーを中心に中学、高校、女子と幅広い現場に足を運ぶ。㈱Link Sports スポーツデジタルマーケティング部部長。複数の自社メディアや外部スポーツコンテンツ・広告の制作にも携わる。愛するクラブはヴェルダー・ブレーメン。

関連記事

RANKING

関連記事