今夏の移籍市場でバルセロナやイングランドからの関心も噂されたブレーメンの長田澪。ドイツ人の父と日本人の母を持つ194cmの若手GKが一躍名を馳せた2023-24シーズンの終盤、フォレンダムでの武者修行を本人に振り返ってもらった貴重なインタビューをお届けする。
長田澪(20歳/ドイツ名はミオ・バックハウス)は昨季(2023-24)、ブレーメン(ドイツ)からフォレンダム(オランダ)に1年間の期限付きで移籍し、開幕からレギュラーの座を射止めた。チームの2部降格が決まったことでエールディビジ33節から長田は控えに回ったが、それでも最終節の対トゥエンテ戦では90分から途中出場し、ホームスタジアムに詰めかけたサポーターと別れを惜しむ機会が与えられた。
伸び盛りの若手GKはビッグクラブからのオファーが報じられるなど、欧州でも注目の的だ。そんな長田に昨季終盤、フォレンダムの厚意もあってインタビューする機会を得た。エールディビジで貴重な経験を積んだ長田のたくましい姿を思い描きながら、読んでいただきたい。
GKコーチもニヤリ。至近距離シュートの弱点を克服
――176セーブは、2位マイケル・ブラウワー(ヘラクレス)の154セーブを大きく引き離すリーグダントツのスタッツでした。
「そういう意味でも良い経験を積めました。シュートをいっぱい浴びて喜ぶ人はいないんですけど、これは結果オーライで色々なシチュエーションが経験になりました。1本1本のシュートが経験なんです」
――その最高の経験の1本は、どの試合のどのシュート?
「それはわからないけれど、自分が前進したなと感じたのはフェイエノールト戦(0-0/第28節)。強豪相手に安定したプレーで守護神になり、フィールドプレーヤーから『こいつ、不安定だな』というのがなかったと思うんです。そういう面で『ああ、俺、成長できたな』と感じました」
――逆に『やられた1本』は?私は長田選手の肩口を抜いたノア・ラン選手(PSV)のシュート(第6節)がパッと思いつきます。あれは守備範囲だっただけに、もっとできることがあったと思います。
「確かにそうです。それでキーパーコーチと話し合って、近くに来たシュートを止めるトレーニングを練習しているんです。
またアスレチックコーチに『リアクションライト』というのを用意してもらって、見たものを手で捉えるという繋がりを作る『ハンド・アイ・コーディネーション・トレーニング』を週に1回、やってます。これは4つの色のライトをアプリと連結させて、青なら青、緑なら緑のランプしか触ってはいけない。自分の体の近くにあるライトをボールに見立て、瞬発的に繰り返すことで弱点を克服してます。
PSV戦が10月1日でした。それからずっとこのトレーニングを積んで迎えたユトレヒト戦(2月4日/第20節)の前半、至近距離から打たれた肩口のシュートを止めた。それでGKコーチを見たらニヤって笑ってた。そういう成長を感じた1年でした」
――メンタルトレーニングの話も以前、うかがいました。フォレンダムで色々なことに取り組んでいたんですね。……
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中田 徹
メキシコW杯のブラジル対フランスを超える試合を見たい、ボンボネーラの興奮を超える現場へ行きたい……。その気持ちが観戦、取材のモチベーション。どんな試合でも楽しそうにサッカーを見るオランダ人の姿に啓発され、中小クラブの取材にも力を注いでいる。