各ポジションに実力者たちを揃える長崎の充実のスカッド。マテウス・ジェズスら外国籍選手たちの躍動に目を引っ張られるが、左サイドの俊英たちに注目してほしい。今、笠柳翼と松澤海斗は出場時間を分け合いながらチームの欠かせぬ武器として君臨する。長崎を追うライター、藤原裕久が2人の対照的なプレースタイルやキャリア、関係性、今後の可能性などに迫った。
左サイドを担う長崎の主武装
「サイドの選手は消耗品」
現在サッカーの中でときおり聞かれる言葉である。消耗品という表現に賛否はあるだろうが、この言葉はサイドに求められる仕事の多さと過酷さを如実に物語る。サイドアタッカーに求められる仕事は大きく3つ。
「味方がスペースを作りやすいように相手を引きつけること」
「中央で待つ味方に良いタイミングと良い位置で受けられるようボールを渡すこと」
「アタッキングサードに入ったとき、ボールを前に運び縦のスペースを作ること」
この3つを遂行するために彼らは上下動を繰り返し、ボールを保持し、1対1で勝負を仕掛け、ときには守備のカバーにも回り続ける。当然ながら、その消耗や影響は大きく、試合途中で交代となることも珍しくない。その動きが落ちればたちまち攻撃が停滞してしまうのだから当然だろう。それが「消耗品」と呼ばれる理由である。
だが、ここで言う「消耗品」とは価値の低さを表わす言葉ではない。
どれほど良い紙を使っても筆記用具がなければ意味はない。どれだけ性能の良い車であっても燃料がなければ単なる鉄の箱である。逆に、質の良い筆記用具で書くことができれば、そこに書かれたことが容易く消えることはなく、質の良い燃料を使えば車の性能は一層引き出されるだろう。
同じように質の高いサイドとは、消耗品という一面を持ちつつも、時に相手を牽制する強力な武器であり、時に勝負を決める決戦兵器なのである。チームにとって欠かせぬ「主武装」と言ってもいい。サイドにどれだけ優秀な主武装を持っているかで、チームの強さは大きく変わるのだ。
ドリブラーとして対照的な笠柳と松澤
現在、J2で好調を維持する長崎も例外ではない。
右サイドでは、J1での実績もある増山朝陽とブラジルでの経験が豊富なマルコスギリェルメを交互に起用して、走力というシンプルながらも計算できる能力で常に相手の背後を狙う。試合途中に交代しながら90分に渡ってスプリントを繰り返し、鋭いカウンターを狙い続ける右サイドの2人は間違いなくチームの大きな武器だ。
一方で、左サイドに立つのは実績面で右サイドに大きく劣る2人の若手である。だが、この左が敵に与える脅威は右にも劣らず、そのポテンシャルは他の追随を許さない。ピッチの左サイドに立つ一人の名は笠柳翼。もう一人の名は松澤海斗。長崎が誇る希望のツインアタッカーである。……
Profile
藤原 裕久
カテゴリーや年代を問わず、長崎県のサッカーを中心に取材、執筆し、各専門誌へ寄稿中。特に地元クラブのV・ファーレン長崎については、発足時から現在に至るまで全てのシーズンを知る唯一のライターとして、2012年にはJ2昇格記念誌を発行し、2015年にはクラブ創設10周年メモリアルOB戦の企画を務めた。