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パリ五輪予選に欧州組をほぼ呼べないのはなぜ?日本と世界の間で揺れる招集問題

2024.03.26

3月22日のマリ戦は1-3で敗れたものの、3日後のウクライナ戦では2-0で勝ち、最後のトレーニングマッチを終えていよいよ4月のAFC U23アジアカップに臨むU-23日本代表。パリ五輪への切符をつかむには韓国、中国、UAEと強豪国がひしめくグループBを突破して3位以上に入らなければならないが、欧州組を中心とするベストメンバーをそろえられないのはなぜか?招集問題を生み出している日本と世界のギャップを、川端暁彦氏が解説する。

 「これはもう、久保建英を呼ぶしかないんじゃない?」

 3月22日のU-23マリ代表戦後、そんなことを言っていた記者がいた。1-3の敗戦と、大岩剛監督が「ふがいない試合」と評した手応えのない内容を受けての言葉だと思うのだが、パリ五輪を目指す現場を取材する者ですらそのレベルの認識なのかとガックリきた。

日本を突き放す3点目を挙げ、喜び合うU-23マリ代表の選手たち

 何が言いたいかというと、「呼ばない」のではなく「呼べない」ということである。

 そこは、五輪チームを語る上での前提なのだ。

五輪代表常設は世界の常識から外れている?

 日本という国において、やはり「五輪」の社会的地位は高い。新聞などの伝統メディアはスポーツの話題で最も重視すると言っても過言ではなく、この3月に行われた男子サッカーの強化試合には専門メディアに限らず、多くの記者が詰めかけた。

 キャパの小さい北九州スタジアムでのU-23ウクライナ代表戦などは、記者席の定員と同数の記者が集まったほどで、試合後の取材エリアは押しくら饅頭状態だった。

 そうした社会環境を思えば、五輪を重視する以外の選択肢は日本サッカー界にないだろう。負ければ、この国における4年に1度の一大イベントにサッカーの姿がないという自体は絶対に避けたいし、できればメダルまで持って帰りたい。ここまでは自然な結論だろう。

 日本はJリーグ創設前の時代において、長らくW杯を軽視し、五輪を重視して強化していたという歴史的経緯もある。大会がU-23化された1992年のバルセロナ五輪以降も、日本サッカー界はこの大会に情熱を傾けてきた。今回のパリ五輪を目指すチームについても、コロナ禍以降はしっかり強化日程を組んで世界各国で対外試合を重ねてきている。

 ただ、これは割りと例外的なスケジュールである。つまり「五輪チーム」を常設して活動を続けているのは世界的にはスタンダードではないのだ。……

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Profile

川端 暁彦

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣『エル・ゴラッソ』を始め各種媒体にライターとして寄稿する他、フリーの編集者としての活動も行っている。著書に『Jの新人』(東邦出版)。

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