横浜FCからオランダ1部のNECに移籍した小川航基が、加入1年目から公式戦12ゴールという堂々たる結果を残している。前回の上田綺世に続いて、オランダで躍動するストライカーに「ゴールの極意」を聞いてみた。
公式戦で決めた12ゴールを振り返ると、小川航基の特徴が見えてくる。その内訳はオープンプレーからのゴールが6得点。CKからのゴールが5得点。PKが1得点とセットプレーから生まれたゴールが半分を占める。右足で決めたのが5ゴール。左足で決めたのが2ゴール。ヘッドで決めたのが5ゴール。つまり、小川は利き足と同じ数のゴールを頭で決めている。
CKから「フリーになる動き」で5ゴール
日本でも知られた豊富なシュートバリエーション。その能力をオランダでも遺憾なく発揮する小川航基は「CKからゴールを決めきる名人」だ。今季の彼はすでにCKから5ゴールも決めている。
【オランダリーグ】
第1節 8月13日 NEC対エクセルシオール 3-4
60分 3-2 小川(アシスト:ショーネ)
ファーにポジションを取った小川はさらに外に流れて走り込み、ヘッドを地面に叩きつけてオランダ初ゴール。マーク役のエル・ヤークビ(183cm)は全く小川と競り合うことができなかった。
第11節 11月5日 NEC対フォーレンダム 3-3
90分+8 3-3 小川(アシスト:ショーネ)
1点を追うNECはラストプレーのCKでGKシレセン(187cn)も含め、6人で長田澪の守るゴールに圧をかける。ショーネの蹴ったCKはシレセンの頭を越え、真後ろにいた小川に。この瞬間、フォーレンダムの選手の目線がシレセンに集中し、小川の周辺に空洞が生まれた。そして小川は渾身のヘッドを地面に叩きつけた。
第25節 3月10日 NEC対ヘーレンフェーン 2-0
67分 1-0 小川(アシスト:ショーネ)
この日、CKで2度、ファーで惜しいヘディングシュートを放っていた小川は、3度目のCKでニアへの走り込みを選択。味方が敵をしっかりブロックし、小川に道筋を作った。マーク役を務めたハイエを完全に置き去りにした小川は、GKの足下にヘディングシュートを撃ち込む。ファン・デル・ハルトの守備範囲だったが、勢いのあるショートバウンドに対応しきれなかった。
【KNVBカップ】
準々決勝 2月6日 NEC対ADOデン・ハーグ 3-0
2分 1-0 小川(アシスト:シェリー)
シェリーの左CK。NECは小川を含む3人が“列車”を作り、蹴る瞬間に散らばる。小川はファーに走り込み、ベルギー人DFマッテオ・ワーム(190cm)にシャツを掴まれるも、ほぼノープレッシャーでヘッド。ワームは完全にボールウォッチャーだった。
準決勝 2月27日 カンブール対NEC 1-2(延長)
60分 1-1 小川(シェリー)
シェリーの右CK。小川がニアに走り込もうとした瞬間、マークに付いていたCBマルコ・トル(188㎝)をCBナウティンクが完璧にブロックする。フリーの小川はショートバウンドに右足をうまく合わせてボレーシュートを蹴り込む。
小川がCKから決めた5ゴールは、すべてノープッシャーの状態でシュートを撃ち込んでいる。ADOデン・ハーグ戦のように巨漢DFワームがシャツを引っ張っていたとしても実際は死に体だった。
「相手がボールウォッチャーになっていた。マークの付き方が僕だけに来るような感じで、ボールを見てなかったので、空間認知できてなかったと思う。『これならタイミングよく行けば行けるな』と思いました。いいボールが来ました」(ADOデン・ハーグ戦後の小川)
CK時、ファーでバックステップを踏みながら、さらに外に動き出す小川のことをDFは視野に収めることができず、フリーにする。その駆け引きが試合の後半になって生き、カンブール戦、ヘーレンフェーン戦でニアへの動き出しから貴重なゴールを決めた。
「ゴールを見ない」で仕留めるフィニッシュ
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Profile
中田 徹
メキシコW杯のブラジル対フランスを超える試合を見たい、ボンボネーラの興奮を超える現場へ行きたい……。その気持ちが観戦、取材のモチベーション。どんな試合でも楽しそうにサッカーを見るオランダ人の姿に啓発され、中小クラブの取材にも力を注いでいる。