2023シーズンのオフ、かつてJFLやJ3を戦ったいわきFCの複数の選手たちが他クラブへ羽ばたいた。それは多くのJリーグ関係者に「いわき品質」を周知した出来事だった。かつて「フィジカル革命」を掲げたクラブは、昨季、初めてJ2に参戦し、特にフィジカル面で確かなクオリティを示した。クラブは歩みを止めることなく、さらなる進化を模索している。なぜいわきの選手は「動ける」のか。なぜ彼らは明らか差を見せつけられるのか。
後編では、フィジカル系のトレーニングを担当する秋本真吾スプリントコーチ、今オフに新任した友岡和彦ストレングス&コンディショニングコーチにご登場いただき、クラブが示す「ストレングス・バージョン2」の具体的内容を語ってもらった。
前編で触れたとおり、今季のいわきFCは、ストレングストレーニングをサッカーに接続するために「ストレングス・バージョン2」を構築していく。これまでのバージョン1は、身体を大きくして当たり負けしないこと、筋量を上げることで体脂肪を下げることがメインだった。バージョン2ではそれらを前進させるべく、身体の動かし方を改善し、サッカーに接続させることが主目的になる。
その中心を担うのは、秋本真吾スプリントコーチと友岡和彦ストレングス&コンディショニングコーチだ。
秋本コーチは、周知のとおり、多くのJリーガーの個別指導やWEリーグのマイナビ仙台レディースのコーチを務めるなど、アスリートの足を速くすることに尽力している。
友岡コーチもストレングス面で多くの競技アスリートの個別指導を行っており、その中には学生時代から携わり今では一線で活躍する選手もいる。今オフ、いわきFCのコーチ陣の一人として新任した。
今回、両者の狙い、そして、いわきFCが持つ哲学をアップデートするための新たな取り組みに迫る。
秋本スプリントコーチが覚えた違和感
秋本コーチは、いわきがJリーグに参入して以降、スプリントコーチに就任。今年に入って3年が経過する。初めてJ2リーグを戦った昨年、ピッチサイドで試合を見届ける中で、相手選手といわきの選手の違いをこう語る。
「いわきFCはストレングスを売りにしていますが、当たり負けするシーンが多かったんです。J3では殆どなかったのに一瞬のコンタクトで跳ね返されていて、その光景を見たときに、トレーニングがサッカーに接続していなければ意味がないと思ったんです。去年は連戦が多く、試合翌日はリカバリーに充てられることから、まとまったトレーニングができず、やりたいことができないとみんなが感じていたと思います。ただ、次第に走りの練習も増えていったことで、いわきが目指すフットボールが復活しそうな感覚がありました。改めて一から積み上げている感覚だったと思います」
試合中に相手の経験値によって上回られているシーンがあり、クラブ関係者が痛感したのは、相手の選手たちが持つフィジカルに付随したプラスαの部分だった。いわきFCの選手たちはその点に戸惑い、自分たちが強みとするフィジカルで“圧倒”できなかった。
この課題は、瞬発力の強化の話に繋がっていく。秋本コーチは自身が主体となって進める日々のトレーニングセッションにも、より試合をイメージさせるメニューを増やした。……
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Profile
柿崎 優成
1996年11月29日生まれ。サッカーの出会いは2005年ドイツW杯最終予選ホーム北朝鮮戦。試合終了間際に得点した大黒将志に目を奪われて当時大阪在住だったことからガンバ大阪のサポーターになる。2022年からサッカー専門新聞エル・ゴラッソいわきFCの番記者になって未来の名プレーヤーの成長を見届けている。