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「高卒即欧州時代」に横浜FMが描くアカデミー戦略【坪倉進弥アカデミーダイレクターインタビュー後編】

2024.02.02

2023年9月、横浜F・マリノスのアカデミーが10日間のイングランド遠征を行った。受け入れ先はシティ・フットボール・グループ(CFG)の旗艦クラブであるマンチェスター・シティ。世界最先端の施設でのトレーニングをベースに、シティアカデミー戦を含む3つのトレーニングマッチが行われた。

後編では、高卒後に即欧州に渡るケースも増加しているなど激変する育成の環境の中でJクラブのアカデミーはどのような生存戦略を描いているのか、横浜FM・坪倉進弥アカデミーダイレクターに聞いた。

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激変する環境。Jアカデミーの生存戦略

――坪倉さんとお話できるこの機会に、Jクラブのアカデミーのあり方についてお聞きしたいことがあります。2020年のインタビューから3年が経ち、その間には三笘選手をはじめとする日本人選手の欧州での活躍が見られました。若手日本人選手の欧州移籍のトレンドがますます加速する中で、高卒で即海外に行くケースも多くなってきています。このような環境の中でJクラブのアカデミーが果たすべき役割について教えてください。

 「私も立場上、そのテーマはすごく気になっています。このままだとジュニアユース年代はJのクラブでプレーしても、ユース年代はその先の学業サポートや選択肢を広げるために高校サッカーに行き、強豪校で活躍して海外に行くというルートを選ぶ選手が増える状況になるのではと思われます。ですから、横浜FMのアカデミーに在籍して身につくこと、そこで描けるキャリアパスというものを明確に提示、もしくは感じ取ってもらえなければ、日本国内でいい選手を集めることができなくなります。我々に限らずJクラブはそこをきっちりアピールできなければ、高卒段階でいい選手を海外のクラブにいいように持っていかれてしまうでしょう。重要になってくるのは17歳、18歳という進路の転換点ではなく、その下の16歳、15歳、14歳、13歳で何を与えられるか、選手自身が何を獲得できるかだと思います」

神村学園卒業後ボルシアMGに加入した福田師王。セカンドチームからのスタートとなったが、2024年1月にトップチーム昇格が発表され、19節レバークーゼン戦でブンデスリーガデビューを果たした

――シティが重視しているタレントの「形成」(10代前半から時間をかけて選手を育てていくアプローチ)が重要になってくるということですね。

 「はい。そのためにはゲーム環境の面も全国大会をどうするかといった議論だけでなく、日頃のトレーニングマッチも含めて、年間でどのような試合をすれば、選手たちがより成長できるのかを突き詰める必要があります。オフシーズンやプレシーズンを設け、年代に応じた休養とのバランス、他競技、他活動から身につくスキルを獲得することが選手の成長につながると考えます。これはアンデルレヒトでの1年で痛感し、今回のシティスタッフとの話でも話題にあがりました」

――育成年代で負荷が高すぎるトレーニングを続けることには様々なリスクがありますからね。そうした育成環境を変えていくことは重要だと思います。もう1つ、18歳以降のポストユースの年代で試合出場の機会がなくなるという課題も注目されています。

 「今の日本の18歳から21歳の時期は大学サッカーという年間を通したリーグ戦が良いレベルで動いています。A代表までステップアップする選手もいますし、多くの有力選手たちが大学サッカーを経由している流れを考えると、JのクラブがポストユースとなるU-21のチームを持つことは現状では難しい。それには各クラブの資金力が必要ですし、大学リーグを上回るゲーム環境をシーズン通してJリーグが持てるかどうかもあります。何よりチーム運営という視点で考えれば、アカデミー出身の選手でどれだけの移籍金を稼げるか、どれだけ戦力として価値を高めて利益を出していけるかがシビアに求められます。この点は、日本サッカー全体として(育成へのインセンティブを高めるという意味で)育成費の係数が変わっていかなければ、移籍ビジネスは発展していかないと思います。それが発展すればクラブ全体も大きくなるはずです」

育成環境や制度、ポストユースの問題点

――高校年代の選手がJユースではなくて高校サッカーを進路として選ぶことに関しては、Jユース間での移籍の自由化やトップチーム昇格ができない場合は別のJクラブに行く自由を認めることも考えるべき、といった問題とリンクするかもしれません。……

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J1リーグマンチェスター・シティ坪倉進弥横浜F・マリノス

Profile

浅野 賀一

1980年、北海道釧路市生まれ。3年半のサラリーマン生活を経て、2005年からフリーランス活動を開始。2006年10月から海外サッカー専門誌『footballista』の創刊メンバーとして加わり、2015年8月から編集長を務める。西部謙司氏との共著に『戦術に関してはこの本が最高峰』(東邦出版)がある。

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