かねてから噂されていた欧州挑戦が1月10日、ついに公式発表された。名古屋グランパスからKVコルトレイクへ期限付き移籍する藤井陽也のことだ。元日のタイ戦でA代表デビューを飾ったばかりの23歳が海外で追いかける2人の背中とは。同試合を取材した舞野隼大氏が迫る。
名古屋で育ち、名古屋グランパスで活躍していた藤井陽也が海を渡る決断を下した。
2023シーズン、藤井はJ1リーグ戦全34試合に先発出場し、絶対的守護神であるミチェル・ランゲラックの3060分に次ぐ3054分のプレータイムを得てJリーグ優秀選手賞を受賞。CBながら攻撃面でも存在感を放つと、その活躍を認められるようにして2024年元日のTOYO TIRES CUP 2024、タイ戦で日本代表デビューを飾った。そして、1月10日にはベルギー1部のKVコルトレイクへ期限付き移籍することが発表され、飛躍の1年になる予感を漂わせている──。
「出し切れなかった」代表初出場で口にした意識と反省点
国立競技場のミックスゾーンで藤井は初めて出場した代表戦について振り返ったが、「自分の力をすべて出し切ることはできなかったです。もっともっとやれました」とそこに満足した様子は一切感じられなかった。
「特徴は空中戦だったり、1対1、球際の部分で負けないことです」。自分でそう話すように、187cmの高さと強さを備えたフィジカルとスピードを武器に、昨シーズンのJ1リーグでは他を寄せつけない対人守備で圧巻のパフォーマンスを発揮していた。
5-0というスコアを見ただけでもわかる通り、タイ戦では日本が主導権をほとんど握って攻められる回数はそこまで多くなかったが、相手にチャンスらしいチャンスを作らせることはなく右CBとしてのタスクを遂行。相手ゴール前まで駆け上がり、積極的に攻撃に参加する右SB毎熊晟矢の背後を相手に突かれる場面が時折あったが、そこのカバーリングにも気を利かせていた。ただ藤井自身としては「まだまだでした。相手に数回起点を作られるところもあったので、そこはこだわってゼロにしたい」と意識は高い。
2019年から2021年までは、イタリア人指揮官のマッシモ・フィッカデンティから守備の指導を仰いだ。自陣ゴール前での水際の駆け引きはもちろん、チャンスを作られる前の予測や予防まで徹底的に叩き込まれた藤井は、たとえゴールから離れた場所であってもピンチの芽を未然に摘もうとし、昨シーズンまで名古屋のゴールを守り続けた。
代表チームでも、ボール保持時から局面が変わった時の対応は同じように強調されている。……
Profile
舞野 隼大
1995年12月15日生まれ。愛知県名古屋市出身。大学卒業後に地元の名古屋でフリーライターとして活動。名古屋グランパスや名古屋オーシャンズを中心に取材活動をする。2021年からは神奈川県へ移り住み、サッカー専門誌『エル・ゴラッソ』で湘南ベルマーレやSC相模原を担当している。(株)ウニベルサーレ所属。