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「急がば回れ」の育成型指揮官。愛媛FC・石丸清隆監督がチームととともに進んできたJ2復帰への道

2023.12.20

来季は2021年シーズン以来となるJ2の舞台へ復帰する愛媛FC。石丸清隆監督は8年ぶりにこのクラブへと帰ってきた昨季の戦いを経て、さまざまな改革を施したという。そして選手の成長こそがチームの核になると信じ、2年を掛けてゆっくりと育んできたオレンジの芽は、ようやく今季になってJ3優勝とJ2昇格という大きな実を付けた。そんな石丸監督を間近で取材し続けてきた松本隆志が、この2シーズンの歩みを指揮官の奮闘とともに振り返る。

道半ばでクラブを去ってきた石丸監督のJ2挑戦

 今季J3リーグを戦い終えたちょうど1週間後の12月9日、J3優勝指揮官となった石丸清隆監督の来季続投のリリースが流れた。

 来季、チームが戦うカテゴリーはJ2。21年まで16シーズン戦ってきたその舞台は“昇格”というより“復帰”という意味合いが強いが、石丸監督にとってもJ2は復帰の舞台だ。13年に初めて指揮を執った愛媛FCをはじめ、京都サンガF.C.、モンテディオ山形はともにJ2クラブ。勝手知ったるカテゴリーと言える。

 ただ、J2における石丸監督の挑戦はいずれも志半ばでクラブを去る形となっていることは否めない。J監督デビューを飾った愛媛の2年間では厳しい戦力の中でも選手個々の成長が伺えたが、チームとしての結果は出せずじまい。チームの成績不振による前指揮官の解任で、15年途中に急きょ出番が回ってきた京都では、地道にチームを立て直しつつ、翌年にプレーオフへ進出させるも昇格は叶わず。山形では就任1年目の前半戦で大きくつまづくも、後半戦から躍動感のあるサッカーを体現して躍進。2年目への期待感は高まったが、再び序盤からチームは大失速し途中解任に追い込まれた。

 13年から愛媛で指揮を執った2年間を見て筆者が感じたのは、石丸監督は結果を残せる指揮官だが、即効性はないということ。だからこそ、道半ばで指揮の機会を奪われるたびにやや残念な気持ちになり、もし3年目の指揮があったなら……と軽く妄想してしまっていた。

Photo: EHIME FC

ベースづくりに終始した1年目の7位という必然

 遡ること約2年前、愛媛のJ3降格が決定し、失意のシーズンを終えたばかりのタイミングで石丸監督と電話で話す機会があった。

 「来年、愛媛でやるよ」

 まだクラブから正式にリリースされる前に聞いたその言葉に、私はスマホ越しに小躍りした記憶がある。確信があったわけではないが、この監督ならチームを再びJ2へ導いてくれるという希望が抱けたからだ。
 
 同時に、結果が出るまでに時間がかかると思ったのも正直なところ。1年では難しいかもしれないが、2年目には成果が出るだろう。後出しジャンケンのように聞こえるかもしれないが、それが当時の本音だった。

 そこから石丸監督が優勝指揮官へ上り詰めたプロセスも想像どおりだった。

 1年目はその前年から引き継げるモノのほとんどなかったチームのベース作りに終始した。選手やコーチ陣、チームスタイルも刷新され、指揮官もJ3での指揮は初体験。さまざまなモノが手探り状態で進められ、失敗も多かった。

 「ここまで(フィジカルで)戦えないとは」

 足を踏み出してようやく未知のカテゴリーの難しさを痛感。J3ならではのフィジカル面に重きを置いたスタイルに順応しきれず、出鼻をくじかれるように開幕3連敗でいきなり試練は訪れた。その後は騙し騙しJ3の戦い方にアジャストしていきながら徐々に順位を上げて行くも、昨季チームは石丸監督の目指す“アクションサッカー”を体現するにはややひ弱な感は否めなかった。

 チームの多くを占めるのはベテラン、中堅選手。プロとしてすでに自分の色を持っている彼らにイチからあらためてフィジカル要素を叩き込むのは困難な仕事だった。開幕前にフィジカルコーチがチームを去るというイレギュラーな出来事が起こり、急きょ呼び寄せたフィジカルコーチも勝手が違ってか思い切りの良さを見せられず。シーズン中はヘッド格の青野慎也コーチもS級コーチライセンス取得で留守が多く、練習場の雰囲気はお世辞にも活気が溢れているとは言い難い状態。本格的な昇格戦線に加われないままリーグ7位でシーズンを終えたことも必然的なことだと言わざるを得なかった。

Photo: EHIME FC

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愛媛FC松田力森脇良太深澤佑太石丸清隆石浦大雅谷本駿介

Profile

松本 隆志

出版社勤務を経て2007年にフリーへ転身。2009年より愛媛FCを中心としたプロサッカークラブの取材活動を始める。サッカー専門紙エルゴラッソ、サッカーダイジェスト等へ寄稿。ライター業とともにフォトグラファーとしても活動する。

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