SPECIAL

京都で11戦5発。原大智が2年半ぶりのJで感じたサッカーの楽しさ、「まだ見ぬ自分」の可能性

2023.11.25

2年半ぶりにJリーグに帰ってきた原大智が輝きを放っている。今夏の移籍期間にデポルティーボ・アラべス(スペイン1部)から京都サンガF.C.へ完全移籍で加入。86日の第22節・柏レイソル戦(0-1で国内再デビューを果たし、出場3試合目の第24節・北海道コンサドーレ札幌戦(3-0で初ゴールを決めると、そこから3試合で4得点という数字を叩き出した。さらに第29節・サガン鳥栖戦(3-2では縦へのドリブルでペナルティエリア内に侵入し、利き足とは逆の左足でGKのニアサイド上段を打ち破る豪快なシュートを突き刺すなど、24歳のFWが見る者を驚かせている。

 シーズン前半戦を終えた京都にとって、FWは必ずしも補強が必要なポジションではなかった。36歳にして第一線を張り続けるパトリックや真価を発揮してきた豊川雄太が得点源となり、高卒で欧州へ渡った逆輸入Jリーガーの木下康介やパリ五輪を目指すU-22日本代表の山田楓喜、献身的なプレーでチームの機能性を高める山﨑凌吾などなど、人数は十分にそろっている。「補強するなら夏に主力級の2人が退団した右サイドバックをはじめとする他のポジションではないか」という意見も多かったが、昨夏にブランドアンバサダーから強化サイドへ転身した安藤淳・強化部長代理は「間違いなく力のある選手で、チームをもう一段階上へと持っていくことができる。裏へ抜けられて、足下でも収められて、高さでも勝負できる。うちにはいないタイプ」と原大智を獲得した理由を説明している。また、リーグ前半戦で曺貴裁監督はFW登録されている多くの選手を[4-3-3]の3トップに起用してきた。その時々で調子のいい選手やゲームプランに即した選手を使ってきたがもう一枚、前線の軸となれる存在が欲しいという見方もある。そういった要素も、獲得の後押しとなったようだ。

 そして、その目利きが正しかったことを原は11試合で5ゴール(第32節終了時点)という数字で証明してみせた。10月以降は対戦相手からの警戒が強まり、チームの調子が落ちてきたこともあって得点率は低下しているが、11月12日の第32節・川崎フロンターレ戦(△3-3)では2アシストを記録して、チャンスメイクで好機を作る側に回れることも示した。今のJ1リーグで見ておくべき選手の一人と言えるだろう。

「守備をしっかりするチームなので、自分にとってそこは伸びしろ」

 本人は京都で過ごす日々を、どう感じているのだろうか。

 「久々のJリーグで、どういう結果が出るのかわからない状況でしたが、いいタイミングでゴールを決められたり、勢いに乗ることができました。一方で、チームを勝たせたり、勢いに乗せることができなかったところもあります。来季はそうした経験も生かして、さらに強い京都を作っていきたいですね」と、この約4カ月を振り返っている。

 苦労したのはコンディションだ。今年1月にアラベスから2度目の期限付き移籍で加入したシント=トロイデン(ベルギー1部)の公式戦が4月下旬で終了し、そこから帰国後は休息にあてていた。7月上旬に京都に合流したが、Jリーグは折り返し地点を迎えるところ。シーズン中の状態にあるチームメイトに対して、原は一度落としたコンディションを上げていく必要があった。本人も「体は鈍っていたので、そこの難しさはありました」と話しているが、「京都の激しい練習をこなす中で徐々に慣れてきた」感覚があったという。曺貴裁監督はトレーニングから公式戦さながらの強度を求めており「サンガタウン(練習場)での日々がすべて」と明言している。練習からハードワークを積み重ね、公式戦を戦い続ける中で、徐々に本人にとっても納得のいく状態に戻ってきたようだ。

……

残り:2,383文字/全文:4,210文字 この記事の続きは
footballista MEMBERSHIP
に会員登録すると
お読みいただけます

TAG

J1リーグ京都サンガF.C.原大智

Profile

雨堤 俊祐

京都府出身。生まれ育った地元・京都を中心に、Jリーグから育成年代まで幅広く取材を行うサッカーライター。サッカー専門紙『EL GOLAZO』で2005年から京都サンガF.C.の担当記者として活動。その他、サッカー専門誌などでも執筆している。J-COMの「FOOT STLYE 京都」にもコメンテーターとして出演中。

関連記事

RANKING

関連記事