【短期集中連載】J1昇格プレーオフのキーマン#2
モンテディオ山形編:南秀仁
明治安田生命J2リーグ第42節が終わり、J1昇格プレーオフ出場クラブが決まった。3位東京ヴェルディ、4位清水エスパルス、5位モンテディオ山形、6位ジェフユナイテッド千葉の4チームだ。トーナメント形式の一発勝負で優勝チームがJ1昇格の権利を手にすることになる。この決戦のキーマンとなるのは誰なのか?
第2回のモンテディオ山形編では、在籍7シーズン目を迎え、チームキャプテンを務める南秀仁をピックアップ!
2年連続のプレーオフ進出を最終節で勝ち獲る!
11月12日の第42節、モンテディオ山形は勝点で並ぶヴァンフォーレ甲府との直接対決となった。懸けるのは、J1昇格プレーオフ最後の1枠。得失点差で甲府が6位、山形が7位。山形はこの一戦に勝つ以外にプレーオフ進出ができない条件だった。
63分にPKで先制を許し、可能性は遠のいたかに見えた。しかし82分、逆に宮城天のPKで同点に追いつくと、アディショナルタイムにはデラトーレが逆転のゴールを決め、2-1で山形が勝ちきった。ギリギリの勝利となったが、これで順位も逆転。同時刻キックオフの5位・ジェフユナイテッド千葉と8位・V・ファーレン長崎の対戦で長崎が勝ったこともあり、千葉も抜いてレギュラーシーズンを5位で終え、2年連続でのプレーオフ進出となった。
“2年連続”ということは、よく言えば、昨年の経験値があるということ。その経験をした選手がチームにはいまも多く残っているが、要は、昨シーズンはプレーオフでの昇格ができなかったということになる。今年に入り、選手たちに「昨シーズンで一番印象に残っていること」を訊ねると、多くの選手が、このプレーオフでの“敗退”を挙げている。ボランチでプレーするチームキャプテン・南秀仁もそのひとりだ。
今シーズンと同じように、昨シーズンもシーズン終盤にチームが機能し、結果に結びついていった。リーグ戦のラスト2試合は大分トリニータに3-0、徳島ヴォルティスに3-0と、プレーオフ争いに絡む相手との直接対決を快勝で制した。そして臨んだプレーオフ1回戦・ファジアーノ岡山戦も3-0で快勝。レギュラーシーズン中には“再開試合”も含めて都合3度敗れていた相手に、もっとも重要な試合でリベンジを果たした。
プレーオフ2回戦・熊本戦後に口にした「自滅」という言葉の意味
そして、“絶好調”の状態で迎えたプレーオフ2回戦は、リーグ4位でフィニッシュしたロアッソ熊本と対戦。12分に先制されたものの、17分に追いつき、24分には一気に逆転している。その逆転ゴールを決めたのは南だった。相手のプレーを先読みしたインターセプトからワンツーで抜け出すと、前に出てきたキーパーの頭上を軽やかに抜くループシュート。あっという間の逆転で、ここまでのチームの勢いが本物だったことを示した。
しかし、後半開始すぐ、ややゆるい立ち上がりの隙を突かれてPKを与え同点とされると、最後まで勝ち越すことができなかった。2-2のタイスコアだったが、レギュレーションにより山形の敗退となり、1週間後に行われたJ1・京都サンガF.C.との参入決定戦に進むことはできなかった。
この熊本戦での敗退で選手たちが感じた“悔しさ”の源泉とは何か。もちろん、「スコアではドローなのに次に進めなかった」モヤモヤ感はある。事前にわかってはいたとはいえ、いざそれを現実のものとして突きつけられると、どうしても割り切れない感情は湧いてくる。絶好調の状態で臨んだ試合であれば、さらにその思いは強くなるだろう。
「こんなにいいサッカーをしていて、才能のある選手たちがたくさんいるチームでいまサッカーができていることというのは、すごく幸せだと思うので、何としてもこのメンバーで、このチームで上に上がりたいなと思います」
熊本戦直前、南はそう話していた。感情の起伏を表情や仕草に出すタイプではないが、印象的だったのはミックスゾーンでのある言葉だった。
2-2から決勝点を奪えなかったのは、相手の守備が上回ったのか。そう訊かれた際に、「いや、自滅です」と答えている。口調はいつもの穏やかな口調だが、この“自滅”という言葉を絞り出すまでの感情を察すれば察するほど、その悔しさが滲んでくるようだった。そして、今シーズンに懸ける思いもそれに比例してさらに強いものになっているだろうことも、容易に想像できた。……
Profile
佐藤 円
1968年、山形県鶴岡市生まれ。山形のタウン情報誌編集部に在籍中の95年、旧JFLのNEC山形を初取材。その後、チームはモンテディオ山形に改称し、法人設立、J2参入、2度のJ1昇格J2降格と歴史を重ねていくが、その様子を一歩引いたり、踏み込んだりしながら取材を続けている。公式戦のスタジアムより練習場のほうが好きかも。現在はエルゴラッソ山形担当。タグマ「Dio-maga(ディオマガ)」、「月刊山形ZERO☆23」等でも執筆中。