現在、フランス・リーグ1の順位表では驚きの事態が起こっている。最下位にいるのは、なんと2000年代にリーグ7連覇を達成した元王者のオランピック・リヨネ(リヨン)。さらにびっくりするのが、10試合を終えた時点でも彼らが1勝も挙げていなかった(0勝4分6敗・8得点19失点)という事実である。
36年を経て今年5月、オラス会長が勇退
開幕直後は「スタートダッシュにつまずいた」という見方もできた。昨季リーグ2位のRCランスも、5試合を終えた時点では最下位に沈んでいたのである。しかし本来のリズムを取り戻した彼らは、その後7試合で順調に勝ち点を積み上げて6位まで急上昇。一方のリヨンは以降も底辺に定着し、正真正銘の「大スランプ」であることが明らかになったのだった。
その理由として挙げられるポイントはいくつかあるが、不振に陥るクラブはたいてい経営面にゴタゴタを抱えている。そして現在のリヨンもしかりだ。
リヨンは昨年6月、ブラジルのボタフォゴやプレミアリーグのクリスタルパレスの経営権を持つ、アメリカの「イーグル・フットボール・ホールディングス」の手に渡った。1987年からリヨンの運営を担った名物会長のジャン・ミシェル・オラスは売却後も会長職に留まったが、今年5月に退任。オーナー会社のトップであるジョン・テクスターが会長に就任した。
大胆発言で知られるオラス前会長の運営については賛否両論あったが、クラブ愛に関しては本物であり、クラブの発展のために尽くした人物であったことは疑いない。そんなクラブを引き継いだテクスターは、オーナー就任に際して、複数のクラブを所有する中でも「リヨンに注力する」と発言。CL出場権を目標に定めて資金を注入することを誓ったのだが、初年度の22-23シーズンは7位とギリギリで欧州カップ戦出場権を逃した。
状況が悪化したのは、今年の夏。プロサッカークラブの会計を監督するDNCG(Direction Nationale du Contrôle de Gestion)がリヨンの経営状態を精査した結果、問題があるとして「サラリーと移籍金を制限する」という制裁を科したのだ。テクスターは控訴したが却下され、この夏のメルカートを皮切りにリヨンはチーム構築に大きな痛手を受けることになった。
テクスターは、クラブ買収交渉の最終段階の前に明かされていなかった経営状況があったとオラスを非難。しかしこれを不服として、オラスがテクスターを名誉毀損で訴えると発言するなど、新旧会長は現在、泥沼の関係にある。
司令塔と重鎮の不振、監督はブランからグロッソへ
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Profile
小川 由紀子
ブリティッシュロックに浸りたくて92年に渡英。96年より取材活動を始める。その年のEUROでイングランドが敗退したウェンブリーでの瞬間はいまだに胸が痛い思い出。その後パリに引っ越し、F1、自転車、バスケなどにも幅を広げつつ、フェロー諸島やブルネイ、マルタといった小国を中心に43カ国でサッカーを見て歩く。地味な話題に興味をそそられがちで、超遅咲きのジャズピアニストを志しているが、万年ビギナー。