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バングーナガンデ佳史扶の核心にある「無理だと思ったことがない」めげない、しなやかな強さ

2023.11.16

FC東京で頭角を現しつつあるバングーナガンデ佳史扶は、日本サッカー界としても待望の『左利きの左サイドバック』だ。3月にはA代表にも招集され、コロンビア戦では国際Aマッチデビューも経験。今まで積み重ねた努力が結実し始め、順風満帆のように見えた今シーズンだが、以降は相次ぐ負傷に見舞われたこともあって、やや苦しい時間が続いている。優しい笑顔も印象的な22歳はいま、何を考え、どこまでを見据えているのか。彼をプロデビュー時から取材してきた後藤勝が、その胸の内に迫った。

初めてのA代表招集。それでも2023年は順風満帆な1年ではなかった

 人材が豊富な右に比べて左のサイドバックは候補が限られる。かつ左利きとなるとなおさらであり、A代表であれば伊藤洋輝か中山雄太かという状況でFC東京のバングーナガンデ佳史扶が人気銘柄となるのも無理はない。

 佳史扶は東京としても待望の左サイドバックだ。先頃FC町田ゼルビアで現役引退を発表した太田宏介、2022年の夏にポルトガルのヴィトーリアへと期限付き移籍で旅立ち、今季はベルギーのシントトロイデンに所属している小川諒也のあとを背負って立つ逸材という認識がある。

 しかしエリートコースを歩んできた身として常に順風満帆であったのかというとそうではない。2023シーズンは同じ左利きでボール保持型のスタイルに適した徳元悠平、昨年のW杯日本代表だった長友佑都との競争があり、かつ右膝膝蓋骨骨挫傷と右脛腓靭帯損傷による離脱もあって、リーグ戦の出場時間は16試合1032分間に留まっている。

 それらの負傷も、前者に関しては初めて招集されたA代表での活動中のもの(3月28日のコロンビア代表戦。後者は5月24日のルヴァンカップ・セレッソ大阪戦)。代表とクラブとを行き来する代表選手の苦しみを味わった。負傷から復帰して東京の試合に出られるようになった秋、A代表の選考からは漏れてU-22日本代表に選出された。

 しかし腕試しとの想いで参加したこの米国アリゾナ州遠征では、初戦こそU-22メキシコ代表に4-1の勝利を収めたものの、つづくU-22アメリカ代表戦では反対に1-4のスコアで敗れ、自身も前半ラストの2失点目につながるシーンで、ディフェンス同士の意思疎通を欠き背後をとられるなど、個人としても振るわない試合となってしまった。さらにその米国遠征から帰国直後のJ1第30節・横浜FC戦では、前日の練習に加わったのみの状態で先発したが、0-1の敗戦を喫している。

 山あり谷あり。それもどちらかと言えば谷底に落ちている期間のほうが長く、踏んだり蹴ったりの一年と形容してもいいほどだが、それでも今年、佳史扶の顔から柔和な笑みが消えたことはない。

転がる石のように揉まれてきた佳史扶

 佳史扶はこれまでも転がる石のように、周囲に揉まれながら少しずつかたちを整えてきた。ただし競争が始まる前には、サッカーの楽しさのみを味わう、幼年期とでも呼ぶべき幸せな時間があった。

 物心がついた頃、いつの間にかサッカーを始めていた佳史扶にある最初の記憶は、幼稚園の頃には5対5くらいの規模のゲームでひたすら点を獲りまくっていたというもの。フォーメーションやポジションについてそれほど深く考えてはいなかったが、小学生になると様々なポジションを経験させようとするコーチのもと、フォワードもトップ下もサイドハーフもサイドバックもこなすようになった。公式戦での起用は前目に絞られたが、色々なポジションを経験したという。

 「FCアビリスタ(小学生の時に所属したクラブ)では監督が指示するのではなく、まずは楽しんで自由にという感じでした。みんな積極的に色々なポジションをやってみたいと思い、それに対してコーチが『じゃあ今日はここをやってみようか』と。リフティングとかは全然出来なかったですけど、基本的に小学生の時はただひたすら、好きなことだけをやっていたという感じですね」……

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FC東京J1リーグバングーナガンデ佳史扶

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後藤 勝

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