リーガ第10節を終え、7勝3分といまだ無敗。首位レアル・マドリー(8勝1分1敗)とは勝ち点1差で、バルセロナがシーズン最重要の戦い、クラシコを迎える(日本時間10月28日、23時15分キックオフ)。しかし今の彼らが見せるフットボールの質は、主力選手の負傷離脱により著しく低下しているのが現状だ。特に中盤の指揮者としてタクトを振っていたフレンキー・デ・ヨンクの不在は、チームに多大な影響を及ぼしている。
基軸を欠いたビルドアップの停滞
チームメイトに必要な貢献をよく理解し、チームを機能的に滑らかにさせることができるオランダ人MFのダイナミックな能力を最大限引き出すために、ピッチ狭しと解放させた動きをチームの基軸とした“フレンキー・システム”。その自由な動きに合わせた味方の連続したサポートにより、今シーズンのバルセロナは相手の守備戦術に対して創発的に最適な形で適応できる動的な構造へと変化した。しかしこの属人化されたシステムそのものが仇(あだ)となり、ペドリがいないとボールを保持していても有機的な攻撃を繰り出せなくなった昨シーズンとほぼ同じ現象が起きてしまい、試合を支配する力そのものが低下している。
それが顕著に表れているのがビルドアップの攻防における劣勢である。リーガ第10節アスレティック・ビルバオ戦(○1-0/10月22日)、CBのパスコースを制限しながらハイプレスを仕掛けてきた相手に対して、バルサは[2-4-4]のブライトン風な配置で挑んだ。だが、その配置から守備ライン裏のスペースを突くためのタイミングを合わせた移動や、動的な体の向きとボールの運び方など、有効なスペースと選択肢を生み出すためのプレーがあまりにも漠然としていて、チームとして“どのようにボールを前進させるのか”という明確な意志と意図が感じられなかった。特に“+1をどのように創出して利用するのか”がチーム戦術として欠落していた。構造上フリーとなる両SBに意図して+1になる動きはまるでなく、ただピッチ上で余ってる人に成り下がっていた。なのでただただ微妙に低いだけのSBの初期配置が相手のプレスの呼び水となり、ボール奪取のハメどころとして利用されてもいた。これまで偽SBの動きを頻繁に行い、互換性のある流動性をチームにもたらしていたカンセロがその動きを止めていたのは不思議ですらあった。
また、良質なパスで最後尾からチームを操る司令塔型GKを有すればフィールドプレーヤーが1人多い状態となり+1として利用価値が高いはずだが、テア・シュテーゲンも機能不全に陥っていた。フレンキー・システムが機能していた時は、CBの列まで上がって相手を誘引しフリーになった選手に配球したり、しっかり相手を引きつけてメッセージを込めたパスを送ったりと+1として機能していたのだが、アスレティック戦ではそうした優位性を還元するプレーはほぼなく、セーフティに距離を稼ぐ保守的なロングパスを多発していた。
このようにチームの基軸であったフレンキーの不在により、相手を困る状況にする立ち位置を見つけ出していく配置の流動化は激減し、ただただ静的な配置で同じパスコースをたどるだけの凪(なぎ)のビルドアップが続き、相手に捕まるという悪癖が再発してしまった。主力が離脱すれば毎度発症する昨シーズンからの悪癖。これは合理的な配置から判断をサポートする意思決定のアイディアを選手に与えることはせず、あくまでも原則のもとで選手同士の感情的な理解と結び付きを優先することで、自由度は高いがその分個人への依存度も大きい属人化システムをチーム強化の軸としている、シャビのアプローチの弊害がモロに出てしまっている印象だ。
真のアタッカーが夢のバルサで復活
……
Profile
ぶんた
戦後プリズン・ブレイクから、男たちの抗争に疲れ果て、トラック野郎に転身。デコトラ一番星で、日本を飛び出しバルセロナへ爆走。現地で出会ったフットボールクラブに一目惚れ。現在はフットボーラー・ヘアースタイル研究のマイスターの称号を得て、リキプッチに似合うリーゼントスタイルを思案中。座右の銘は「追うもんの方が、追われるもんより強いんじゃ!」