今年8月、J1昇格争いを展開する清水エスパルスのプレイヤーデベロップメントコーチとして就任した中田一三氏。中田氏といえば、19年に当時J2の京都サンガF.C.の監督に就任し、SNS上での歯に衣着せぬ発信も含め、際立った手腕を発揮したことで知られる。その中田氏が4年ぶりにJリーグの舞台に戻ってきた。清水ではプレイヤーデベロップメントコーチとして選手の何に着目し、どう改善しようとしているのか。インタビューを2回にわけてお届けする。
監督の目が行き届かない細部をサポートする役割
――秋葉忠宏監督とは、選手時代に福岡でご一緒だったそうですね。
「はい。当時から仲が良くて、ずっと縁が続いてます。定期的に何かというわけではないんですが、たまに会うと、ああいう人柄なんで選手の頃のテンションのままで(笑)。酒を飲むというより、サッカーの話がメインでしたけどね」
――今回のコーチ就任は、どういう経緯で決まったんですか?
「僕自身も秋葉さんが清水エスパルスの監督になってからすごく注目していたので、何度か連絡をとっていて、サッカーの話もしていたし、自分の近況報告もして。僕がいろんな年代のパーソナルな指導をしていることも知ってくれていて、そういうコーチがチームに必要なんじゃないかということで、秋葉さんから強化部の方に話してくれたみたいです」
――「プレイヤーデベロップメントコーチ」という肩書きですが、秋葉監督に聞いたら「チーム付きの個人コーチのような存在が欲しかった」と言ってました。そういう理解でよろしいですか?
「そうですね。監督というのはチーム全体を見て動かす仕事なので、細部まではなかなか目が行き届かないですよね。とくに選手一人ひとりを細かく指導するということは難しいので、そこを補うということですね。今は選手自身が外部のパーソナルコーチをつけるというのも増えてきてますが、それだと監督が求めることとズレてしまうこともよくあるし、ここでのトレーニングと協調できないことも多いので、クラブの中にそういう人材がいた方がいいんじゃないかという話から始まっています」
――海外のビッグクラブでは、そういうコーチがいるのが普通になっていると秋葉さんは言ってましたが、中田さんの経験がそこにマッチしたんでしょうね。
「そうですね。僕は(京都で)監督経験もあるので、監督の仕事内容や立場もわかりますし、監督のやりたいことを理解したうえで選手一人ひとりを見ることができると思います。クラブを作るという経験もあって、育成もやってきて、アマチュアを指導してきた経験も多いですが、アマチュアでも結果を出し続けないとクラブが回らないですし、集まった素材でしかやれないので、指導者としての引き出しがすごく必要になってきます。中にはサッカーをあまりやりたくないような子もいて、そういう子をその気にさせるとかもやらないといけない。指導者の人材育成もやってきましたし、そういういろいろな経験は今の現場でも生きてくると思いますね」
――聞き慣れない肩書きでしたが、チームの底上げをするには重要な仕事ですね。
「そう思います。チーム内に30人ぐらい選手がいると、それぞれの気持ちもありますし、コンディションもあるし、みんなが均一の状態ではないですよね。そういう中でコンディショニングだけじゃなくて、戦術理解とか、戦術の土台になる技術も必要ですし、監督やクラブがやりたいサッカーがやれる選手、使える選手になれるように、いろんな引き出しを使って助けていく存在が必要じゃないかと。監督の目がなかなか行き届かない個人のところを僕が見ていくことによって、監督が次の試合で勝つことにより集中できるという部分にもつながってくると思います」
選手の「よくわからないよ」がないように
――日本では、こういう仕事の草分けになるわけですね。……