「CLに出場する32クラブのU-19チームはトップチームと同じ日・同じ街でUEFAユースリーグを戦う」。この大会を取材した中田徹氏が欧州サッカーの創設10年目を迎えるコンペティションから受けた「衝撃」をレポートする。
U-19フェイエノールトで輝く「ピッチ上の監督」ゼヒエル
9月19日、CLのフェイエノールト対セルティックが始まる6時間前、平日の昼間だというのにホームチームのサポーターたちが続々と練習施設『ファルケノールト』のミニスタジアムに詰めかけていた。ここで午後3時からUEFAユースリーグのグループステージ、U-19フェイエノールト対U-19セルティックの試合が催されるのだ。2000枚のチケットは前売りで売り切れた。バックスタンドに空席が目立つのは、ピッチ脇の柵に寄りかかり立って観戦する者が多かったからだ。
曇り空ではあったが、ピッチの上では、フェイエノールトのタレントたちがトップチームと見間違うようなアタッキングフットボールを展開していた。6番を着けたMFジーファイ・ゼヒエル(19歳)はゲームメイク、チャンスメイク、フィニッシュワークに幅広くプレーし、攻撃のテンポを作っていた。
CBジョマル・ヒールストホ―フェ(18歳)が主将なら、ゼヒエルはピッチ上の監督だった。味方への鼓舞、仲間を動かすコーチング、そして「困った時には俺を見ろ」とでも言いたげな振る舞いに、彼のパーソナリティが溢れていた。
フェイエノールトはGKイスマイル・カ(17歳)が時折センターサークル手前まで出てきてビルドアップに参加するほど攻撃的に戦い、多くのチャンスを作った。しかし先制点は41分まで待たなければいけなかった。左SBジェイデン・カンデラリア(19歳)が低く速いクロスをゴールラインに沿うように蹴り込み、ゴール正面に走り込んだ右SBジバイロ・リードが押し込んだ。左右のSBが敵陣ゴールライン上まで飛び出すことよって生まれた圧巻のゴールだった。
後半開始早々の47分にフェイエノールトが追加点を挙げた。10番ミランボが左サイドの深い位置で起点を作り、後方で待ち受けるゼヒエルにパスを戻す。セルティックの視線がこの2人寄った時、右サイドではウイングのジェイデン・スローリー(18歳)がゴール前まで全力疾走していた。これを視野の広いゼヒエルが見逃すはずもなく、柔らかな孤を描いたクロスをスローリーがボレーで決めた。
57分にはハーフウェイライン手前からゼヒエルがスルーパス。これを受けたミランボがドリブルシュートでネットを揺らし3-0。U-19フェイエノールトの披露したスペクタクルなショーにスタジアムが沸いた。
ファン・ペルシー監督が語るUEFAユースリーグの効果
U-19フェイエノールトを率いたのはオランダサッカー界のレジェンド、ロビン・ファン・ペルシーだった。40歳になり白髪まじりになったものの、贅肉は付いておらず顔も凛々しいままだ。試合後の記者会見で私はこんな質問をした。
「日本から来た者としてUEFAユースリーグが羨ましい。あなたが17歳、18歳の時を思い起こしてください。当時、このようなコンペティションがあったら、あなたもより早く成熟した選手になったのではないでしょうか?」……
Profile
中田 徹
メキシコW杯のブラジル対フランスを超える試合を見たい、ボンボネーラの興奮を超える現場へ行きたい……。その気持ちが観戦、取材のモチベーション。どんな試合でも楽しそうにサッカーを見るオランダ人の姿に啓発され、中小クラブの取材にも力を注いでいる。