第238回を迎えたミラノダービー。この長い歴史において今回のダービーはより一層の特別な意味があった。というのも昨季のCL準決勝、スーペル・コッパ、それに今回と今年だけで5回もミラノダービーが実現したのだ。これは長いミラノダービーの歴史で、1年の対戦回数としては過去最多である。ここまでの4試合の結果は、インテルの4戦全勝。トータルスコアも7-0とミランを完膚なきまでに叩きのめしている。つまり、インテルにとってクラブ史上初のダービー5連勝(=ミランにとってはクラブ史上初の5連敗)が懸かっていた一戦というわけだ。
トナーリ移籍のショックを乗り越えて
まずは試合の前に今シーズンのミランのここまでをおさらいしよう。
昨シーズンをCLベスト4、セリエA4位で終えたミラン。決して厚くない選手層の中で及第点どころか、CLでここまで勝ち進み、しかも来季の出場権も確保したことからも充分な結果を残したと言える。そんな中で今シーズンが始まった。
ミランのスカッドはダービーで喫した4連敗の教訓が大きく反映されたものと言える。今年の対インテルでミランはチームの完成度もさることながら、選手層でも差を見せつけられた。ロメル・ルカク、マルセロ・ブロゾビッチ、ホアキン・コレア、ロビン・ゴセンス、ステファン・デ・フライ…‥と他クラブならレギュラー、準レギュラー級の選手を途中から次々と投入するインテルに対し、ミランは不振のディボック・オリギ、ジュニオール・メシアスと、試合の流れを変える意味ではやや心もとない陣容だった。
この選手層の薄さはダービー以外の試合でも足かせとなっており、特に疲労が溜まる終盤戦でその問題点が大きく露呈した。今夏の補強のメインテーマは選手層の拡大。この一点だった。
しかし、ミランがまず行ったのはイタリア代表であり、幼少期から生粋のミラニスタとして有名なサンドロ・トナーリの放出だった。選手層の薄さが問題なのに、チームの大黒柱であり、未来のカピターノ(キャプテン)であり、バンディエラ候補だったトナーリをニューカッスルに移籍金7000~8000万ユーロで放出したのである。
この放出はチーム主導だったのか、トナーリの希望だったのかは定かではないが、ファンもメディアもトナーリを軸にチームを発展させるものだと確信していたので、クラブ内外に大きな衝撃を与えるまさかの決断だった。
現代フットボールは1つのクラブに生涯を捧げるワンクラブマンの存在は希少になっている。トナーリはミランの生え抜き選手ではないが、ブレシア時代から生粋のミラニスタであることを公言していたこともあってか、これから引退までミランに在籍することを大多数のファンから望まれていた存在だった。パフォーマンスも高いトナーリは準ワンクラブマンになってほしいと誰もが願った選手だったのだ。
とはいえ、ミランは夏の移籍市場でトナーリ売却の移籍金も利用し、大型補強に打って出る。ルベン・ロフタス・チーク、タイアニ・ラインデルス、クリスティアン・プリシッチ、サムエル・チュクウェゼと次々と即戦力の獲得に成功。課題だった右ウイングの強化も行われた。総勢10選手の獲得により、問題だった選手層の薄さの改善にも繋がっている。……
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nato
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