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ポチェッティーノでも5戦1勝…開幕1カ月で見えたチェルシーの課題と希望、リスクとスリル

2023.09.19

中立的な目で今季のプレミアリーグを眺めれば、開幕1カ月間で最も興味をそそられたチームはチェルシーになるのかもしれない。と言っても、「素晴らしい」からではなく、「どう転ぶかわからない」からという理由だ。

 西ロンドンのビッグクラブには、昨年5月のオーナー交代から3度目となる今夏の移籍市場でも巨額の資金が投じられた。総額10億ポンド(約1830億円)を超える補強が施されたはずのチームはというと、1勝2分2敗(5得点5失点)のリーグ14位と開幕から躓(つまず)いている。プレッシングも果敢な攻撃サッカーを好むマウリシオ・ポチェッティーノ新監督の下、ボール支配では9月17日の第5節ボーンマス戦でも断然優位だった。だが結果は、新GKロベルト・サンチェス(←ブライトン)のセーブにも救われたスコアレスドロー。前節までの4試合も、平均70.5%のポゼッションはマンチェスター・シティを抑えて20チーム中トップ、アタッキングサードでのタッチ数でもアーセナルと8差の2位につける計1011回という数字を残している。ところが、ボーンマス戦で早くも今季2度目のブーイングを自軍サポーターから浴びたチームがチェルシーでもある。

213億円カイセドも78億円パーマーも「投資」「正解」

 その現チェルシーの開幕1カ月を評価する上では、現フロントのパフォーマンスにも目を向けなければならない。一般的には、合計732億円強の移籍金で12人を獲得した今夏も評判は芳しくない。「手当たり次第」という表現はざらで、『タイムズ』紙などでは「オーナーが(移籍市場で)だだをこねているようだ」とまで言われた。しかしながら、その動きを「補強」ではなく、トッド・ベーリーをはじめとするオーナー陣営の感覚に近いと想像される「投資」として捉えれば、決して悪くはないビジネスだったという理解も成り立つ。

 チームの構成に限って言えば、現オーナーが買収当初から描いていた青写真そのものに近い。具体的に言えば、25歳前後の主力が持続可能な成功を実現するチーム像。リーグに提出された今季前半戦の登録メンバーを見ても、人数制限のないU-21枠を除く20人は平均年齢24.65歳と若く、残り契約年数の平均は5.25年と長い。

 英国史上最高となる推定1億1500万ポンド(213億円弱)でのモイセス・カイセド獲得は、移籍金が高過ぎるとの見方を否定し難い。同じボランチとしては遠藤航を獲得したリバプールの方が、プレミア実績ではそれぞれジェイムズ・ウォード・プラウズとジェイムズ・マディソンを新MFに迎えたウェストハムとトッテナムの方が「賢い」と言えるだろう。ただし、チェルシー経営陣の意図は先行投資。昨季、ブライトンの躍進を中盤の底で支えた21歳を買える時に買っておく判断が下されたわけだ。

ブライトンからやってきたエクアドル代表のカイセドだが、現時点では高額な移籍金に見合ったクオリティを発揮できていない

 カイセド以上に疑問視されたコール・パーマーの獲得も、オーナーに言わせれば「正解」となるのだろう。シティから、監督のペップ・グアルディオラが売却を認めた若手を高値(78億円弱)で買い入れた格好ではある。だが、チームの完成度で頭抜けているシティでも頭角を現したMFは、出番を与えられるようになっていたウイングの他に、インサイドハーフやトップ下でも機能する素養を持つ21歳として買われている。

シティでは定位置を確保できなかったU-21イングランド代表のパーマー。チェルシー移籍後はノッティンガム・フォレスト戦、ボーンマス戦の2試合で出場機会を得ている

エンソ&ギャラガーは好調、両SBで新顔躍動

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Profile

山中 忍

1966年生まれ。青山学院大学卒。90年代からの西ロンドンが人生で最も長い定住の地。地元クラブのチェルシーをはじめ、イングランドのサッカー界を舞台に執筆・翻訳・通訳に勤しむ。著書に『勝ち続ける男 モウリーニョ』、訳書に『夢と失望のスリー・ライオンズ』『ペップ・シティ』『バルサ・コンプレックス』など。英国「スポーツ記者協会」及び「フットボールライター協会」会員。

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