炊飯器を手に初の海外挑戦の地、ドイツへと旅立ってから2カ月。9月30日で24歳を迎える日本人ストライカーは、2.ブンデスリーガ(2部リーグ)開幕から5戦連続スタメン出場で2ゴール1アシストをマークし、ここまで4勝1敗・9得点6失点で2位というホルシュタイン・キールの好発進に貢献している。9月2日に本拠ホルシュタイン・シュタディオンで行われた第5節パーダーボルン戦(○2-1)を、河治良幸氏が現地で取材した。
日本代表の森保一監督が発表したドイツ戦、トルコ戦に臨むメンバーに、町野修斗の名前はなかった。湘南ベルマーレからドイツ2部のホルシュタイン・キールに完全移籍したFWは、7月30日のリーグ開幕戦からスタメンで起用され続けている。初戦は敵地でブラウンシュバイクを相手に、幸先良くアシストを記録(○0-1)。ホームの第2節グロイター・フュルト戦で「自分でもらったPKだったので、すんなり蹴らしてくれました」という初ゴールを決めると(○2-1)、アウェイの第4節シャルケ戦では左サイドのトム・ローテから出たクロスにファーサイドで合わせて、流れの中から2得点目を挙げた(○0-2)。
そうした活躍を考えれば日本代表のFW陣に食い込んでもおかしくないが、町野は「まだこっちに来て数試合しか経ってないですし、もっともっと結果と実績を積み上げないとダメかなと思います」と冷静に語る。第5節、ホームに迎えたパーダーボルンは攻守のハードワークを伝統とするキールにとってもタフな相手だった。
守備で、ビルドアップで、そしてゴール前で
187cmの長身ベネディクト・ピヒラーと[3-5-2]の2トップを組んだ町野は、前線からボールを追ってパーダーボルンのビルドアップを制限し、マイボールから効果的な攻撃に繋げていく。いきなりローテの左足から正確なクロスボールが出ると、ボールをコントロールした町野は対面のディフェンスを内側にかわし、左足でシュートを放つ。しかし、GKヤニック・フートの左手をかすめた弾道は右のゴールポストを叩いた。
「うまく結果がついてこなかったので、切り替えられなかったということかなと」
その数分後、パーダーボルンはCKの流れからのクロスにMFロベルト・ライペルツがヘッドで合わせてゴールネットを揺らした(12分)。開始早々のビッグチャンスを決め切れず、そこから相手の先制点に繋がってしまった形だ。町野は前半の終了間際にも中央突破から決定機を迎えたが、「慎重になり過ぎて、思い切って打てばよかったなと思います」と振り返るように、至近距離に詰めてきたGKに当たってしまった。
それでもチームは[4-2-3-1]のパーダーボルンに対して、町野を含む高い位置からのプレスがハマり、31分には右サイドのフィン・ポラスの速いクロスに反応し、左から飛び込んだローテがバウンドしたボールにうまく合わせて同点に追いつく。そして後半の61分には左ワイドで3人がかりでボールを奪うと、MFスティーブン・スクリプスキが右足で50メートル近い距離から鮮やかなロングシュートを決めて逆転に成功した。
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Profile
河治 良幸
『エル・ゴラッソ』創刊に携わり日本代表を担当。Jリーグから欧州に代表戦まで、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。セガ『WCCF』選手カードを手がけ、後継の『FOOTISTA』ではJリーグ選手を担当。『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(小社刊)など著書多数。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才能”」に監修として参加。タグマにてサッカー専用サイト【KAWAJIうぉっち】を運営中。