初戦でザンビアを5-0、第2節でコスタリカを2-0で下し、4大会連続の決勝トーナメント進出を確定。迎えた7月31日のグループC首位決戦、FIFAランキング11位の日本代表は同6位の格上スペインに対し、宮澤ひなた(12分、40分)、植木理子(29分)、田中美南(82分)のゴールで大勝を収めた。続くラウンド16は8月5日、相手はグループAを1勝1分1敗・6得点1失点で2位通過したノルウェーだ。
女子W杯のグループステージ3戦目で日本は優勝候補の1つと目されるスペインを4-0で撃破。3連勝(11得点0失点)でグループC首位通過を決めた。対戦相手のホルへ・ビルダ監督も、素直に“なでしこジャパン”の強さを認めていたが、この勝利は試合前の分析と対策、そして選手たちのタスク実行力がもたらした結果だ。池田太監督はこう振り返る。
「スペインのビルドアップに対して、我われがしっかり守備をしないといけない。守備の時間が長くなるだろうと選手とは話していて、その中でチャンスを生かそうと。そういった意味では、自分たちが考えてきた試合の流れの中でゴールできたことは良かったと思います」
陰のMVPは今大会初出場のCB高橋
すでにGS突破を決めての3試合目。指揮官はこれまでの2試合とシステムこそ同じ[3-4-2-1]ながら、守備では[5-4-1]のブロックを固める時間が長くなると想定した布陣で臨んだ。3バックの右では高橋はな(三菱重工浦和レッズレディース)が今大会初出場。そしてボランチでは林穂之香(ウェストハム)、1トップでは植木理子(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)が初スタメンとなり、2シャドーは宮澤ひなた(マイナビ仙台レディース)と猶本光(三菱重工浦和レッズレディース)の組み合わせになった。
池田監督は「トータル的に前の試合の出場時間やバランス、疲労も考慮して。チーム全体のことを踏まえながら」と語るが、誰が出ても戦術的なタスクはこなせる前提で、スペインに勝つことを考えたメンバーが組まれている。3バックの右CBにはザンビア戦は石川璃音(三菱重工浦和レッズレディース)、コスタリカ戦は三宅史織(INAC神戸レオネッサ)、そしてスペイン戦は高橋が起用された。
身長172cmの石川は身体能力が高く、スピード対応に優れる。三宅はビルドアップ能力が高く、高橋は対人で跳ね返すことができる。スペイン戦で抜擢された高橋は、相手のエースストライカーであるジェニファー・エルモソのチェックを3バック中央の熊谷紗希、左の南萌華(ともにローマ)と受け渡しながら、左ウイングのマリオナ ・カルデンテイや2年連続バロンドールの司令塔アレクシア・プテジャスが飛び出してくるスペースを埋めるなど、この試合の陰のプレーヤー・オブ・ザ・マッチと言っても過言ではない働きを見せた。
髙橋は「ほんと疲れますね(笑)。やっぱり全員うまかったです。まずシンプルに。なので本当に休む時間が、こんなに90分休む時間がなかったことは本当に初めてじゃないかというくらい頭を使ってやってました」と振り返る。結果は4得点の大勝だが、スペインの攻撃を無失点でしのいだことはチーム全員による集中したディフェンスの賜物であり、特に3バックの働きは見事だった。
スペインは72%のボールポゼッションで、925本のパスを記録した。公式データではファイナルサードに90回以上も侵入している。それでもシュートは10本。それだけボールを持たれても、決定的なフィニッシュの狙い目を与えなかったということだ。もちろん、前半36分に右SBオナ・バトレからのクロスをジェニファーがフリーで合わせたような危ないシーンは何度かあった。しかし、そうしたスペインの決定機は散発で、畳みかけることができなかったのだ。……
Profile
河治 良幸
『エル・ゴラッソ』創刊に携わり日本代表を担当。Jリーグから欧州に代表戦まで、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。セガ『WCCF』選手カードを手がけ、後継の『FOOTISTA』ではJリーグ選手を担当。『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(小社刊)など著書多数。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才能”」に監修として参加。タグマにてサッカー専用サイト【KAWAJIうぉっち】を運営中。