J2屈指のライジングスターとして評価を高め続けているのが、ファジアーノ岡山の佐野航大だ。米子北高校からルーキーとして加入した昨シーズンも、Jリーグの舞台で秘めたるポテンシャルを解き放ってきた逸材は、今年の5月にFIFA U-20W杯で世界のピッチも経験し、そこで得た収穫と課題をさらなる成長へと繋げていくことは間違いない。そんな注目株を定点観測し続けている山陽新聞社の亀井良平が、今の佐野を描きつつ、これからの佐野も展望する。
U-20W杯で感じた手応えと課題
「SANO」の名を世界にアピールした。
アルゼンチンで開催されたFIFA U-20W杯(5月20日~6月11日)に日本代表として出場したJ2・ファジアーノ岡山のMF佐野航大。チームはグループステージ敗退となったが、背番号8を背負った19歳は全3戦に先発し、持てる力を出し切った。
際立つ活躍を見せたのは初戦のセネガル戦(〇1-0)だ。特に右サイドに移った後半は鮮やかなドリブルで相手の股を抜いて好機をつくるなど持ち前の高い技術と度胸を存分に発揮。アフリカ王者に対し、堂々たるプレーで勝利に貢献した。
「決勝トーナメントに残れなかった悔しさは大きいですが、個人的にはボールを持ったときにしっかりと違いを見せられたのは良かったです」
一方、自身初の世界大会では課題も痛感したという。
「一番足りないと思ったのはフィジカルの部分。世界を相手に戦うにはそこを高めないと互角には張り合えないと肌で感じました。セネガルはもちろん、コロンビア、イスラエルの選手も本当に強かった」
岡山に戻ってからは新たなトレーニングを取り入れた。全体練習後、クラブハウスでフィジカルコーチの指導を受けながら筋トレに励み、パワーアップを図っているところだ。
福井太智(バイエルン・ミュンヘン/ドイツ)、山根陸(横浜F・マリノス)、北野颯太(セレッソ大阪)……。アルゼンチンで共闘した面々とは今も時折連絡を取り合う。
「J1で試合に出ていたり、海外でプレーしたりしていて刺激になります。自分も彼らに追いつき、追い越さないといけない」
鳥取・米子北高からプロ入り2年目。着実に力を付けてきた万能型MFは南米の地で得た経験、仲間を財産とし、さらなる成長を遂げていくはずだ。
重ねた経験を無駄にしない、雑草のような強さが宿る
U-20日本代表の主軸としてW杯に臨んだが、決してエリート街道を突き進んできたわけではない。……
Profile
亀井 良平(山陽新聞社)
1986年、岡山県生まれ。玉野光南高から立命館大を経て、2010年に山陽新聞社に入社。本社運動部に所属し、これまで高校野球などを担当。2018年からファジアーノ岡山の担当記者となり、現地取材を続ける。過去に前監督・有馬賢二の1年間を追った「J指揮官の実像」などを連載。