7月20日にオーストラリア・ニュージーランドで開幕したFIFA女子ワールドカップ2023。12年ぶりの王座奪還を狙う日本代表(FIFAランキング11位)が、ザンビア代表(同77位)相手に宮澤ひなた(43分、62分)、田中美南(55分)、遠藤純(71分)、植木理子(90+11分)のゴールで大勝発進を果たしたグループC初戦を、現地で取材中の河治良幸氏がレポートする。
「対ザンビアの戦い」
池田太監督が率いる“なでしこジャパン”は女子W杯の初戦でザンビアに5-0で勝利した。結果だけ見れば“圧勝”とも取れるが、快速FWバーバラ・バンダを擁するザンビアに対して、しっかりと相手のストロングを消しながらウィークを突くためのプランニング、そして指揮官が「分析をトレーニングで共有しながらも、起きる変化を見つける能力が選手にはある」と高評価するように、試合の中で状況を見極めて判断、プレー選択していく自己解決力が発揮されたゲームでもあった。
基本システムは日本が[3-4-2-1]、ザンビアが[4-3-3]で、そのまま噛み合わせると日本の3バックがザンビアの3トップとマッチアップすることになる。しかし、実際のザンビアは左右ウイングがかなりワイドに開き、ビルドアップの段階ではバンダが中央で1トップのようになっていた。日本がまず注意したのは、相手アタッカー陣にバックラインの背後へいきなり飛び出されることだ。
FIFAランキング77位のザンビアだが、大会前のテストマッチでは優勝候補のドイツに2-3で勝利。23歳にしてエースでキャプテンを務める前述のバンダが2得点を挙げている。しかも、ドイツの名だたるDF陣を2、3人まとめて突破する離れ業を披露しており、2011年のW杯優勝メンバーで百戦錬磨のキャプテン熊谷紗希(ローマ)も、個人で止め切るのは難しいタレントとして警戒していた。
「映像を見る限り11番(バンダ)のスピードというのを気にしていたというか、警戒していたので。背後をやられない守備の考え方をして、ディフェンスの前のスペースで足下につけられてもいいから、もう下がろうと。引いたとしても点を取れると思っていたので。対ザンビアの戦いをして、結果が出たのは良かったと思います」
相手の能力を認めた上で、初戦を勝つためにまず失点しないことを心がけながら、そこに得点を上乗せしていくという考え方だ。最終的に日本は26本のシュートを記録した一方で、ザンビアには1本も打たれていない。5バックで引き気味と言っても、ペナルティエリアに吸収されるようなことはなく、ミドルゾーンは維持しながら相手の縦パスをカットして奪ったり、セカンドボールを日本側に回収して、攻めに転じることができていた。
「キーパーとディフェンスの間」
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Profile
河治 良幸
『エル・ゴラッソ』創刊に携わり日本代表を担当。Jリーグから欧州に代表戦まで、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。セガ『WCCF』選手カードを手がけ、後継の『FOOTISTA』ではJリーグ選手を担当。『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(小社刊)など著書多数。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才能”」に監修として参加。タグマにてサッカー専用サイト【KAWAJIうぉっち】を運営中。