
J1第18節の浦和レッズ戦、第19節の名古屋グランパス戦と悔しいミスが続き、チームは勝利を掴めなかった。だが、その守護神は反省こそしても、アグレッシブな姿勢を引っ込めるつもりはさらさらない。なぜならそれが自分の生きる道だからだ。今シーズンから川崎フロンターレに移籍してきた上福元直人。このGKが携えてきたプロサッカー選手としての志を、おなじみのいしかわごうが本人の言葉を交えて説き明かす。
2試合続けてのスコアに直結するミス
よもやのファンブルだった。
J1第19節の名古屋グランパス戦。スコアレスのまま進んでいた前半41分、リスタートからボールを持った名古屋のマテウス・カストロが、左足を素早く振り抜いてゴール前に鋭いクロスを上げる。ファーサイドに流れたこのボールは、落下地点を見極めていた川崎フロンターレのGK上福元直人がしっかりと胸に抱え込んだように見えた。
ところが、である。
次の瞬間、上福元が抱え込んだはずのボールが腕から滑り落ちた。
頭上を大きく越えていったはずのボールが目の前に転がってきた幸運を、獰猛なストライカーであるキャスパー・ユンカーが見逃すはずもない。抜け目なくゴールネットに流し込み、貴重な先制弾を名古屋が記録した。
小雨が降り注ぐ中、GKにとってはデリケートな処理が要求されるクロスだったのは確かである。ただ上福元本人からすれば、あってはならないキャッチミスによって招いた失点という現実も変えられない。
呆然としながらも、ゴールネットに入ったボールを取りに向かっていた上福元の背中を、キャプテンマークを巻いた登里享平がポンと叩いて励ます。前節の浦和レッズ戦でも見た光景だ。浦和戦ではエリア外に飛び出して行ったヘディングクリアを拾われ、無人となったゴールネットに超ロングシュートを決められている。失点の内訳は違うものの、上福元は2試合連続でスコアに直結するプレーを招いてしまった。
後半にも失点を許し、名古屋には0-2で敗戦している。
シーズン後半の巻き返しを狙う川崎からすれば、上位との直接対決の重要性は、皆がわかっていたはずである。ここで黒星が刻まれたことの意味は、試合後の選手たちの厳しい表情が物語っていた。
「自分の実力としっかりと受け止めてやることが全て」
「失点場面は何が起こったんでしょうか?」
試合後のミックスゾーンで、敗戦を受け止めながら言葉を紡ぐ上福元直人に尋ねた。常に真摯にメディア対応をしてくれる彼は、自分を誤魔化すことなく、あの局面での判断を言葉にし始めた。
「サイドでクロスを上げられるところでの瞬間的な判断がありました。中の状態とか瞬間的に判断をし切れなかった部分があります。あそこで(前に)出たからには、どういう処理をすべきなのか明確にジャッジできない、嫌な間があったというか」
言ってしまえば、「迷った」ということなのだろう。 ……



Profile
いしかわごう
北海道出身。大学卒業後、スカパー!の番組スタッフを経て、サッカー専門新聞『EL GOLAZO』の担当記者として活動。現在はフリーランスとして川崎フロンターレを取材し、専門誌を中心に寄稿。著書に『将棋でサッカーが面白くなる本』(朝日新聞出版)、『川崎フロンターレあるある』(TOブックス)など。将棋はアマ三段(日本将棋連盟三段免状所有)。Twitterアカウント:@ishikawago