以前からJFLやJ3などアンダーカテゴリーから個人昇格を果たす“無名有望株”はいたが、近年はアンダーカテゴリーのレベル上昇やモダン化に伴い、その流れが加速中だ。そこでプレーする選手たちにも明確にステップアップしようとする意識が色濃くなっている印象がある。
長年、都リーグなどもつぶさに見てきたライターの後藤勝氏が、レベル上昇が顕著なアンダーカテゴリーの現状をレポートしつつ、注目する個人昇格組をリストアップする。
J3にうごめく、上位カテゴリーで活躍可能な有望株たち
J1、J2から多くの選手を集めた2022年のFC岐阜はJ3リーグでクラブ史上最低の14位に沈み、失意のシーズンを終えた。明けて2023年、前年とは打って変わって7人の大卒新人と同じJ3からの移籍組を加え、カタールワールドカップの日本代表コーチだった上野優作監督を招聘し、若い選手を成長させるコンセプトでスタートした。
この始動時、上野監督は選手のポテンシャルに期待する旨を語っていたが、いざJ3が開幕すると第6節から第9節まで4連敗、一時はJFL降格が近づく20チーム中18位にまで順位を落としていた。ところが、その後リーグ戦は5勝2分(16節終了時点)で負けなし、天皇杯2回戦では昨年までJ1にいた清水エスパルスに延長戦で勝利を収めるなど、快進撃をつづけている。
背景にあるのは言うまでもなく当初からの計画にあった選手の成長によるものだ。というのも、くだんの清水戦では相手もターンオーバーしてはいたものの北川航也やカルリーニョス・ジュニオといった主力を注ぎ込んでいたのに対し、中2日の岐阜は3日前のリーグ戦と先発メンバーを完全に入れ替え、ふだんはベンチやメンバー外となっている選手で、清水以上にモダンなフットボールで勝利を収めている。
柏木陽介や庄司悦大の力を借りることはなく、J2のザスパクサツ群馬から期限付き移籍でやってきた久保田和音とJ3のアスルクラロ沼津から完全移籍で加入した北龍磨がコンビを組むドイスボランチが若いチームを牽引した。岐阜の先制点は法政大学卒の新人センターバック萩野滉大が起点となり、SC相模原からやってきた浮田健誠とガイナーレ鳥取からやってきた田口裕也といった攻撃陣によって生まれている。
彼ら岐阜の若手や中堅の選手は戦術面でも技術面でも飛躍的な進化を遂げているが、成長の主因は強度の高さを意識したことにある。プレシーズンの時点から時速20km以上のランニングと時速30km以上のスプリントの本数を増やすことを目標とし、シーズン中も2部練習を繰り返してきた。
ここからわかるのは、J3には少なくともJ2上位の選手を上回るポテンシャルを秘めた選手がいて、適切なトレーニングを実行すれば上位カテゴリーで戦える、あるいは日本代表に選ばれるような選手になりうるということだ。
顕著になっている下位カテゴリーのレベル上昇
とある試合会場でジャーナリストの後藤健生さんと話していて、今年はJ2、J3、JFLのレベル上昇が顕著になってきた──という話になった。……