大黒柱カリム・ベンゼマの退団に伴い、変革の時を迎えたレアル・マドリー。そんなスペインの名門が、期待の新戦力として迎えたのがジュード・ベリンガムだ。20歳にして世界トップクラスのMFに名を連ねるイングランド代表の俊英は、レアル・マドリーでも輝きを放つことができるのか。同じく屈指の万能型MFであるフェデリコ・バルベルデとの比較や共存の可能性について掘り下げる。
2023年夏、レアル・マドリーが1億300万ユーロ(約162億円)もの大金を投じ獲得したジュード・ベリンガム。17歳でブンデスリーガデビューを果たし、19歳となった2022-23シーズンにはリーグのシーズンMVPを獲得する活躍を披露。とてつもないスピードで成長を遂げ、レアル・マドリーに入団することとなった20歳のイングランド人MFはいわゆる万能型のMFであり、そのプレーは世界的に見てもすでにトップレベルにある。
今回はレアル・マドリーとドルトムントとの違いや、同じく万能型でレアル・マドリーの主力を務めるフェデリコ・バルベルデとの比較、共存といった観点から、サッカー界の次世代の担い手にしてレアル・マドリーの新たな時代を築き上げる可能性を秘めるベリンガムのプレーについて紐解いていく。
4番+8番+10番。“万能型”の意味
メインポジションはインサイドハーフ(IH)。彼がドルトムントで着用していた背番号22は、4番(ボールの奪取)、8番(ボールを前進させる)、10番(決定機の創出)のタスクをこなせるよう、3つの数字を合計したものだと言われている。
そんな背番号22の意味を体現するかのように、万能型の代表格と言える選手へと成長を遂げた。ブロック守備、素早い自陣への戻り、プレッシング、低い位置での組み立て、敵のCB-SB間へのランニングまで、攻守のあらゆるプレーが彼にとってはお手のもの。スローなテンポの試合でも、高インテンシティの試合でも対応することができる。
2022-23シーズンのスタッツから、際立っているものをピックアップしてみよう。
・デュエル勝利数:リーグ1位
・スプリント数:リーグ5位
・1試合あたりのドリブル成功数:リーグ1位(25試合以上出場選手)
・1試合あたりのタックル成功数:リーグ5位タイ(25試合以上出場選手)
ドルトムントでのブンデスリーガデビュー時と比較して、飛躍的に向上したのがパスやドリブルのスキル。8番としての仕事を的確にこなしゴール前に前進したとしても、デビュー当初はそこからのクオリティが足りずに怖さを発揮できなかった。しかし、敵陣の狭いエリアを切り裂くパスやひらりとかわすドリブルを見せるようになった2022-23シーズンはリーグ戦8ゴールを記録している。
こうした数多の仕事をこなすためには、当然運動量が必要となる。ベリンガムにももちろん備わっているが、それだけでは万能型たり得ない。土台となっているのが戦術眼――数手先を予測する能力だ。円滑に攻撃を推し進めるために自分はどこにいるべきか? どのようにスペースを作り出し、どこにパスを出し、どこに走り込むべきか?といったことを瞬時に把握することができる。このクレバーさがあるからこそ、自身の持つ運動量やボールテクニックを効果的に発揮することが可能となっている。
期待されるのは“8番”としての役割
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Profile
とんとん
1993年生まれ、長野県在住。愛するクラブはボルシアMG。当時の監督ルシアン・ファブレのサッカーに魅了され戦術の奥深さの虜に。以降は海外の戦術文献を読み漁り知見を広げ、Twitter( @sabaku1132 )でアウトプット。最近開設した戦術分析ブログ~鳥の眼~では、ブンデスリーガや戦術的に強い特徴を持つチームを中心にマッチレビューや組織分析を行う、戦術分析ブロガー。