9月の親善試合で日本代表と対戦することが決まったドイツ代表。2大会連続GS敗退と一敗地に塗れたカタールW杯後、指揮官ハンジ・フリックは続投となったが、復活へ向けてチーム内の人事にはメスが入れられ、新たにルディ・フェラーがディレクター職に任命された。しかしながら、その人選にドイツ国内からはかつてないほど懐疑的な声が聞かれたという。ドイツ内でどういった論調が展開されたのか、その理由を含めて解説する。
※『フットボリスタ第95号』より一部加筆し掲載。
ドイツサッカー連盟(DFB)で、人事に関して、これほど意見が分かれたことはなかった。去る2月1日、ルディ・フェラーが代表チームディレクターに就任。1年半の間、オリバー・ビアホフの辞任により空席になったポストを引き継ぐことになった。ビアオフは2014年W杯でドイツ代表がタイトルを獲得した際の立役者の1人だが、直近のW杯およびEUROで3大会続けて散々な結果に終わったのだから批判にさらされるのは当然であった。
この人選について「勇気が欠けている。サッカー界のエスタブリッシュメントによる決定だ」と批判的に報じたのは『シュピーゲル』誌。「新しいスタートは期待できない。DFBの工事現場には手がつけられないままだろう」と手厳しい。一方で、『南ドイツ新聞』は歓喜した。フェラーは「確かな解決策」であり、「彼の存在によりドイツ代表は、疎外されたと感じ逃げ出してしまったファンを取り戻すことに着手する前から、すでにプラスポイントを獲得している」と評した。
自国開催のEURO2024を前に、代表チームとその周辺では多くのことが変わるであろう。ただ、DFBに対する懐疑的な見方は残りそうである。なぜなら、すべてを良い方向へと向かわせるためであるはずの新ディレクター決定のプロセス自体が世間と業界の一部を驚かせ、首をかしげさせるものであったからだ。
「年寄りとともに将来へ」
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Profile
ダニエル テーベライト
1971年生まれ。大学でドイツ文学とスポーツ報道を学び、10年前からサッカージャーナリストに。『フランクフルター・ルントシャウ』、『ベルリナ・ツァイトゥンク』、『シュピーゲル』などで主に執筆。視点はピッチ内に限らず、サッカーの文化的・社会的・経済的な背景にも及ぶ。サッカー界の影を見ながらも、このスポーツへの情熱は変わらない。